Thursday, 28 March 2024

ゆうゆうインタビュー トーマス・ウイルソン

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「ビューイック・インビテーショナル」 はよく耳にしますが、「サンディエゴ・センチュリー・クラブ」 という言葉には馴染みがありません。どのような活躍をされているのでしょう?

基本的に非営利ボランティア団体で、市民向けに、慈善活動を目的に、そして熱心なゴルフ愛好家をメンバーに結成されています。私達は1961年に3つの目的を掲げて発足しました。サンディエゴでの PGA ツアー (ビューイック・インビテーショナル) を永続させること。毎年行われるイベント内容を向上させること。そしてもう一つは、サンディエゴ郡ジュニアゴルフ協会への基金を得ることでした。1968年からセンチュリー・クラブとタイトルスポンサーは650万ドル超を集め、昨年はサンディエゴ郡内における120以上の慈善事業へ88万7千ドル以上を贈りました。2003年はサンディエゴで PGA ツアーが開催されて51年目を迎える年です。1952年にサンディエゴ・オープンとして開催された当時、私達がこれに関与できたことをとても誇りに思いました。1992年以来、ビューイックは私達のタイトルスポンサーであり、昨年は嬉しいことに、この契約が2006年まで延長されるとの発表がありました。


——トーリ・パインズを訪れるのを楽しみにしている人は多いのですが、このトーナメントは昔から同じ場所で開催されているのですか?

1968年以前は別の会場で開催されていました。実は、このトーナメントが開始された当時、トーリ・パインズ・ゴルフコースというものは存在していなかったのです。キャンプ・キャランと呼ばれる海軍の訓練場でした。元々、軍はその場所を閉鎖する予定でしたが、その後どうするかは未定でした。最終的に、公共のゴルフコースとして開発していくという条件の下、軍からサンディエゴ市へ譲渡されたのです。ゴルフコースは1957年にウイリアム・ベルにより設計され、1968年よりトーナメントが開催されるようになりました。今では、サンディエゴが誇る“宝”の一つとなっています。充実した設備と、安く誰でも気軽に楽しめる公共のゴルフコースという点も人気の理由です。


—— SD でゴルフトーナメントが開催されるようになり、現在までに大きく変化を遂げた側面はありますか?

ベン・ホーガンやバイロン・ネルソンたちが活躍していた頃から様々な変化が出てきました。昔は選手達がトーナメント会場まで車で移動するのが主流でした。当初は飛行機を利用する余裕のある選手は少なかったでしょうが、やがて便利な交通手段として広く使用されるようになっていきました。今では、ほとんどの選手が飛行機で移動するようになりましたが、中にはプライベート用ジェット機を利用する選手、更には自家用飛行機を所有している選手までいるほどです。賞金額にも変化があります。トーリ・パインズで初めてトーナメントが開催された頃の賞金総額は15万ドル、そのうち優勝者の獲得分は3万ドルだったように思います。10年前の賞金総額は100万ドル、優勝者の獲得金額は18万ドルに上昇し、今年の賞金総額は450万ドル、うち優勝者への賞金額は81万ドルに跳ね上がって上昇の一途を辿っています。また、スポーツ全般に言えることですが、ゴルフにもテクノロジーの発達が影響しています。最新技術=新しい・丈夫・軽い・上質・良いデザイン=によりクラブヘッド、シャフト、ロフト、ゴルフボールが生み出され、その恩恵が選手達により遠く、且つ真っ直ぐにボールを飛ばすことを可能にさせています。選手の技量と最新技術とが一体となり、更に活躍する選手達が生まれてくることでしょう。


—— トーリ・パインズの成功に伴い、サンディエゴは2008 年 USオープン の公式会場に選ばれたと伺いました。おめでとうございます! ここに到達するまでにどのような経緯があったのですか?

12.jpg有り難うございます。これは “フレンズ・オブ・トーリ・パインズ” として頑張ってくれたセンチュリー・クラブの皆さん、その他多くの方々の努力により獲得したものです。サンディエゴで US オープンを開催するという願望は昔から抱いていたものの、それは夢のまた夢だと思っていました。数年前、当時のセンチュリー・クラブの社長ジェイ・レインズと一緒に出張に出た際、幾つかのゴルフコース (そのうち3つは既にUS オープンが開催された場所) を見学する機会がありました。帰りの機内で、ジェイは 「トム、US オープンを開催させるには、我々に何が必要だと思う?」 と私に質問をしてきたのです。

先ず、トーリ・パインズのゴルフコースを改造する必要があること。次に、USGA (米国ゴルフ協会) と親交を持つべきだという認識もありました。トーリ・パインズを新しくする素晴らしいレイアウトは用意されていましたが、グリーンがとても平らで US オープンとして使用するには単調すぎて、ペナルティーを覚悟するような正確さが要求されるプロ向きのコースとは言えませんでした。より深いバンカーが必要でしたし、フェアウェイバンカーも改良する必要がありました。20年前ならそのコースでも十分と言えたでしょうが、選手の技術も向上している現代では彼らの打つボールは軽くバンカーを越えてしまいます。そして、ジェイが動き出しました。私達は “オープン・ドクター” として知られている著名なゴルフ場設計家リース・ジョーンズを雇い、大規模なトーナメント会場に匹敵するゴルフコースに変身する修復と改良を依頼することで全てが上手く回り出しました。私達の活動とUSGAに浸透するリースの存在感から、USGAよりトーナメントの一つを西海岸で開催したいとの連絡が入り、このような結果をもたらしたのです。


——長年の歴史を持つトーナメントでは数多くの名選手がプレイしています。選手を惹き付けるトーリ・パインズの魅力とは何でしょう? また、今年の出場選手を教えて頂けますか?

確かに、多くの選手が活躍しています。過去の優勝者で言えば、ジーン・リトラー、アーノルド・パーマー、ギャリー・プレイヤー、ビリー・キャスパー、トム・ウェイスコフ、ジャック・ニクラウス、J・C・スニード、トム・ワトソン、ジョニー・ミラー、スティーブ・ペート。最近ではフィル・ミケルソン、デイビス・ラブ三世、マーク・オメーラ、クレイグ・スタドラー、そしてタイガー・ウッズなどの伝説とも言える選手達の活躍を目にしてきました。

選手達はトーリ・パインズが好きで、ここに来ることを楽しみにしているので、私達も選手達に喜んでもらえるよう最善の努力を尽くそうと心掛けています。トーナメントを行うのに相ふさわ応しいこのゴルフコースに選手達は魅了されているように思います。中には、フィル・ミケルソン、クリス・ライリー、パット・ペレ、スコット・シンプソンやクレイグ・スタドラーのように、昔からサンディエゴに馴染みのある選手もいます。例えば、タイガー・ウッズは南カリフォルニアで育ち、サンディエゴでのジュニア世界大会も経験し、PGAツアーでは好成績を残しています (優勝1回、ベスト5位内4回)。そして、ここサンディエゴで沢山の友人に恵まれているのも事実です。これら全ての事柄が、私達や地元ファンの皆さんへ幸運をもたらしています。本年度の大会は昨年優勝のホセ・マリア・オラサバルを始め、過去の優勝者フィル・ミケルソン、スコット・シンプソン、ピーター・ジェイコブセン、クレイグ・スタドラーの面々が並び、活躍が期待できる有力選手が勢揃いしています。


—— 選手達はそれぞれどのような性格なのでしょうか? 答えられる範囲で話して頂けますか?

選手達の性格は本当に様々です (笑)。人付き合いが上手く社交的な選手もいれば、独りを好む選手もいます。(クレイグ・スタドラーやジョン・デイリーのように) 感情をあまり隠さない選手などはゴルフコース上でその性格を読み取られてしまうでしょう。彼らは、時には陽気な部分、時には真剣な姿を見せて人々を楽しませてくれます。どの選手もお互いのプレイを尊重し合っていますが、子供のようにふざけ合うことも忘れていません。彼らを眺めていると、まるで1つの大家族のように見えますね。


—— ここ最近の日本人選手の活躍はどうですか?

彼らの活躍は目立ってきています。昨年の田中秀道選手は好成績を残しました。一昨年は丸山茂樹選手が3位でトーナメントを終了したのを覚えています。丸山、田中、今野 (康晴)、久保谷 (健一)、谷口 (徹) といった選手達を見て分かるように、日本人選手のレベルは年々アップしています。今後も競技経験を重ねるにつれて、彼らの実力は上昇し続けるでしょう。


—— この51年間で特に印象に残っていることは何でしょう?

12_1.jpgクレイグ・スタドラーの件は強く印象に残っている出来事の一つですね。14番ホールで彼の打ったボールは木の下で止まってしまい、次のショットは跪ひざまずく体勢を取らなくてはいけなかったのです。彼はズボンを汚したくなかった … そこで、彼は膝の下にタオルを敷いたのです。これは土曜日に起きたハプニングでしたが、翌日のテレビ放映でのリプレイを見ていた人から 「あれはルール違反だ!」 という連絡が入ったのです。その人が述べていた見解は正しく、土曜日のクレイグのスコアは間違っていた事実が明らかになり、彼は失格となってしまいました。勿論、この一件はクレイグ自身も納得できませんでしたが、事情を理解して、紳士的に事態を受け止めたのです。しかし、この話はこれで終わらなかった … 。仮に、失格処分になっていなければトーナメントで2位に入賞していたことから、彼は多額の賞金を逃した結果となりました。加えて、2位で終了していたなら獲得したはずのツアー選手権、更にはライダーカップの参加資格までをも奪われてしまったのです。そして、この話は面白い結末を迎えることになりました。この件から約12年後、彼を痛い目に遭わせたその木を取り除くことになり、私達は彼に電話を入れて 「あの木を切りに来ない?」 と尋ねてみました。彼はためらうことなく姿を見せて、マスコミに囲まれながらチェーンソーを手にし、因縁の木に最後の別れを告げていました (笑)。これは ESPN今年のビューイック・インビテーショナル授賞式のすぐ後にです! 休む暇もありません…大規模なスポーツイベントというものは開催準備に1年は掛かるものです。さながら、ジャグリングで100個のボールを空中で扱い、1つでも落とすことは許されない … といった状態です。


トーマス・ウイルソン ・

サ ンディエゴ・センチュリー・クラブ代表取締役、役員メンバー兼務。熱心なゴルファーで、ワイオミング大学の1970年度ゴルファー ・オブ・ ザ・イヤーに選ばれた経験を持つ。1979年にサウスウエスト・セクションの PGA アシスタント・プロフェッショナル・オブ・ザ・イヤーを受賞。1991年には PGA ゴルフ・プロフェッショナル・オブ・ザ・イヤーの栄光にも浴する。現在、南カリフォルニア PGA 顧問委員会、PGAツアートーナメント協会、サンディエゴゴルフ顧問委員会にて活躍中。



(2003年2月16日号に掲載)