10/19/2024
大統領選挙は、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領 (59) が初の女性大統領を目指す。
共和党候補のドナルド・トランプ前大統領 (78) が勝利すれば史上2人目の返り咲きになる。
大接戦の選挙は、いずれの結果になっても歴史を刻む。
▽道半ば
8月にシカゴで開催された民主党大会。
2016年大統領選で女性初の大統領を目指したヒラリー・クリントン元国務長官が登壇し「ついにガラスの天井を破る寸前に来た。
今、ヒビ割れの向こう側に自由が見える」。
今度こそ女性大統領を誕生させようと党候補ハリス副大統領への支持を呼びかけた。
女性の社会進出を阻む「ガラスの天井 (glass ceiling)」。
1978年に作家マリリン・ローデン氏が使った言葉だ。
米政界では1916年に反戦・平和主義者のジャネット・ランキン氏が女性初の連邦下院議員に当選。
1984年に民主党ジェラルディン・フェラーロ氏が主要政党初の女性副大統領候補に選ばれた。
調査機関ピュー・リサーチ・センター (Pew Research Center) によると、民間労働者に占める女性の割合は1950年の30%から2023年に47%まで上昇。
だが、ラトガース大「米国女性と政治センター (Center for American Women and Politics=CAWP)」によると、連邦上下両院で女性議員の割合は現在28%。
女性の政界進出は道半ばだ。
主要政党初の女性大統領候補として2016年大統領選を戦ったクリントン氏と異なり、ハリス氏は選挙戦で女性候補であることを前面に打ち出すのを避けている。
今年8月のインタビューでも「大統領に最適な人間として出馬している。性別や人種は関係ない」と強調した。
それでも共和党の一部はハリス氏を女性だから選ばれた「DEI (Diversity Equity & Inclusion/多様性・公平性・包括性) 候補」だと攻撃しており、偏見は根強い。
ハリス氏が黒人女性から熱狂的支持を受ける一方で、黒人男性の票固めに苦戦しているとの分析もある。
チャタム大のジェニー・クシュマン准教授は、ハリス氏が勝利すれば「『指導者は男らしくあれ』という米社会の固定観念が覆される」と話す。
▽132年ぶり
米史上返り咲きを果たした大統領は第22、24代を務めた民主党グロバー・クリーブランド (在任:1885-89、93-97) だけ。
再選に失敗した後、1892年の選挙を制して再度ホワイトハウス入りした。
トランプ氏が復権すれば、132年ぶりの出来事になる。
トランプ氏は「米国を再び偉大に」をスローガンに今回の選挙戦に臨んでいる。
議会襲撃事件で起訴されても白人労働者を中心とした岩盤支持層は揺るがず、2度の暗殺未遂事件さえ求心力向上に利用する。
一方、分断を煽 (あお) る政治手法は変わらず、共和党穏健派や無党派層に敬遠される。
好調だった経済など在任時の実績を誇示する姿勢を「後ろ向き」とハリス氏に批判され、高齢不安も付きまとう。勝っても負けても大統領選は「これで最後だ」と語っている。
*Photo: © Paulm1993 / shutterstock.com
(2024年11月1日号掲載)