コミュニケーション「意図」と「インパクト」(2018.9.16)

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    美甘 章子

臨床心理医。医療や教育現場て幅広く臨床経験を積み、みなと学園コンサルタントも務めた。

エグゼクティブ・コーチング、スポーツ心理、精神科薬相談、心理療法、精神鑑定、教育心理アセスメント、発達障害相談など日・欧・北中南米などグローバルに従事。

「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」著者。

平和教育団体San Diego-WISH代表。


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コミュニケーション「意図」と「インパクト」

       
       

友人や家族、職場の仲間などから組織やコミュニティー間に至るまで、コミュニケーションは大切な要素です。

私たちが意図したこととは違う解釈を相手にされて、親切のつもりが逆に迷惑だと取られたり、相手が気分を害してしまうことが、仲違いや葛藤のそもそもの原因になっていることも珍しくは有りません。

 

 

気持ちの表現方法

愛情や思いやりの表現の仕方は、文化の違いもありますし、個人的な違いもあります。

あるアメリカ人の夫が、働き者のアジア人の妻に対して、「君はどうしてもっと愛情表現をしてくれないのか?」と不満をこぼしました。

妻は、「愛情表現してるじゃない!朝早く起きてあなたのカッターシャツにアイロンをかけ、朝食や仕事に持って行くランチも作り、あなたの仕事に差し障りがないように子供の面倒をほとんど一人で見てるでしょ。」と憤慨しました。

夫は、「それはわかっているけど、君は『愛してる』とも滅多に言わないし、歩く時も手をつなごうとしない。僕は、花をプレゼントしたり、愛情こもったカードを買って来て君にあげたりするのに。」と自分の気持ちを説明します。

妻は呆れて、「その気持ちはありがたいけれど、花は枯れるし、カードなんて木の無駄遣いよ。本当に愛情を示したかったら、セカンドジョブでも見つけて子供達の将来の大学の費用でも稼いだらどう?」と言いました。

この例では、夫婦ともに愛情はあるのですが、その表現方法が違います。

夫は、言葉に出すことやロマンチックな行動が愛情表現だと思っているので、自分はそのような言動をしますし、妻からも同様な表現を求めています。

妻にとっては、現実的に生活をより過ごしやすくするために活動することが愛情表現であり、言葉やカードでいくら「愛してる」と言われてもあまり意味がないようです。

 

 

『意図』と『インパクト』

この例では、『意図』は二人とも「相手への愛情や思いやりを示すこと」ですが、相手からするとその解釈は、「愛情を示してくれない。」「努力が足りない。」となり、このコミュニケーションの『インパクト』は「自分はあまり愛されていないように感じる。」や「愛情表現しているのに、それでは足りないと言われてがっかりする。」です。

他の例をあげましょう。

妻の親戚が一家で初めて祖国から訪ねてくると言うので、仕事が忙しいけれど料理が得意な夫は、妻の親戚を歓迎するために手のこんだ料理をして家に招くことにしました。

みんなが感激するような素晴らしい料理をコースで出すように、夫は懸命に準備していました。

妻の親戚一家が家にやって来たときは、夫は最後の仕上げで忙しくしていたので、妻は久しぶりに会う親戚と歓談しながらも夫を手伝おうと使ったまな板やトレイを洗っていました。

アペリティフや前菜をタイミング良く出したい夫は「もっとさっさと洗って。水がもったいないよ。」とイラついてきつめの口調で妻に言いました。

ここでの夫の言葉の『インパクト』はどうでしょう。

手伝おうとしているのに、親戚の前で「怒鳴られた」と感じる妻は、傷つくかもしれません。

親戚の前で「夫が叱った」ことで顔を潰されたと怒る妻もいるでしょう。

実際には、この妻は夫の『意図』は「大事な妻の親戚は大事だから、丁重にもてなしたい」とグルメ料理の使命感に集中していることがわかっていたので、『インパクト』は「夫の努力に感謝をしているから手伝おうとしたのに、少し傷ついた」でしたが、不平は言いませんでした。

すると翌日、夫は「夕べは君の親戚が来てくれて嬉しかった。みんないい人だね。イラついた言い方をしてごめんね。料理が忙しくて君の親戚に君をどんなに大事に思っているかをあまり見せなかったね。もっと早めに準備しとけばよかった。」と謝り、妻は「ありがとう。仕事も忙しいのに、私の親戚のために骨を折ってくれて、私のことを大事に想うからこそだとわかっているわ。」と応えました。

 

 

より良い関係を築くためのコミュニケーション

この二番目の例で明らかなように、自分が感じた『インパクト』にのみ即反応するのではなく、相手の『意図』を知れば、『インパクト』も変わってくるかも知れません。

また、自分の『意図』が相手にもわかるような言動で示されているかを考えて見てください。

ロボットのように、『意図』を正確に伝える言動や態度を毎回することは不可能ですが、お互いに表面に見えることだけではなく『意図』と『インパクト』も考えるようにすると、より実りのあるコミュニケーションが築けるでしょう。

 

 
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「心の健康ノート」シリーズでは、主な心の病気やストレスの表れ方、心理療法、精神科薬、人との接し方、家族関係、職場でのメンタルヘルス等について、心と体の健康のために、ぜひ皆さんに正しく理解して頂きたいことを紹介していきたいと思います。
 
 
(2018年9月16日号掲載)