October 7, 2025

カリフォルニアで猛威の「悪夢の細菌」と耐性真菌 薬剤耐性の脅威が急拡大

9/28/2025

米疾病対策センター (CDC) とカリフォルニア州保健局 (CDPH) の最新報告によると、全米で抗生物質が効かない「悪夢の細菌 (nightmare bacteria)」の感染が急増しており、同時にカリフォルニア州では致死性の耐性真菌が広がっている。州内ではわずか数年前まで稀とされた症例が、2025年には数百件に達しており、感染症の専門家は強い警鐘を鳴らしている。

▪️二重の脅威:耐性細菌と耐性真菌
カリフォルニア州で拡大する真菌は「カンジダ・オーリス (C. auris)」で、一般的な抗真菌薬が効かず致死率が高い。州の集計では、2022年9月から2025年5月までに11,711件が確認された。ロサンゼルス郡で5,745件、オレンジ郡で3,575件、サンバーナディーノ郡で1,254件と、南カリフォルニアを中心に蔓延している。
一方、CDCの新たな報告は細菌への懸念を強調。カルバペネム耐性腸内細菌科 (CRE)、特にNDM遺伝子を持つ菌株が猛威を振るっている。全米では2019年から2023年にかけて感染率が約70%上昇し、人口10万人あたりの症例は2未満から3超へと増加。NDM菌株に限れば460%もの急増となった。

▪️カリフォルニアの現状
州保健局によると、2024年にはNDM関連症例が632件、2025年1〜7月にはすでに317件が報告されている。こうした菌は通常の抗生物質が効かず、わずか2種類の高価な静注薬でしか対応できない。2015年にはUCLA医療センターで100人以上が曝露し、2人が死亡した可能性も報告された。
CDC研究者は「NDMの台頭は米国にとって深刻な脅威」と指摘。未認識の保菌者が多く存在し、市中感染につながる恐れもあるという。尿路感染など、これまで routine とされた病気でさえ治療困難になる可能性がある。

▪️拡大の背景と課題
薬剤耐性の拡大は、抗生物質の過剰使用や不適切な処方が大きな要因とされる。新型コロナ流行期に抗菌薬の使用が急増したことも影響していると専門家は分析する。米国全体で検査や報告が不十分であり、カリフォルニアやニューヨークなど大州のデータが完全でないことから、実際の感染者数はさらに多い可能性が高い。
耐性真菌と「悪夢の細菌」という二重の脅威に直面するカリフォルニア。感染症研究者は「既存の薬が効かない病原体が増加すれば、通常の治療が成り立たなくなる」と警告する。薬剤耐性問題は今や州や国境を超えた公衆衛生の最重要課題となっている。

*NDM遺伝子:ニューデリー・メタロβラクタマーゼ (NDM) 酵素を産生する細菌が持つ遺伝子。メロペネムなどの強力な抗菌薬を分解する能力を持ち、多剤耐性菌の原因となりやすい。カルバペネム系抗菌薬が効きにくくなり、治療が困難になることがある。