Friday, 29 March 2024

コミュニケーションスタイルの違い(2022.5.16)

mikamo top
 
    美甘 章子

臨床心理医。医療や教育現場て幅広く臨床経験を積み、みなと学園コンサルタントも務めた。

エグゼクティブ・コーチング、スポーツ心理、精神科薬相談、心理療法、精神鑑定、教育心理アセスメント、発達障害相談など日・欧・北中南米などグローバルに従事。

「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」著者。

平和教育団体San Diego-WISH代表。


ご質問、ご連絡はこちらまで

       
column line text932
 

コミュニケーションスタイルの違い

       
       

物事を認知するスタイルや、それを脳内で処理するスタイル、そして考えや気持ちを表現するスタイルに、人それぞれ違いがあります。

職場、家庭、交友関係で「しっくりいかない」、「わかってもらえない」、「コミュニケーションが難しい」、「なんでこんな反応になるのか意味不明」などと感じるときに、このコミュニケーションスタイルに色々な幅があると言うことを理解していないと、まるで自分への仕打ちのように感じたり、相手が「どうでも良いと思っている」と解釈しがちで、ギクシャクした関係につながる場合があります。

これらのスタイルについては、専門的には色々な分け方やカテゴリーがありますが、今回は、欧米ではもちろん、最近日本でも企業などでより使われるようになった性格診断の指標であるMBTI(マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標)を元に説明をします。


MBTIの4つの軸

MBTIは自己報告の質問票で、その結果は下記の4つの軸(I-E、S-N、T-F、J-P)で現れます。

1. 内向性(Internalizing)vs 外向性 (Externalizing)

その人のエネルギーが自己内に向いているか、自分の外に向いているか、またエネルギーの源は自己内から得るか外から得るかを示します。

内向性の強い人は、集まりやミーティングではエネルギーが吸い取られる感じがして疲れることも多く、1人で読書や運動などの行動をする時間が必要です。外交性の強い人は、1人では退屈に感じたり楽しめなかったりするので、社交性が高く色々な交友関係や職場の人とやり取りすることでエネルギーを得たり良いアイデアが浮かんだりすることが多いです。

 

2. 感覚型 (Sensing) vs 直感型 (iNtuition)

感覚という日本語が誤解を招きやすいので、私は「データ型と直感型」と説明することが多いです。物事を認知する時に、数字や形態などのデータを主に取り入れるか、なんとなくその物事について感じる直感やインスピレーションを主に取り入れるかの違いです。

例えば、同じ報告書やお店に並んでいる商品を見ても、データ型(S)の人は、具体的な数字や色や形が目につきますが、直感型の人は、「この報告書は全体的に論理的にまとまっていて、構成もわかりやすい」とか「この店の商品陳列はランダムで自分の欲しいものが見つけにくい」とか感じることが多いのです。

3. 思考型(Thinkiig) vs 感情型(Feeling)

意思決定をするときに、主に思考や論理に基づいて判断をするか、感情に基づいた判断をするかです。

例えば、子供を海外に留学させようとしている親御さんですと、思考型の人は「今、円安だから経費がより多くかかる」、「寮に入るか学生アパートが良いか情報を集めなくては」、「子供のTOEFLは〇〇点だからこの大学ならやっていけるかもしれない」などの思考に基づいて判断しようとしますが、感情型の人は「今まで国内でも遠くに出したことがないので、不安だ」「アメリカはアジア人に対するヘイトクライムが多いと聞いているので心配だ」「自分が英語が苦手だったので、子供は英語を喋れるようになってくれたら嬉しい」などの感情がより大きな判断要素となります。

4. 判断型 (Judging) vs 知覚型 (Perceiving)

これも知覚という日本語が分かりにくいのですが、Judgingの人はどんどん物事を決めて余裕を持って計画したり、締め切りを守ることに重点をおき、Perceivingの人は他の要素が出てくるかもしれないと何となくアンテナを張っているため、なかなか行動を起こさなかったり締め切りを守らなかったりすることがあります。

例えば、出発時刻の4時間前には空港に行っていないと気が済まない人と、手続きにかかる時間を最小限に計算してなるべくギリギリに行って、無駄な時間を空港で過ごしたくない人でしょうか。または、旅行の計画を数か月前から綿密に立てたい人と、何があるかわからないし1泊目だけホテルをとっておいてその時の状況や気分で詳細を決めたい人もいます。


これらの4軸のそれぞれのタイプは、どちらが良いとか悪いとかではなく、両方とも状況によって適応的な場合と不適応的な場合があるのです。


16の性格タイプ

上記の4軸に2タイプずつですから、全体ではISTJ、ENFPなど16のタイプが存在します。

ここでは全てのタイプは紹介できませんが、例えば、管理者型と言われるISTJの人(実用的、論理的、サッと作業を完了、整理整頓が好き、柔軟性に欠けることもあり)が広報運動型と言われるENFPの人(革新的、リスクを恐れない、影響力大、わくわく感を大事にする、曖昧な状況OK)とやり取りをしていると、上記の4軸があまりにも全てにおいてスタイルが違うので、「人それぞれで良い悪いではない」ということを理解していないと、腹が立ってしょうがないような状況に陥ってしまいます。

まずは、「色々なスタイルがあり、良し悪しではなく、その人のスタイルからすると、この事項や案件はどうコミュニケーションを取るのが一番効果的か」という思考回路が大事なのです。

 
blue line932
 
「心の健康ノート」シリーズでは、主な心の病気やストレスの表れ方、心理療法、精神科薬、人との接し方、家族関係、職場でのメンタルヘルス等について、心と体の健康のために、ぜひ皆さんに正しく理解して頂きたいことを紹介していきたいと思います。
 
 
(2022年5月16日号掲載)