2024年9月4日
大統領選の民主党候補ハリス副大統領は祝日レイバーデー (労働者の日) の9月2日、日本製鉄が買収を目指すUSスチール (USS) について「米国で所有、運営すべきだ」と主張し、
買収計画への反対姿勢を示唆した。
買収に反対している全米鉄鋼労働組合 (USW) に配慮を示した。
USWが本部を構える激戦州のペンシルベニア州ピッツバーグで開かれた労働組合向けの集会で述べた。
ハリス氏が民主党候補に決まった後に買収に言及するのは初めてで、バイデン大統領の立場を踏襲した。
この日を境に大統領選が終盤戦に入るのを見据え、労組の支持を固める狙い。
買収に関しては、返り咲きを狙う共和党候補トランプ前大統領も労組票の切り崩しを狙って買収阻止を明言している。
ハリス氏は「USスチールは歴史ある米企業だ。強力な米国の鉄鋼企業を維持することは国家にとって不可欠だ」と強調。
「私は常に、鉄鋼を含む全ての労働者を支援する」とも語った。
日本製鉄はハリス氏の発言を受け、買収は「他のどの選択肢よりも米国のラストベルト (錆びた工業地帯) を再活性化させ、米国の労働者や国家安全保障に利益をもたらすと確信している」とのコメントを発表した。
ハリス氏はこれに先立ち、同じく激戦のミシガン州デトロイトで別の労組との会合でも演説した。
組合活動を後押しする法整備に力を入れるとアピール。
トランプ氏は富裕層を厚遇していると指摘し「組合員が団結する自由を持たない時代に逆戻りする」と非難した。
集会には、地元に本部を置く大規模労組のUSWや米教師連盟の幹部らが参加し、拍手で賛意を示した。
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ウォールストリート・ジャーナル紙は9月4日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収が破談となった場合、USスチールがペンシルベニア州の工場閉鎖や本社移転の可能性が高いと報じた。
USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者 (CEO) がインタビューで語っている。
日鉄側は買収に伴い、USスチールが同州に持つモンバレー製鉄所などに投資し、製鉄所の競争力強化や雇用を創出する考えを示している。
ブリット氏はインタビューで、日鉄の投資は雇用維持のために不可欠だとし、取引が決裂した場合「私たちは (投資は) しない」などと述べ、モンバレー製鉄所の将来的な閉鎖の可能性と、同州ピッツバーグにある本社の移転に言及した。
日鉄によるUSスチール買収については、USWが反対を表明。
ブリット氏は買収による恩恵が大きいとの認識を示し「(反対は) 不可解で困惑している」と語った。
日鉄の買収には共和党候補のトランプ前大統領も反対を明確にしている。
USスチールの本社があるペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事も日本製鉄による同社買収に「深刻な懸念を抱いている」という。
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(2024年9月16日号掲載)