10/15/2025
カリフォルニア州保健局 (CDH) は、人体や動物の生きた組織を食う寄生性のハエ「ニュー・ワールド・スクリューワーム (New World Screwworm)」の出現に関し、住民に警戒を呼びかけている。米国内では1966年に根絶されたとしていたが、近年メキシコや中米で再び確認されており、国境から70マイル (約112キロ) 圏内まで北上しているという。
▪️感染源とリスク
この寄生虫は、感染した人や動物の体内で幼虫 (ウジ) が繁殖し、皮膚や筋肉などの生きた組織を食い荒らす。米疾病対策センター (CDC) によると、感染者は激しい痛みを伴い、傷口や鼻・口・目などにウジが見られる場合がある。悪臭を放つ治りにくい潰瘍や出血も特徴的だ。免疫力が低下している人、出血や皮膚疾患のある人、また、屋外で日中に眠る人は特に感染リスクが高い。
雌のハエは寿命10〜30日の間に最大3,000個の卵を産む。小さな傷でも、卵を産みつけられることで感染が始まるため、注意を要するという。
▪️発生状況
米国保健省 (HHS) によれば、最近エルサルバドルから帰国した米国人に感染が確認された。また、メキシコ農業当局 (SENASICA) は、米国との国境から約70マイルの地点で新たな感染例を報告している。CDHは「感染者や動物を介して直接カリフォルニアに侵入する可能性がある」とし、迅速な特定と通報体制の構築が重要だと強調した。現時点では州内の家畜や野生動物での発見はない。
▪️予防策
CDCは感染防止のため次の対策を推奨している:
• 開いた傷口は常に清潔に保ち、覆うこと
• 虫刺されを避けるため、長袖・長ズボンなどゆったりした服を着用する
• 経済連携協定 (EPA) 認定の虫よけ剤を使用し、衣服や装備に0.5%パーメスリン (合成ピレスロイド系の殺虫剤) を処理する
• 屋外で寝る場合は、防虫ネットや網付きテントを利用する
また、体にウジや卵を発見した場合は自分で除去せず、すぐに医療機関に連絡することが求められる。落下したウジや卵はアルコール入り密閉容器に入れ、医師に提出するよう呼びかけている。
▪️感染報告と背景
ニュー・ワールド・スクリューワームはもともと南米やカリブ海諸国 (キューバ、ハイチ、ドミニカ共和国) に分布していたが、2023年以降、中米を経てメキシコ南部7州に拡散。9月末までに人間で720例 (うち6人死亡)、動物で11万件以上の感染が報告されている。CDHは「過去10日以内に中南米の感染地域を訪れ、体に潰瘍や痛みを伴う症状がある人は、直ちに医療機関を受診すべき」と警告している。
半世紀以上前に米国で根絶されたはずの寄生虫が、再び国境近くまで迫っている。カリフォルニア州当局は感染拡大防止のため、早期発見と報告、そして個々の予防意識が不可欠だとしている。