2/3/2025
米政権はメキシコとの国境に1,500人の現役米軍兵士を派遣し始めている。これは、再選を果たしたトランプ大統領が選挙期間中から掲げていた移民対策の一環であり「国家非常事態」の宣言に基づくものだ。
■ トランプ政権の「国家非常事態」宣言
ホワイトハウスは1月22日に米墨国境への部隊派遣を正式に発表したが、詳細については明らかにされていない。米政府関係者によると、この派遣には500人の海兵隊員が含まれているが、彼らは法執行活動には関与しないとされている。
今回の派遣は予想されていたものであり、移民問題はトランプ大統領の再選キャンペーンの主要な争点だった。就任直後の1月22日、国境での「国家非常事態」を宣言し、選挙戦での強硬な主張を改めて強調した。
大統領令には「アメリカの主権が攻撃を受けている」との文言が記され、「この侵入は過去4年間にわたり、国内に混乱と苦しみをもたらした」としている。
また、この大統領令には、国土安全保障省 (DHS) を支援するための軍隊派遣や、新たな国境障壁の建設、無人航空機 (ドローン) による監視強化などの措置が盛り込まれている。
■「公約の実行」とするホワイトハウス
トランプ政権の広報チームは、今回の部隊派遣を選挙公約の達成と位置づけ、迅速に評価した。ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は「トランプ大統領が選挙期間中に公約したことであり、国民が待ち望んでいたもの」と述べている。
1月下旬には約2,500人の州兵や予備役部隊が国境に駐留した。また、米国税関・国境警備局 (CBP) には45,000人以上の職員が在籍しており、そのうち19,104人が国境警備隊員として国境の警備を担当している (2023会計年度時点)。
■ 人道的懸念と移民問題をめぐる議論
移民擁護派の団体は、軍の増派が正当な亡命申請を妨げる可能性や、軍事的な対応が民間人に適用されることへの懸念を表明。
これに対し、トランプ大統領は国境での不法入国の増加を理由に、軍事的対応が必要だと主張。トランプ氏は移民と犯罪率の上昇を結びつけて語っているが、これは統計的には裏付けられていない。研究によれば、不法移民による犯罪率は米国生まれの市民よりも低いことが繰り返し示されている。
それでもトランプ氏は「移民による犯罪」の象徴として、2024年2月に発生したレイケン・ライリー事件を引き合いに出している。ジョージア大学でジョギング中だった22歳の看護学生ライリーさんは、ベネズエラ出身の不法移民の男によって殺害された。この事件は、トランプ氏の移民政策推進の重要な材料となっている。
今後、国境での軍事的対応がどのように展開されるか、また移民政策をめぐる議論がどう進むかが注目される。