2024年1月24日
11月の大統領選の共和党候補指名争いで、第2戦ニューハンプシャー州予備選が1月に投開票された。
トランプ前大統領 (77) がヘイリー元国連大使 (52) との一騎打ちを制し、初戦のアイオワ州党員集会に続き連勝した。
指名獲得に大きく前進し、本選で民主党のバイデン大統領 (81) との再対決になる公算が大きくなった。
議会襲撃事件での起訴を逆手に取って保守派を結集。
怒濤 (どとう) の勢いを見せるトランプ氏。
ただ、共和党穏健派や無党派の支持離れが目立ち、11月の本選へ不安も残している。
一方で、11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏は1月24日、全米自動車労働組合 (UAW) の推薦を得た。
北米自動車業界を代表する大規模労組の支持を固め、選挙戦で追い風となりそう。
▽天王山
「彼女には、ひどい夜になったね」。
ニューハンプシャー州の予備選に勝利したトランプ氏は支持者を前に勝ち誇った笑みを浮かべた。
一騎打ちの末、敗れたヘイリー氏は共和党穏健派や無党派が比較的多い同州の予備選を天王山と位置付け、勝負を懸けていた。
「国民はトランプとバイデンの再対決を望まない」と世代交代を要求。
大富豪チャールズ・コーク氏傘下の政治団体の支持を受け、トランプ陣営の2倍近い2,900万ドル (約43億円) を投入していた。
地元で人気のスヌヌ・ニューハンプシャー州知事 (49) の推薦も得て小規模集会を重ね、前回大統領選で不正があったと陰謀論を唱えるトランプ氏を嫌う無党派に支持を広げた。
だが、米メディアは投票終了直後にトランプ氏の当確を報道。
差を見せつけられた。
ヘイリー氏にとって最大の誤算は、予備選2日前のデサンティス・フロリダ州知事 (45) の撤退だった。
デサンティス氏ら保守派候補が、トランプ氏と票を奪い合う――。
思い描いた戦略はライバルの退場で瓦解 (がかい) した。
ヘイリー氏が唯一の対抗馬になると、トランプ氏はなり振り構わぬ中傷キャンペーンを展開。
「極左と民主党がヘイリーを支えている」。
インド系のヘイリー氏が生まれた際、両親に米市民権がなかったため大統領選出馬資格もないと、根拠なく主張した。
▽破壊
「ヘイリーはトランプほどタフじゃない」。
トランプ氏の選挙集会に参加した支持者は、南部国境で移民流入を許し、インフレを悪化させたとして、バイデン政権への不満を口々に語る。
候補選びの尺度は現状を打破する「強さ」だ。
トランプ氏が当選した2016年大統領選ほどの熱狂はなく、物議を醸す言動を全て支持するわけでもない。
だが「米国第一」を貫いたトランプ前政権は「バイデン政権よりずっと良かった」との評価はブレない。
先月、氷点下のニューハンプシャー州ラコニアでトランプ氏の集会に入るため、2時間待ち続けた男性エンジニア (62) は「弱者に寄り添う」など、綺麗 (きれい) ごとを並べ立てているとしてバイデン氏に憤る。
「トランプ氏は米国の自由を守っている」。
白い息を吐きながら語った。
一方、無党派の女性看護師 (65) は、トランプ氏が返り咲けば「欧州に移住する」と嫌悪感を露 (あら) わにした。
トランプ氏は前回大統領選の接戦州で、共和党穏健派や無党派の支持を欠き、敗北した苦い経験もある。
(2024年2月16日号掲載)