浮腫 Edema (2017.2.1)

kim top 
 
dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


ご質問、ご連絡はこちらまで

       
column line
 

浮腫 Edema 

       
       

浮腫 (ふしゅ) は医学用語で、一般的には 「むくみ」 を意味します。

浮腫、特に足のむくみは、長時間の立位や座位、生理などによるものが大半で、心配しなくてもいいことが多いのですが、心臓、腎臓、肝臓などの病気、下肢静脈瘤、血栓症などと関係のあることがあります。

 

浮腫の原因

 

浮腫は、血管内の液体成分が血管外の組織 (間質) に出ることによって生じるもので、血管外の水分の貯留によるものです。

 

浮腫の原因になる疾患としては、心不全や心筋症など心臓の病気、腎不全やネフローゼ症候群など腎臓の病気、肝硬変、下肢静脈瘤、深部静脈血栓 (DVT)、ホルモン療法、リンパ系の異常、イブプロフェンやナプロキセンなど抗炎症鎮痛薬の副作用、糖尿病薬や高血圧薬の副作用、生理、妊娠、長時間の立位や座位、塩分の取りすぎ、低アルブミン血症などがあります。

 

原因不明の浮腫もあります。

 

 

 

心臓の病気による浮腫

 

心不全は、心筋梗塞や他の虚血性心疾患、高血圧、心筋症、心臓の弁の病気、心筋炎、不整脈などが原因となり、心筋が弱くなったり、心臓が正しく働かなくなり、心臓のポンプ機能が低下した状態です。

 

左心室不全では、左心室のポンプ機能が低下し、全身に血液を十分に送り出せなくなります。

 

その結果、肺に水が溜まる肺水腫を起こしたり、腎臓への血液量が低下する結果、腎臓は体の血液量の低下と誤解し、塩分と水分の保持を計ります。

 

それが浮腫につながります。

 

右心室不全では、右心室のポンプ機能が低下し、肺に十分な血液を送り出せなくなり、全身から心臓に戻ってくる静脈系の血液が鬱滞 (うったい) します。

 

その結果、毛細血管から血管の周りの間質へ液体成分が移動して浮腫が起こります。

 

 

 

腎臓の病気による浮腫

 

腎臓の機能が低下する腎不全になると、腎臓から塩分や水分を効率よく排出できなくなり、体内の塩分、水分が貯留し浮腫を起こします。

 

腎不全の原因になる病気としては、糖尿病、高血圧、多発性嚢胞 (のうほう) 腎、薬の副作用などがあります。

 

ネフローゼ症候群になると、腎臓からたんぱく質が排出されます。

 

特に血液中のアルブミンの量が低下します。アルブミンは血管内に液体成分を保持する役割があるので、それが低下すると血液の液体成分が血管外に移動し、浮腫を起こすことになります。

 

ネフローゼ症候群の原因になる疾患には、様々な糸球体腎炎、糸球体腎症、糖尿病性腎症、腎静脈血栓症、アミロイドーシスなどがあります。

 

 

 

肝臓の病気による浮腫

 

肝硬変になると、胃、腸、膵臓から肝臓に行く静脈系の血圧が上昇します。

 

(門脈圧亢進)。その結果、おなかの中に水分が溜まったり (腹水)、足のむくみの原因になります。

 

肝臓では食事で吸収されたタンパク質を成分にアルブミンが生成されます。

 

アルブミンは、前述したように血管内の液体成分を保持する役割があるので、それが低下すると浮腫の原因になるのです。

 

肝硬変は、アルコール飲料の飲みすぎ、ウイルス性肝炎、脂肪肝、自己免疫疾患、鉄分が沈着するヘモクロマトーシスなどが原因になります。

 

 

 

 

血管の病気によるむくみ

 

足の静脈には弁が付いていて、心臓に戻っていく血液が逆流しないようになっています。

 

静脈不全症では、静脈の損傷、静脈弁の閉鎖不全、静脈周辺の筋力の低下などによって、血液が効率的に心臓に戻っていかないで静脈内に貯留してしまい、その結果、足に浮腫が起こります。

 

最も多い原因は深部静脈血栓症で、血栓後の後遺症で静脈血の還流が障害されます。

 

下肢静脈瘤も静脈不全症の原因になります。他に、肥満、妊娠、喫煙などは静脈不全症のリスクになります。

 

片方の足になることが多く、あまり利尿剤が効きません。

 

 

 

 

それ以外が原因のむくみ

 

それ以外の原因としては、薬の副作用、生理や妊娠、また、リンパ系の障害、長時間の立位や座位などがあります。

 

 

 

 

浮腫の合併症

 

浮腫が悪化すると、痛み、歩行困難、手足の硬直、皮膚の不快感、感染の可能性が高くなる、血液循環の低下、動脈・静脈・関節・筋肉の弾力の低下、皮膚の潰瘍 (かいよう) 形成などが起こります。

 

 

 

 

浮腫の診断

 問診と診察で浮腫の診断はできますが、原因となる疾患を精査するために、レントゲン、超音波検査、血液検査、尿検査、場合によってはさらにCTなどが必要になります。

 

 

 

 

浮腫の治療

 

治療は原因によって異なってきます。

 

原因疾患のある場合はそれに対する治療がまず必要になります。

 

浮腫が軽度な時は自然に治癒する可能性もあります。

 

浮腫の治療には、塩分を控える、心臓よりも高く足を上げる、弾性ストッキングの着用、尿の排泄を促進する利尿剤の使用などがあります。

 

長時間の立位や座位で起こるむくみの場合、足を上げたり、足の運動をするのが効果的です。

 

ふくらはぎやふとももの筋肉を動かすとそれがポンプの役目をし、足の静脈内の血液を心臓に戻します。

 

浮腫の治療として利尿剤が使われることがあります。

 

フロセミド (商品名:Lasix)、トーセミド (Demadex)、ブメタニド (Bumex)、ヒドロクロロチアジド、メトラゾン (Zaroxolyn)、スピロノラクトン (Aldactone)、トリアムテレン (Dyazide) などです。

 

原因不明の浮腫で利尿剤を長期使用するのは、利尿剤依存症になる可能性があるのであまり勧められません。

 

利尿剤依存症になると、カリウムの欠乏、体循環量の不足、腎機能障害、血糖値の上昇、痛風、筋けいれん、女性乳房化、膵炎などの合併症が起こることがあります。

 

 

 

 

浮腫の予防

 

長時間の座位や立位の姿勢を避ける。腕や足の筋肉を動かして手足がむくむのを予防する。足のむくみなどは足を心臓より高い位置に上げると改善するので、睡眠中に足を高くして寝る工夫も必要かもしれません。

 

むくんでいる場所を心臓の方向に向けてマッサージをする。弾性ストッキングの使用。浮腫のある部分は傷ついたり潰瘍や感染を起こしやすいので、その部分を保護することも大切です。

 

塩分の摂取量を制限する。長時間の飛行機や座位では、足の体操をしたり時々歩いたりして足のむくみを予防しましょう。

 

 

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2017年2月1日号掲載)