「衣服はデザインとイノベーションに属するもの。ファッションはビジネスの要求を満たすクリエーションに過ぎない」。日本の伝統美に根ざす「一枚の布」という概念と最先端技術が合体するとき、時空、国境、階層を越えた人間生活にフィットする服が誕生する。平面の布が立体の身体の動きと一体となり、そこに造形美が生まれる。革命的デザイナーとして“世界のミヤケ”の名を欲しいままにしている三宅一生氏が、もう一つのノーベル賞と呼ばれる稲盛財団の京都賞( 第22 回・思想芸術部門) を受賞した。先月、サンディエゴ大学での講演を終えた氏に、ポリエステルの軽素材による画期的商品「プリーツプリーズ」、ハサミで切り取るだけの“一体成型”で生産工程を変革した「A-POC」、そして東京・六本木に開設したデザイン施設「21_21 DESIGNSIGHT」などについて尋ねた。 ![]() サンディエゴは遠い昔に訪れたことがあります。目映い陽光、突き抜けるように澄んだ青空、美しく輝いた海、そして街の人々の活力に感銘を受けたのを覚えています。今回、権威ある京都賞を頂いたのは光栄なこと。受賞者シンポジウムの講演者として、再びこの素晴らしい街に来る機会を得たことを嬉しく思います。 —— 現在の活動について ![]() ![]() 2 つの目的から2004 年に設立しました。一つは三宅デザインスタジオで制作した一連の大型作品の保管です。もう一つは、次世代へ向けたデザイン開発であり、この方針を促進するために、デザインへの関心と理解を深める意見交換の場としての施設「21_21DESIGN SIGHT」を3 月30 日に六本木にオープンしました。 —— 東京発ファッションの可能性 ![]() —— 人生で影響を受けた人物 ![]() ![]() 21世紀のデザインは大きく変わります。環境問題も含めてデザインを考えていきたい。私は調査と研究を続けながら、常に「ものをつくる」という営みの根源的な意味に思いを馳せて、新しい創造法を模索しています。それが私に至福の時を与えてくれるのです。 1938 年広島県生まれ。1963 年多摩美術大学図案科卒業。1965 年パリへ渡り、パリ・クチュール組合の学校に学び、ギ・ラロッシュ、ジヴァンシーでアシスタントデザイナー、ニューヨークのジェフリー・ビーンのスタジオ のデザイナーを務める。1970 年に帰国、三宅デザイン事務所設立。1971 年に海外での初コレクションをニューヨークで発表。1973 年パリコレクションに初参加。以来、現在まで毎年発表を続ける。1988 年にプリーツの仕事を開始し、1993 年「プリーツプリーズ」スタート。1998 年「A-POC」発表。2004 年に三宅一生デザイン文化財団発足。1977 年毎日デザイン賞、1992 年朝日賞、1993 年フランスのレジオン・ド・ヌール勲章シュヴァリエ受勲、1998 年文化功労者に顕彰、1999 年デンマークの第1 回ジョージ・ジェンセン賞、2004 年にオハイオ州立大学ウェクスナーセンターよりウェクスナー賞、2005 年第17 回高松宮殿下記念世界文化賞(彫刻部門)などの栄誉に輝き、昨年、第22 回京都賞(稲盛財団)の思想・芸術部門で「東西文化の融合と最先端技術の追求によって、衣服の革新的な発展に大きく寄与したデザイナー」として受賞。 (2007年4月1日号に掲載) |