12/1/2025
サンディエゴ郡の高齢者を標的にした詐欺で、この1年間に失われた金額が1億3,000万ドル (約200億円超) に上ることが、郡の「エルダー・ジャスティス・タスクフォース (高齢者保護対策チーム)」により明らかにされた。郡検事局などは11月末、この数字を公表するとともに、高齢者や家族、介護者、地域住民に向けて、インターネットや電話を使った詐欺への警戒と対策を訴えている。この啓発キャンペーンは9月に始まり、年末まで継続される予定。
▪️2020年発足の特別チーム、損失3億2,500万ドル超
エルダー・ジャスティス・タスクフォースは2020年に設立された複数機関による合同チームで、これまでに4,600人以上の被害者と3億2,500万ドル超の被害額を把握してきた。その活動の結果、州・連邦レベルで70人以上の被告が起訴され、返金や賠償が進んだケースもあるという。しかし、郡検事局によれば、高齢者詐欺は「恥ずかしい」「家族に知られたくない」といった心理から通報されないことも多く、実際の被害は統計を大きく上回る可能性が高いとみられている。
▪️AI音声も悪用、巧妙化する成りすまし詐欺
タスクフォースによると、高齢者を狙う詐欺はこの数年で一段と巧妙化している。典型的な手口として、政府機関や銀行、大手企業になりすました電話・SMS・ポップアップ広告などが挙げられる。「口座に問題がある」「すぐに対応しないと逮捕される」など、緊急性をあおるメッセージで被害者を追い込み、資金移動を迫る。また最近では、AIで生成した声を使い、家族の声を真似て「事故にあった」「身代金が必要だ」などと信じ込ませるケースも報告されている。
▪️ビットコインATM/現金手渡しは危険サイン
詐欺師は被害者に対し、銀行口座から他口座への送金、ビットコインATMへの現金投入、さらには現金や金貨・金の延べ棒を「安全のため」と称して運び屋に手渡すよう指示することが多い。郡検事局は「正規の機関が『お金を別の場所へ移せば安全だ』と持ちかけることは絶対にない」と強調し、このような要求があった場合は詐欺を疑うべきだとしている。
▪️合言葉「Stop. Hang Up. Tell Someone」
キャンペーンでは高齢者を守るための合言葉として「Stop. Hang Up. Tell Someone (行動しない・遮断する・相談する)」を掲げている。少しでも疑念を感じたら、
• 即座に行動しない (送金やコード入力を急がない)
• 電話やチャットは一度切る・遮断する
• 家族や友人、信頼できる人、警察・検事局に必ず相談する
ことが呼びかけられている。
また、相手が名乗る機関の公式番号を自分で調べ、かけ直して真偽を確かめることや、迷惑電話防止機能・着信拒否設定を活用することも推奨されている。
▪️「高齢者を守ることは地域の使命」
FBIサンディエゴ支局の担当官は「高齢者の経済的な生活基盤を破壊しようとする者を徹底して捜査し、責任を問う」と述べ、高齢者保護を地域の重要な使命だと強調している。サマー・ステファン郡検事も「人生の蓄えを奪われた高齢者に、少しでも正義と救済を取り戻したい」と語り、タスクフォースの取り組みと市民一人ひとりの注意が、被害の拡大を食い止める鍵になると訴えている。