2024年3月6日
11月の大統領選の共和党候補指名争いで15州の予備選などが集中した3月5日の天王山スーパーチューズデーは、トランプ前大統領 (77) が14州を制して圧勝した。
カリフォルニア州でも勝利を手にした。
ヘイリー氏は選挙戦からの撤退に追い込まれた。
トランプ氏の候補指名が確実となり、民主党の現職バイデン大統領 (81) による本選での再対決の構図が事実上固まった。
トランプ氏は意に沿わない党幹部に圧力をかけて退任に追い込み、親族と挿 (す) げ替えようとするなど、党の支配を強めている。
異論を唱える人物を排除し、専横の度合いが増す「トランプ党」化が鮮明になっている。
▽掌握
連邦最高裁は3月4日、トランプ氏の大統領選出馬資格を認める判決を出した。
お墨付きを得たトランプ氏はフロリダ州の私邸で「結束に向けて大きな前進だ」と演説し、自身の下で結集するよう米国民に呼びかけた。
自身をめぐる訴訟を逆手に取って国民の注目を集め、1月の初戦アイオワ州党員集会で完勝。
最大のライバルとみたフロリダ州のロン・デサンティス知事潰 (つぶ) しに成功し、その後も連勝を重ねた。
唯一の対抗馬ニッキー・ヘイリー元国連大使をスーパーチューズデーで突き放して圧力を強めた。
並行して掌握を狙うのが、大統領選の資金集めを調整する共和党全国委員会だ。
資金集めが不十分だとしてロナ・マクダニエル委員長に圧力をかけ、辞任表明に追い込んだ。
後釜にノースカロライナ州共和党委員会のマイケル・ワトリー委員長を推薦。
自身が敗北した2020年大統領選は不正だったとの主張に追随する人物だ。
全国委の共同委員長に次男の妻で元テレビプロデューサーのララ・トランプ氏を就けることも画策。
刑事や民事の訴訟をめぐる巨額費用を党予算から捻出するのが目的とみられる。
▽終焉
トランプ氏はバイデン民主党政権を目の敵にし、自身の息のかかった共和党議員に意趣返しをするよう仕向けている。
共和党が多数を占める下院は2月、南部国境から流入する不法移民の急増に対応できていないとして、アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官を弾劾訴追した。
共和党若手ホープのマイク・ギャラガー下院議員が、報復の連鎖を招く弾劾は「パンドラの箱を開ける」として造反すると、トランプ氏を熱烈に応援する勢力「マガ (MAGA)」が猛反発した。
対中強硬派として頭角を現していたギャラガー氏は直後に次期下院選への不出馬を表明。
共和党議員の間では、マガを敵に回せば再選が危うくなるとの思いが共通認識となりつつある。
2020年の大統領選結果を覆そうとした2021年1月の議会襲撃を受け、トランプ氏と袂 (たもと) を分かった上院共和党トップの重鎮ミッチ・マコネル院内総務も先月、同ポストを11月に退くと表明した。
ある共和党上院議員は「古き良き米国」の再現を目指し、保守派を結集したレーガン元大統領に象徴される伝統的な党の時代が終焉 (しゅうえん) を迎えたとし、こう断じた。
「マガの時代が始まった」
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(2024年3月16日号掲載)