Tuesday, 10 December 2024

フィードバックは贈り物(2022.9.16)

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    美甘 章子

臨床心理医。医療や教育現場て幅広く臨床経験を積み、みなと学園コンサルタントも務めた。

エグゼクティブ・コーチング、スポーツ心理、精神科薬相談、心理療法、精神鑑定、教育心理アセスメント、発達障害相談など日・欧・北中南米などグローバルに従事。

「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」著者。

平和教育団体San Diego-WISH代表。


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フィードバックは贈り物

       
       

様々な場面で、他の人から受けるフィードバックは、嬉しいものもあれば、時には傷ついたり心が折れそうになったりするものもあります。

しかし、人間として成長をする、またその人との関係をより良いものにするためには、フィードバックは非常に貴重です。

結論から言うと、フィードバックを全くもらえない人は、人間としての成長の機会が非常に限られる、ある意味気の毒な人かもしれません。



ポジティブなフィードバック

「その服はとてもあなたに似合っているわ」、「この前の報告書はとてもよくまとまっていたので、顧客にも喜ばれたよ」、「この料理美味しい!(または、とても美味しそうに食べる)」などのポジティブなフィードバックは、明らかにお世辞でない限り、受け取って嬉しいものです。

ただ、日本の文化や風習では、ポジティブをそのまま受け取るのは驕りにつながるかの如く、あまり「そうでしょう!!!」と自慢げに反応すると顰蹙(ひんしゅく)を買うこともあります。

ところが、褒められたことを自らけなすかのように返すと、アメリカ人は文字通りに受け取って困惑しますし、日本人でも褒めた側は、いちいち反論されるのも面倒です。

例えば、「その服はとてもあなたに似合っているわ」と言われたら、「いやぁ、安かったのよ」とか「いつも汚い格好してるから」ではなく、「ありがとう」とか「嬉しい」とか言ってみましょう。

ポジティブな発言を心がけていると、気持ちが全体的にポジティブになる可能性が高まります。

上記の報告書に関するフィードバックに対しては、「ありがとうございます。今後もわかりやすい報告書作成を心がけます」とか、「ありがとうございます。特に良かった点がありますか?今後の参考にします」などがポジティブな返答です。

お料理に関しては、「良かった!!喜んでくれて嬉しい!」などです。


デベロップメンタルなフィードバック

デベロップメンタルなフィードバックとは、成長につながるフィードバックという意味で、たとえ批判っぽく聞こえることや、自分の言動や存在を否定されているように聞こえるフィードバックであっても、ネガティブと呼ばず、そこから何を得られるかを考えましょう。

主にフィードバックを出す側の主観体験から来ているもので、バイアスがあったり、事実とは違っていたり、その他の人達が受ける印象とは全然違うものである可能性もあります。

例えば、実際に遅刻が続いて「これ以上遅刻が続くと単位を上げられません」とか「いつも1時間以上待たされるから、もうデートの約束はできない」とか「顧客が憤慨している」とかの事実に基づいて、フィードバックの内容の妥当性が客観的に認められるものであれば、そのまま受け入れて対処法などを吟味するべきです。

が、客観的事実や自分の意図とは全く異なることを相手が主観的な解釈によってフィードバックしているため、相手の言っていることには全く同意や理解ができない場合はどうでしょう。

もし大事な人であれば、その人がなぜそのように感じているのか、またはなぜそのように反応しているのかを鑑みることで、得られるものは必ずあります。

ですから、どんなフィードバックであってもフィードバックは贈り物なのです。



痛いフィードバック

中には、本来はデベロップメンタル・フィードバックであるべきなのに、あからさまな批判や攻撃的な言葉がやってくることもあります。そのような時に、傷ついたりするのは当然のことです。

実は、心が痛む、傷つくと感じる時、私たちの脳の中では、体の痛みを感じる神経系が活性化されているということがわかっており、実際に「痛い」のです。

痛いフィードバックを全てそのまま受け入れる必要はありませんが、最初の「痛い」という反応から無意識に防御的になって言い訳に専念したり、腹が立って相手に攻撃的な態度や言葉を返すのは、ちっとも自分のためになりません。

そのようなやりとりが、結局売り言葉に買い言葉になり、お互いに嫌な思いをしたり、恨みが募っていくことになるかもしれません。

痛いフィードバックを受けたら、自分の気持ちが傷ついているということを認識した上で、そのフィードバックに関してもう少し客観的にプロセスできるまでの時間を自分に与えることができれば、とても良い最初のステップです。

そして、心が落ち着いたら、まずなるべく客観的にそのフィードバックの妥当性を少し吟味してみましょう。

もし現実性や妥当性があれば、そこから自分は何ができるのか、どうすれば問題解決や建設的な方向に進められるのかを考えるのを勧めます。

もし、相手が偏見や感情から言っていることで妥当性がなければ、その人と自分の関係を振り返ってみたり、その人がどんな背景や心情からそのように受け取ってフィードバックしたのかを考えてみてください。

そこから、自分のためになる何かのヒントが得られるでしょう。

 
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「心の健康ノート」シリーズでは、主な心の病気やストレスの表れ方、心理療法、精神科薬、人との接し方、家族関係、職場でのメンタルヘルス等について、心と体の健康のために、ぜひ皆さんに正しく理解して頂きたいことを紹介していきたいと思います。
 
 
(2022年9月16日号掲載)