ゆうゆうインタビュー ジョージ・信一・浴田

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サンディエゴ・アジア・ビジネス協会 ( 以下 ABA) の使命は。

私たちはアジアの人々に発言の機会を与え、彼らの声を反映させる場を設けたいという考えから1990 年に発足しました。コミュニティーの人々が利用できるフォーラムや情報を提供するとともに、ビジネス経営者の交流を深め、互いに向上することが可能な組織作りを目指しています。つまり、サンディエゴのアジア系コミュニティーと太平洋諸島系コミュニティーにおける、ビジネスと文化をテーマにした意見交換の場として ABA が設立されたのです。


—— 以前はそのような機関が存在しなかったというのが理由でしょうか。
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Chi Tran (ABA Board) from Citibank presents a check to ABA; Ruben Garcia (US Small Business Administration), Joni Low (ABA Executive Director). Nghiep Le (ABA President) and Fabiola Fujiwara
 

特に、そういうわけではありません。ここ数年間でサンディエゴのアジア系人口は増加の一途を辿りました。アジア系ビジネスマンは彼らのビジネス界の成長と状況の変化を感じ取り、共に手を取ってコミュニティー内外に自分たちの見解を広める手段が必要だと痛感したのです。


—— 組織内の多種多様なグループの存在がABAの最大の特徴と言えますが、その協力ぶりは目を見張るものがあります。

ABAの優れた点は特定の組織に限定せず、サンディエゴのアジア人全体のために存在するということです。ABAは人種と文化の坩堝(るつぼ)なのです。この特徴は以前から変わることがなく、これからも結束を固めながら発展を続けるでしょう。今の世の中で、他人と協力し合えるこのような組織は特別な存在だと思います。

私たちの理事や諮問委員会委員はそれぞれが異なる経歴を持つ人物です。人々の手本となる豊かな経験を積んだ彼らが素晴らしい指導力を発揮してくれます。彼らはその役目を強制されているのではなく、コミュニティーを大切に思う気持から動いているのです。この情熱と献身こそがABAを支えていると言えるでしょう。私も同じ思いで熱心に打ち込んでいます。



—— ABAのイベントとサービスについて教えて下さい。

幾つかありますが、その一つとして毎月第4火曜日に「ライス・クラブ」という昼食会が開催されます。これはネットワーク作りのための主要なイベントで、ゲスト講演に加え、コミュニティー関連の多彩な話題を取り上げたフォーラムも行われます。毎回約50名が出席し、豪華な食事も用意されます。外部で人脈を作る絶好の機会であり、ここで築いた関係は成功への礎(いしずえ)となるでしょう。このほか、各会員の仕事内容を紹介する名簿も用意されています。例えば、金銭的支援が必要な場合は、この名簿を通して専門知識を備えたメンバーを検索し、援助を求めることができます。こうして相互に助け合い、面識を広めることで、新しいビジネスを生み出すチャンスに繋がるのです。

また、もう一つの大きなイベントは「プレス101」(PRESS = Pacific Rim Entrepreneur’s Service /環太平洋地域起業家サービス)です。数年前にスタートしたこのサービスでは中小企業向けに必要な情報を提供します。優れた教育的要素も含んでおり、会員はビジネスの必須事項を学ぶことができます。次回の題目は「個人事業体と株式会社の実態」です。このテーマにも中小企業経営者が考慮すべき事柄が数多く含まれています。特に、アメリカにおける責任問題の取り扱いは他国の経営スタイルとは大きく異なります。アメリカで育った人が、誰でもこのような知識を持ち合わせているとは限りません。私たちはそんな人々の情報源となるように努力しています。そういう意味では、私たちはSBA (スモール・ビジネス・アソシエーション)のような存在ですが、コミュニティー特有のニーズに照準を当てている点がABAの特色だと言えます。アメリカで生まれ育った人であろうと、アメリカに来たばかりの人であろうと、私たちは人々に学ぶ機会を与え、彼らのビジネスが成長する手助けをしたいのです。



—— ご家族は日本からアメリカへ移住したパイオニア的存在の一人と伺いましたが。
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Knowing your roots: George’s great-great grandparents immigrated to Hawaii in the late 1800’


その通りです。私は日系5世になります。玄祖父母は日本で最初に海外移住が認められた明治時代にハワイへ渡りました。大規模な移住のうねりが押し寄せる以前のハワイで、彼らは当初マウイ島に落ち着き、後にオアフ島へ移ります。今日とは異なり、当時の旅は長時間を要し、困難を極めるものでした。ハワイの生活は天然と呼べるもので、人々は大農園がある小さな村に暮らしていたのです。やがて、玄祖父母は米や醤油などの生活必需品を扱う店を構えました。今でも「本当の古い日本に触れたければ、ハワイに行くべきだ」という言葉をよく耳にしますが、私も幼い頃は日本の伝統的なしきたりに沿って、杵で臼をついて餅を作っていました。ハワイには微妙な時間の歪みがあり、古い日本文化が保存されているのです。


—— 彼らは何を求めて、海外移住という大きな決断をしたのでしょうか。

当時の彼らは、何を期待すればよいのかさえ分からなかったのではないでしょうか。とにかく、何か新しい、開けそうな未来に人生を賭けたのでしょう。 当時の日本では人々の選択に大きな制限がありました。それに比べて、今の時代、ここアメリカでは求めるものに自由に挑戦する機会が与えられています。アメリカではどんな夢でも叶えることが可能だと私は言いたい! それは非現実的な発想だと否定する人もいますが、私はアメリカンドリームが真実であると信じています。アメリカには多くの可能性があるのです。私の家族は日本に残っている数人を除いて渡米し、この国で新しい生活を始めました。私たちの歩んできた歴史やこれまでの家族の奮闘に思いを馳せる時、心温まる気分になります。


—— ご自身がABAで育成しようとしている起業家としての精神を、既に先祖の方々は備えていたのですね。
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George with his grandmother Matsuyo, while growing up in Hawaii.


そうです。彼らは海外進出という一か八かの賭けをしました。そして店を経営し、大農園で働いたのです。当時と比べると、現代は大変化を遂げています。特定の会社で一生働き続けるよりも、自分の夢と目標を胸に抱いて起業家を目指す人が多くなりました。アジア人コミュニティーでも、ようやく手にした自由の中で、新しい何かを開拓しようとする人々を多く見かけます。確かに、ABAや関係する組織において、私が促進しようとしているのは起業家としての精神育成に他なりません。皆さんが夢に向かって邁(まい)進し、それを実現させてほしいのです。


—— ご自身が議長を務めるABAの委員会について聞かせて下さい。

私はネットワークの役割を持つ社交的な集まり「ミキサー」委員会を主宰しています。楽しく、打ち解けた環境の中での相互ネットワーク作りが目的です。前回は6月22日にハラス・リンカーン・カジノで開催し、人々との交流を求めて数百名が参加しました。オードブルに始まる食事とエンターテイメント、抽選会などが行われ、快適でリラックスした雰囲気の中で各分野の人々と知り合う機会を持ちました。このイベントは、過去にはダウンタウンの湾岸沿いにあるハウス・オブ・ブルースでも行われました。今後はサンディエゴ動物園での開催を予定しています。毎回、参加者に新鮮な体験をしてもらえるように、 ユニークで興味深い開催地の選択を心掛けています。私たちはビジネスにおけるコミュニティーの団結だけでなく、外に出て視野を広げることも目的としているのです。


—— 異文化の人々を統率する手腕が問われますね。
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Celebrating the Lunar New Year: Joni Low (ABA Executive Director), Nghiep Le (ABA President); County Supervisor Ron Roberts and Joe Chou (ABA Board)


私はそれを一つの好機だと捕えるようにしています。複数の文化や民族が集結するということは、異なる意見を耳にし、新しいことを学ぶ絶好の機会です。私たちは人種の隔てなくフォーラムを開催していますが、このバラエティの豊かさが一種の趣向を醸し出していると言えます。それは、私たちのビジネスへの取り組みにおいても大きな特徴となっていると思います。異文化間の交流は困難だと思うかもしれませんが、それと引き換えに得るものは、より良い変化をもたらす調和の取れた発想です。異なる視点を持つ人々が集まることで、私たちは強力なパワーを得るのです。ハワイで育った私はこのような考え方が身に付いていたので、特に新しい発見というわけではありません。ハワイには世界中から集まった人種の異なる人々が生活していますが、皆がマナーを守り、快適に共存しているのです。


—— ハワイ人の精神と考え方をABAに持ち込もうとされているのですね。

はい。これは夢ではありません。私はそれを望んでいるのではなく、実現することを確信しています。私はこのような思考法で育てられたのです。現在の自分は過去の全行為によって形成されているのです。ですから、自分の過去や歴史を忘れてはなりません。それは、自分が何者であるかを知る上でも重要なことです。 文化、宗教、事業などの人生における側面を数多く持つことが、調和のとれた優れた人間を作り上げます。


—— 組織の原動力は何ですか。

惜しみなく貢献する人々、そして役員や諮問機関からの力強いサポートです。彼らは組織の意義を理解して自分たちのコミュニティーに“再投資”しています。これがABAを特別な組織に成長させ、今まで順調に機能し続けてきた大きな力となっています。1990年の発足以来、同じ顔ぶれがABAに揃っている事実からも分かるように、皆が変わることなくコミュニティーに関心を向けてきたのです。微力とはいえ、誰もが手を差し伸べると、世界はより素晴らしい場所になるのです。


——ご自身は他のグループにも参加しているそうですが。
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ABA & Japan Society members: Kyoko Tanaka, George Ekita, Aya Ibarra & Josh Knoefler.


ABA以外にサンディエゴ・ティファナ日本協会、キク・ガーデンズ、日本友好庭園協会、サンディエゴ仏教会などをサポートしています。これらのグループの人々と接していると、私が続けている活動の価値を改めて感じさせてくれます。彼らはコミュニティーへの尽力と貢献を惜しまず、そこには愛と情熱が感じられます。それが私を鼓舞するのです。私が多くのグループに参加しているもう一つの理由は、グループ間の連帯を深めていきたいと望むからです。各組織にはそれぞれの特徴がありますが、忘れてはならないのは、そこには共通点が含まれていることです。私たちが共通の目標に向かって協力することがコミュニティー全体を支え、さらに成長していくための唯一の方法なのです。


——ABAが他の組織と行事を共催する機会はありますか。

数多くあります。次回のハラス・リンカーン・カジノ&リゾートで行われる「ミキサー」委員会は、ラテンアメリカ系商工会議所との共同開催です。これは毎年恒例の共同行事で、出席者は異文化の融合がもたらす素晴らしい機会を共有することになるでしょう。また、他のアジア系組織と協賛する計画もあります。ビエハス・カジノで行われる「ミキサー」委員会には日本友好庭園協会、日系アメリカ人歴史協会、サンディエゴ・ティファナ日本協会など5~6の日系協会が参加する予定です。別の組織と共に活動することは決してマイナスにはなりません。私は数多くのコミュニティーグループにボランティアとして参加し、関係を深めるべく努力を続けていますが、ABAの存在がその意義と機会を与えてくれています。


——今後のABAに期待することは。
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ABA Board members gather during their retreat.


より多くの人にABAの活動を知ってもらい、参加して頂くことです。私たちが行っている教育的プログラム、コミュニティーサービス、ネットワーキングなどの内容を理解して活用してもらえば、誰もがコミュニティーの一員として自覚を深めることができます。これだけ整った環境が他にあるでしょうか! 私たちは自らのルーツを大切にしながら、共同体として協力し合うことを学ぶ必要があります。私たちは心を開いて他人に理解を求め、自分の考えを伝える努力をしなければならない時代に生きています。さもなければ、現状から成長することなど望めません。誰もが「なぜこんな大変なことをするのか」と首を傾(かし)げますが、私の問い掛けは常に「なぜしないのか」なのです。


ジョージ・信一・浴田 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サンディエゴ・アジア・ビジネス協会理事。「ミキサー」委員会議長。ハワイ生まれの日系5世。カリフォルニア州ストックトンのパシフィック大学で経営学と マーケティングの学士号を取得後サンディエゴへ。エキタ・インシュランスを経営する傍ら、サンディエゴ仏教会、サンディエゴ・ティファナ日本協会、キク・ ガーデンズ、日本友好庭園協会など多くのコミュニティーグループを援助している。ABAについての詳細はhttp://www.abasd.org まで。


(2006年7月1日号に掲載)