金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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オミクロン変異株 (Omicron Variants) |
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現在、世界中で、新型コロナウイルスのオミクロン株による感染が爆発的に増えています。パンデミックが宣言されて2年半たちますが、このオミクロン株による感染爆発は、これまでの変異株とは比べようがないくらいの速度と規模で広がっています。
オミクロン株の出現 昨年11月下旬、南アフリカからWHO (世界保健機関) に新型コロナウイルスの変異株であるB.1.1.529が報告され、11月26日には、WHOが懸念すべき変異株と認定し、オミクロン株と名づけました。
アメリカ国内でのオミクロン株系統、亜系の推移 アメリカでは、今年1月には、オミクロン株のBA.1系統から始まり、BA.1.1に置き換わり、その後BA.2系統が優勢になりました。 8月20日現在で、米国で流行しているコロナウイルスはほぼ100%オミクロン株で、そのうち、BA.5が88.9%、BA.4.6が6.3%、BA.4が4.3%、BA.2.12.1が0.5%です。
オミクロン株の特徴 オミクロン株は、新型コロナウイルスの元々の株よりも感染力が強いデルタ株と比べても、感染力はデルタ株の3〜4倍あり、症状が出るまでの潜伏期間はデルタ株より1〜2日短いので、感染が非常に短期間に広がりやすい性質を持っています。 オミクロン株は、感染力は従来株に比べて強いのですが、症状は軽い傾向が高く、重症化は従来株よりも低いようです。 オミクロン株も、それまでのアルファ株、ベーター株、デルタ株など新型コロナウイルスの一つの変異株にすぎないのですが、それまでの変異株に比べて際立った特徴があります。 オミクロン株の系統と亜系 オミクロン株は最初のBA.1系統から始まり、その後、様々な系統、亜系が出現してきています。 ・BA.1:オミクロン株の最初の系統。デルタ株よりウイルス増殖が70倍速いとの報告。 ・BA.2:BA.1より感染力が強く、アメリカでは今年の1月から出現。 ・BA.XE:BA.1とBA.2より派生 (組換え体)、BA.2より感染性が強い。 ・BA.2.12:BA.2の亜系で、このBA.2.12と BA.2.12.1がある。 ・BA.2.75:ケンタウロスというニックネームがついた亜系で、BA.2とBA.5 の中間のような亜系。 ・BA.3:非常に珍しい系統。 ・BA.4:BA.5とともにアメリカで2番目に多いオミクロン株系統。 ・BA.5:現在、アメリカで一番多いオミクロン株系統。
オミクロン株の症状 オミクロン株の症状は、それ以前の変異株の症状を比べてみても、それほど大差はないですが、味覚や臭覚の異常が少なく、のどの痛み、咳、鼻水など、風邪症状が多いのが特徴です。 症状としては、咳、のどの痛み、鼻水、発熱、頭痛、だるさが主で、他に、悪寒、息苦しさ、体の痛み、鼻づまり、くしゃみ、嘔気、嘔吐、下痢などがあります。注意すべき症状としては、呼吸苦、胸痛や胸の苦悶感、意識障害、傾眠、サイアノーシス (皮膚などが青くなる) などがあります。
オミクロン株の検査と治療 オミクロン株は、それまでの新型コロナ抗原検査やRT-PCR検査で診断できます。
オミクロン株に対するワクチンの効果 オミクロン株以前のデルタ株に比べて、コロナワクチンの効果は全体的に低下していますが、入院、重症化、死亡に対する予防効果はある程度保たれているようです。 今後、免疫回避力の高いオミクロン変異株が出てくるとどうなるかは分からないですが、現在、オミクロン変異株 (BA.1をベースにして開発、BA.5にもある程度効果あり) もカバーするワクチンが開発されています。
オミクロン株に対する感染予防 感染の予防は、前述したように、新型コロナワクチンの追加接種を受けるのが最大の予防になります。
オミクロン株のサーベイランス CDC (米国疾病予防センター) は、大規模な新型コロナウイルスのゲノム解析 (遺伝情報の解析) を継続的に行ってきています。 |
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(2022年9月1日号掲載) |