鈴木 博美
ドッグトレーナー 2匹のゴールデンレトリバーとの出会いをきっかけに犬の世界に興味を持つ。楽しく、且つ効果のあるトレーニング方法を求めて渡米。ケープ・エイブル・ケーナ イン(Cape-Able-Canine) のドッグトレーナー研修プログラムを終了。現在、ケーナイン・トゥ・ファイブ (Canineto Five) を立ち上げ、日本語によるドッグトレーニングクラスも開講している。幼稚園教諭の経験もある。ご質問、ご連絡はこちらまで |
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社会化で見落としやすいこと | |||
年末年始になると、来たるべき春に向けて子犬を迎える方が増えてきます。 当コラムでは子犬の社会化について何度も述べてきましたが、今回は、その社会化の中で見落としやすい内容に的を絞ってお話ししたいと思います。
社会化の重要性 子犬時代に「社会化する」 ことがとても重要であるということは、ほとんどの方が知っている通りです。 人間の子どもたちが将来、社会に出て一人一人が活躍するために、幼稚園/保育所、小学校、中学校、高校、大学と進んでいきますよね。 これら 「勉強」 とひとまとめにくくられている中に、集団活動におけるルール、他人との付き合い方を調整していく方法を学ぶということも含まれています。 学校生活を送らずに20歳を迎えたからといって会社に就職した場合、どのようなことが起こるでしょうか? (想像するのが怖いくらいです…)
人間社会への適応 犬たちも同じで、集団生活に適応する能力を持ってはいますが、人間社会でのルールや環境は想像を遥かに超えるものでしょう。 未知なる世界を恐れることは当たり前ですが、この恐れたままの状態が続いた場合、動物の生存本能は、その恐れに対して 「逃げるか、戦うか」 の選択を迫られます。 しかし幸運なことに、私たち同様、犬も学習する能力を備えており、子犬時代に「上手に向き合う」経験を持たせることにより、将来出会う物事すべてを怖がらずに対応できるようになるのです。
5か月のボクサーの場合 実際に具体例を挙げてみましょう。 5か月のボクサーの女の子はとても活発で、人が大好き、犬が大好きな天真爛漫な子犬です。 好奇心旺盛で、裏庭をは大はしゃぎで走り回り、おもちゃを追いかけてはオーナーと過ごす時間を楽しんでいました。 オーナーは生活にゆとりがあり、過去に犬を飼っていたこともあり、インターネットなどの情報を集めて子犬のトレーニングを行っていましたので、パピークラス等の参加はしていません。 それから何事もなく過ぎ、6か月が経過した頃、同じように裏庭で遊んでいた時、オーナーが花壇の水やりを終え、ホースを巻き付け始めた時、突然しっぽを丸めてガタガタと震え始めたのです。 オーナーは「おや?」と不思議に思いましたが、特に気にも留めず、何をするでもなく、どんどん月日が流れていきました。 1歳を越えた頃、散歩中に突然、人や犬に向かって吠えたり、来客に対して少しだけ唸ったりする様子が時々見られました。 毎回ではないので、オーナーも特に何もしませんでしたが、1歳半頃には散歩中のほとんどで吠えたり、相手に突っ掛かっていくこともあり、来客に対する吠えようは凄まじいものとなり、大型犬ということもあって、オーナー自身が恐怖心を抱くようになってしまいました。
トレーニングクラス さて、このストーリーの中で、何回かの分岐点がありましたが、実は、それ以前の「落とし穴」 があったのです。 それは、家庭以外での環境で過ごす時間があまりにも少ないことです。 パピークラスを始めとし、様々なトレーニングクラスに参加しなかったことで、この犬のウィークポイントに誰も着目できず、見逃し続けた結果、大きな問題行動として対応しなければならなくなりました。 トレーニングクラスに参加したり、個別レッスンを受けることで、トレーナーから将来的に問題行動になり得る行動のきっかけを教えてもらい、すぐに対応することで、犬に「逃げるか、戦うか」の選択ではなく「上手に向き合う」学習をさせていくことができます。 兄弟が何人いようと、全ての子どもが学校へ通うのと同じように、何度子犬を迎えても、トレーニングクラスへの参加が必要であることを覚えておいてくださいね。 |
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※ここで紹介する方法はあくまでも一般的なものです。犬の年齢・気質により大きく変化しますので、専門家と相談しながら取り組まれることを推奨します。 | |||
(2012年12月1日号掲載) |