Thursday, 17 October 2024

TV討論会初対決、トランプ氏守勢、ハリス氏追及  中絶、経済、移民問題めぐり、激しく応酬

2024年9月11日

大統領選に向け、民主党候補ハリス副大統領 (59) と共和党候補トランプ前大統領 (78) は9月10日夜、初のテレビ討論会で直接対決に臨んだ。

米国民の関心が高い経済や移民問題で激しい応酬になり、ハリス氏は人工妊娠中絶の是非や議会襲撃事件をめぐる姿勢を追及。

トランプ氏は守勢に回った。


11月5日の投票まで2か月を切り、支持率が拮抗 (きっこう) する中、ハリス氏は初舞台を卒なく乗り切り、終盤戦へ弾みをつけた。

一方、トランプ氏はバイデン大統領 (81) を撤退に追いやった6月の討論会から一転して押し込まれ、たびたび議論から脱線した。

両陣営とも激戦州で無党派層の取り込みに全力を挙げる。


ABC-TVが主催し、激戦州のペンシルベニア州フィラデルフィアで90分開催。

CNN-TVの緊急世論調査によると、ハリス氏が勝者と答えた人は63%、トランプ氏は37%だった。


ハリス氏は、トランプ氏が在任中に最高裁を保守化させ、女性から中絶の権利を奪ったと非難。

議会襲撃を含む複数の事件で起訴されており「民主主義に対し最悪の攻撃を仕掛けた」と述べた。


トランプ氏が人種問題で攻撃的な言動を繰り返し、国民の分断を招こうとしていると問題視。

ロシアのプーチン大統領を称賛してきたことにも触れ「独裁者になろうとしている」と指弾した。


トランプ氏は中絶の是非について「各州が決める」と繰り返し、正面から答えるのを避ける場面が目立った。

自身が起訴されたのは民主党が選挙に勝つため司法を利用したからだと反発した。


「インフレは米史上最悪だ」と述べ、バイデン政権ナンバー2のハリス氏の対応を批判。

不法移民に関しても「何百万人も米国に流入し、仕事を奪っている」として無策だと訴えた。


パレスチナ自治区ガザ情勢で、ハリス氏はイスラエルの自衛権を擁護しつつ、パレスチナとの「2国家共存」を目指すべきだとした。

トランプ氏はハリス氏を反イスラエル的だと非難した。


米メディアによると、討論会終了後、ハリス陣営は再討論に前向きな姿勢を示し、トランプ氏は明言しなかった。

関門突破も決定打欠く、大統領選の討論会

▪︎ 解説:大統領選の民主党候補ハリス副大統領は、共和党候補トランプ前大統領との初の討論会で互角以上に渡り合った。

最終盤に向けて重要関門を突破したが、決定打は欠いた。

投開票日まで僅差の戦いが続きそうだ。


討論会の出来は浮沈に直結しかねない。

6月に不振に終わったバイデン大統領は、その後撤退に追い込まれた。

2016年大統領選から3回連続で共和党候補となったトランプ氏は討論慣れしている。

一方、ハリス氏は大統領候補として初の舞台で、即興が苦手だと不安視する向きもあった。


ハリス氏は2016年大統領選でトランプ氏に敗れたクリントン元国務長官から「振り回されてはいけない。

振り回さないと」と助言を受けたとされ、攻め手を緩めなかった。


ニューヨーク・タイムズ紙が討論会前に実施した全米世論調査では、トランプ氏が1ポイントリードしていた。

ハリス氏の勢いに限界も見え始めていただけに、今回のパフォーマンスは追い風になる。


トランプ氏は物価高や不法移民問題の責任を、バイデン政権ナンバー2であるハリス氏に結び付ける戦略で臨んだ。

「米国を壊している」と再三批判したものの、強い印象を残せなかった。


米メディアによると、9割方は誰に投票するのか既に決めている。

この日の討論で、浮動層にどの程度浸透したかが鍵となりそうだ。

*Picture:© Poetra.RH / shutterstock.com


(ワシントン共同=堀越豊裕)


両陣営ともに勝利宣言 討論会後に声明

9月10日の大統領選討論会後、ハリス副大統領とトランプ前大統領の陣営はそれぞれ声明で勝利宣言した。

ハリス陣営は「次期最高司令官になる準備ができている唯一の候補だと国民に知らしめた」と訴え、トランプ陣営は「トランプ氏が見事な討論を披露した」と誇った。


ハリス陣営はトランプ氏が「支離滅裂だった」とし「数え切れないほどの嘘 (うそ)」を繰り出したと指摘。

トランプ氏がもたらした「暗黒と分断をきっぱりと断ち切る大統領」になると強調し、「10月の2回目の討論」に臨む用意があると表明した。


トランプ陣営は「高いインフレ、犯罪者やテロリストの流入を許す穴だらけの国境、犯罪への弱腰、それらがハリス氏の象徴だ」と主張した。

両氏は一夜明けた11日、2001年の米中枢同時テロの追悼式典に出席し、握手を交わした。

(2024年10月1日号掲載)