ポシビリティースクール (3) 逆境に耐える力と適応性など(2020.5.16)

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    美甘 章子

臨床心理医。医療や教育現場て幅広く臨床経験を積み、みなと学園コンサルタントも務めた。

エグゼクティブ・コーチング、スポーツ心理、精神科薬相談、心理療法、精神鑑定、教育心理アセスメント、発達障害相談など日・欧・北中南米などグローバルに従事。

「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」著者。

平和教育団体San Diego-WISH代表。


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ポシビリティースクール (3)

逆境に耐える力と適応性など

       
       

これまで、新しい時代に必要とされる教育カリキュラムの提言として私たちが取り組んでいるポシビリティースクールの柱のうち、「成長マインドセット」と「EQ(情緒指数)を高める- 自己像と感情統制」について紹介してきました。

この原稿を書いている時点では、カリフォルニア州全域に原則的外出禁止令が出ており、数ヶ月前とは生活環境が全く変わってきています。

第二次世界大戦以来の世界的危機とも言われるコロナウィルス蔓延の脅威による様々な行動的制約や、それに伴う経済への多大な影響など、私たちの生活はほとんどの人が全く予想もしなかった状況になっています。

ポシビリティスクールで主眼を置く「EQ(情緒指数)を高める」という柱には、自己像と感情統制の他に、認知スタイルと情緒、逆境に耐える力と適応性、心身の統合、人間関係とリーダーシップがあります。

現状のような、全く予想できなかった状態において、これらの分野がなぜ大切なのか、「認知スタイルと情緒」「逆境に耐える力と適応性」と「心身の統合」に焦点を当てて述べていきます。

 

 

認知スタイルと情緒

認知スタイルとは、物事をどのように認知してどのように意味づけをするかのスタイルです。

同じ現象を見聞きしても、個人の受け止め方によってその現象の意味するところが違うため、異なった感情や内的経験につながるのです。

例えば、志望校に合格したという事象を「自分が頑張ったから」と感じるか、「今年は出願者が少なかったから」とか、単に「ラッキーだった」と感じるかで、情緒や今後の行動様式に与える影響が変わってきます。

また、犬を見て「かわいい」と感じる人もいれば、「怖い」と感じる人もいるでしょう。

多くの場合は、過去の経験やその積み重ねの影響により、物事や他者の言動に対しての意味づけが構築されていますが、生まれ持った気質の場合もあります。

 

 

逆境に耐える力と適応性

大規模の自然災害に罹災した場合はもちろんですが、今まで比較的平穏に暮らしてこれた人も、今回のような世界レベルの緊急事態、失業や仕事への多大な影響、先が見えない、などの状況は大きな試練です。

このような場合、経済的不安や自由に行動できないフラストレーションから、この状況を政府、他国人や他国の政権、若者、職場、家族などのせいにしたくなるかもしれません。

が、ひとのせいにして憤っても、何の解決にもつながりません。

誰かのせいにすることによって、私たちは被害者のスタンスを取ることしかできず、本当に必要なクリエイティブなニュー・ポシビリティーを考えつくことができにくくなります。

例えば、学校閉鎖は、多くの家庭にとって非常にチャレンジです。

「子供や家族の安全のために、学校が閉鎖になってありがたい」と思う人もいれば、「何で閉鎖にするんだ!子供達が家にいたら落ち着いて在宅勤務ができないじゃないか!」と憤る人もいます。

前者の人は、子供達が静かにできないので気が散って仕事がしにくくても、何らかの改善法を考えようとクリエイティブに取り組もうとして、ニューポシビリティーを見出しやすいですが、後者の人は腹が立つばかりで、たとえ子供が静かにしている時間があっても仕事への集中度は高まらない可能性が高いのです。

普段大人も子供も忙しくしている家庭で、学校閉鎖により家族と一緒にいる時間が増え、今まで見えなかった気づきがあったり、一緒にできる新しいプロジェクトを思いついて、家族の絆を深められる素晴らしいチャンスです。

 

 

心身の統合

人間が健康でいるためには、身体だけでなく精神の安定が必要です。

不安や抑うつや憤りの状態が長く続いていると、免疫系、循環器系、消化器系などの不調を起こしやすい状態になります。

ですから、運動やリラクゼーション法によって体の方に働きかけて心を落ち着けることも重要です。

病は気からと言いますが、気は病からということもあります。

体調が良くない時には、気分が落ちやすい、普段より不安を感じやすいなどもあるなので、まずは体調を整えること(睡眠時間と良質な睡眠環境の確保、バランスのとれた栄養、一日のリズムの調整など)をやってみると、気持ちが楽になるかもしれません。

ジムもヨガスタジオも閉まっているから運動できないと思っている人は、「なぜできないか」ではなく「どうしたら、何ができるか」に注目してクリエイティブな方法を見出す喜びに気を向けると、より健康的な道が開けるかもしれません。

 
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「心の健康ノート」シリーズでは、主な心の病気やストレスの表れ方、心理療法、精神科薬、人との接し方、家族関係、職場でのメンタルヘルス等について、心と体の健康のために、ぜひ皆さんに正しく理解して頂きたいことを紹介していきたいと思います。
 
 
(2020年5月16日号掲載)