マインドフルネスのすすめ(2017.1.16)

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mikamo_info.jpg     美甘 章子

心理学博士

広島大学教育学部・大学院から教職を経て渡米。
心理学博士として医療や教育現場で幅広く
臨床経験をつんだ後開業。
元みなと学園コンサルタント。
現在、臨床心理ドクターとして
臨床とコンサルテーション(エグセキュティブ・コーチング、
産業心理、スポーツ心理等)で日米両国において幅広く活動。
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マインドフルネスのすすめ

       
       

マインドとは?

 

英語でマインドフルネス(Mindfulness)と聞くと、日本語が母国語で英語を学んだ人は、「ん?マインドがフル、つまりいっぱいっていうこと?」と考えがちで意味がピンときません。

 

そもそも、“Mind(マインド)”とは何でしょうか。

 

日本人は、“Mind”と言葉にする時に、「心」や「精神」という訳語に影響されてか、胸に手を当てるジェスチャーをする人が少なくありませんが、英語が母国語の人は、“Mind”と言うときは、頭を指さします。

 

精神とは神経の働きからなる思考、感情、感覚などで、脳が全て司っているからです。

 

ちなみにメンタル(Mental)という形容詞の意味は、マインドに関連していると理解すると良いでしょう。

 

つまり、「精神的な」という意味で、「マインドとボディー」という風に、特にフィジカル(Physical)と対照的な意味でよく使われます。

 

 

マインドフルネスとは?

 

元来、英語のマインドフルネスはパーリ語の「サティ」の訳語だそうで、日本語では「念」や「気づき」と訳されています。

 

「サティ」とは、仏教に置ける瞑想の基本の一つで、執着や感情的囚われなしに、今この現在の内観や現象に中立的な立場から注意を払った状態を保つことです。

 

最近、ヨガや瞑想などを取り入れたマインドフルネストレーニングのクラスや合宿などもとても人気があります。

 

 

臨床心理におけるマインドフルネス

 

臨床心理学の研究と実践では、マインドフルネスのストレスやうつ病などに対する効果が認められ、マインドフルネスを中心とした精神状態に到達する技術の体得と促進に焦点を当てた心理療法が注目されています。

 

無意識や認知(思考過程)と感情や行動や観念に焦点を当てる従来の各心理療法学派に加えて、精神、身体、行動、生理、魂などを統合的に捉える統合心理療法(Integrative Psychotherapy)です。

 

 

マインドフルネスの効用

 

うつ状態や不安状態、又は過度のストレスがかかっていたり続いている時、私たちは何かに囚われすぎていたり、逆に感情を遮断していたり、ネガティブ思考になって悲観しすぎていたり、物事の本質が見えなくなったりしていることがよくあります。

 

例えば、仕事で 上司や同僚などから不条理なことを押し付けられたり、非現実的な長時間労働をせざるを得ない状況にあるかもしれません。

 

又は、配偶者や恋人や子供が、自分をないがしろにするような言動を平気で何度も繰り返しているかもしれません。

 

特に人間関係のストレスが長期間にわたったり、睡眠や栄養摂取のリズムが狂ったり質が悪化したりがある程度続くと、どんなに丈夫な人でも適応障害としてのうつ状態や不安状態、又は頭痛や循環器系・消化器系などの不調を起こしかねません。

 

このような時、「辛い、苦しい」などに常に気づいているのはあまりにもしんどいので、「自分が我慢して頑張ればなんとかなるのではないか」と苦痛を無視して無理を続けたり、他者から受ける仕打ちに対しての恨みつらみに囚われて、あたかも「どうせ自分なんて」とでも言わんばかりの自虐的な態度をとっていたりして、自身の心身的な健康にますます害を与えていることがあります。

 

日本人は欧米人に比べて、気づかないうちに苦痛や苦悩を抑圧したり、意識から切り離して感じなかったりする場合が多く、これを我慢強いと解釈している人が多いです。

 

が、痛みを一時的に意識しないことによって最重要なことを達成する(災害の時に逃げるなど)ことは必要な場合もありますが、日常化している事柄をずっと意識しないようにすることは、遅かれ早かれ必ず弊害が出てきます。

 

ただし、苦痛や苦悩に思いっきり気づくのがマインドフルネスではありません。

 

例えば人間関係のストレスで苦しんでいる場合、マインドフルネスによって「ああ、自分はこんなに肩や首に力が入っているな」とか「心身ともに疲弊してるな」ということを静かに実感したり、「今の状態を無理やり続けることが自分の本来のベストの姿ではないな」ということに気づいたり、「もっと自分に優しくしよう」という気が湧いたり、「自分が被害者のような気がしてたけど、実は相手を知らないうちに苦しめてたかも」と全体像が見えてきたりするかもしれません。

 

実際には、何か意識的なことに気づくというよりも、内観により心身のバランスを築くということが大事なのです。

 

 

これをすればマインドフルネスが得られるという単純なレシピはありません。

 

マインドフルネスとは、逆立ちのように、できるかできないかの技術ではなく、到達のための練習の過程が大切なプロセスです。

 

正しい呼吸法、バランスの整った栄養、睡眠など体調の基本を整える努力、エクササイズ、ヨガ、瞑想、ジャーナリング(思うことを書き留める)、意味のある対話などを統合的に行うことによって、より健康的な心身のバランスを目指すことと理解してください。

 
 
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「心の健康ノート」シリーズでは、主な心の病気やストレスの表れ方、心理療法、精神科薬、人との接し方、家族関係、職場でのメンタルヘルス等について、心と体の健康のために、ぜひ皆さんに正しく理解して頂きたいことを紹介していきたいと思います。
 

 
(2017年1月16日号掲載)