2021年 12月 07日
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American Health アメリカ健康ノート

新型コロナワクチン最新情報 (COVID-19 Vaccines-Update)(2021.4.1)

 

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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新型コロナワクチン最新情報

(COVID-19 Vaccines-Update)

       
       

2020年7月の第219回アメリカ健康ノートで、新型コロナワクチンの開発状況について解説をしましたが、今回は実際に接種が始まっているワクチンの解説です。

アメリカでは、新型コロナワクチン接種は昨年12月から始まり、3月17日現在、すでに国民の約12%がワクチン接種を終了しています。

1億1千
万回分以上のワクチンが接種されたことになります。

65
歳以上の人に限ると少なくとも1回ワクチン接種している人は65.4%、ワクチン接種を終了している人は37.6%います。

アメリカではすでに2900万人以上の累積感染者数がありますが、1日当たりの新規感染者数は1月のピーク時よりは下がっています。

このままワクチン接種者が増えていくと、新規感染者
数はもっと下がるのではないかと予想されます。

ただ一方、テキサス州など、マスク着
用の義務などを中止し、あらゆるビジネスを再開している地域などもあり、ロックダウンやマスクの着用義務を早期に解除すると新規感染者数が再び増加する可能性もあります。

 


新型コロナワクチン
の働く背景
−免疫の基礎知識−

新型コロナワクチンの働く仕組みは、体の免疫についての知識が少しあると理解しやすくなります。

ヒトの体には、ウイルスなどの外敵が侵入してくると、それを「抗原」 と認識して無害化して排除しようとする免疫防御機構があります。

この免疫には液性免疫と細胞性免疫の2種類があり、いずれも血液
中の白血球が関与しています。

白血球にはいくつかの種類 (好中球、単球、リンパ球など) がありますが、ウイルス感染の場合は、単球とリンパ球が主に働きます。

抗原が体内に侵入してくると、単球
は樹細胞とマクロファージに分化し、食作用で分解したり、細胞表面に移動させ「抗原提示」という機能をします。

それを、リンパ球のT細胞が認識し、同じリンパ球であるB細胞を増殖させ、そのB
細胞に抗体を作らせ、ウイルスと闘います。

T細胞の一種キラーT細胞は、直接ウイルスを攻撃排除します。

抗体
が関与するが液性免疫、T細胞やマクロファージが直接攻撃するのが細胞性免疫というわけです。

両方の免疫とも、感染後は記憶細胞が形成され、将来
の感染に備えます。

ワクチンは、この抗原をあらかじめ体に与え、液性免疫と細胞性免疫の両方を準備させるわけですが、従来のワクチンが、病気の原因となるウイルスや細菌を弱毒化させたり、死滅させて体に与えるのに対し、新型コロナワクチンは抗原の遺伝情報 (抗原の設計図) だけをヒトに与え、ヒトの細胞にその抗原を作らせ、そして免疫反応を誘導し、液性免疫と細胞性免疫を活性化させるという画期的な方法を取っています。

 

 

新型コロナワクチンの働く仕組み

新型コロナワクチンの多くは、コロナウイルスの表面にある突起状のスパイクタンパク質を抗原として使用しています。

このスパイクタンパク質は、ヒトの細胞表面の
ACE2受容体と結合してヒトの細胞内にウイルスの遺伝子を注入し、ウイルスを増殖させます。

すなわち感染を引き起こすので、このスパイクタンパク質を攻撃すれば、ヒトの細胞と結合できなくなって感染しなくて済むようになります。

新型コロナワクチンの多くは、このスパイクタンパク質を直接ワクチンに含めてヒトの体内に注入するわけではなく (タンパク質ワクチンを除く)、スパイクタンパク質の遺伝情報 (設計図) の一部だけをヒトの体に注入します。

注入された遺伝情報はヒ
トの細胞にコロナウイルスのスパイクタンパク質の一部を作らせ、それに対する免疫応答を誘導させます。

注入された遺伝情報がヒトの遺伝子に影響することはありません。

あくまで、新型コロナウイルスの一部のタンパク質を作るだけなのです。

 


新型コロナワクチンの種類

 

<メッセンジャー RNA(mRNA)ワクチン>

新型コロナウイルスの遺伝情報の一部 (mRNA) を脂質の膜で包んだもので、ヒトの細胞にウイルスのスパイクタンパク質を作らせます。

ヒトの細胞がそのタンパク質を作ると、その遺伝情報 (mRNA) は破壊されます。

ヒトの体はそのタンパク質を認識し、それに対す
る液性免疫と細胞性免疫が誘導され、将来の感染に備えるのです。

mRNAは不安定なので、超低温でワクチンを保存する必要があります。(ファイザー・ビオンテック・ワクチン= 以下、ファイザー・ワクチン、モデルナ・ワクチン)

 

<タンパク質ワクチン>

害のない、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むワクチンで、体に投与すると、ヒトの体はそのタンパク質を認識し、それに対する液性免疫と細胞性免疫が誘導され、将来の感染に備えます。

 

<ウイルスベクターワクチン>

新型コロナウイルスではない他の害のないウイルス (ベクターウイルス:運び手ウイルス) に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝情報を組み込んだワクチンです。

ヒトの体に入ると、その遺伝情報に基づいてヒトの細胞はスパイクタンパク質を作り、それに対する液性免疫と細胞性免疫が誘導され、将来の感染に備えます。(ジョンソン&ジョンソン・ワクチン)

 

 

現在認可されている新型コロナワクチン

 

<ファイザー・ワクチン>

mRNAワクチンで、アメリカでは最初に認可された新型コロナワクチンです。

昨年12月から医療関係者を中心に接種が始まりました。

輸送や保存に摂氏マイナス70度以下を要するために、接種場所が限られていますが、ワクチンの有効率が95%あり幅広く接種されています。

2回の接種が必要で、間隔は3週間です。16歳以上が対象になります。

 当初、接種後の重症アレルギー反応であるアナフィラキシーが問題になりましたが、100万人に5人程度で、他の予防接種と比べても特別多いわけでもありません。

一般的な副作用としては、注射部位の疼痛 (とうつう) 、筋肉痛、関節痛、発熱、嘔吐、嘔気などです。1回目よりも2回目接種後の方が副作用は強いようです。

 

<モデルナ・ワクチン>

これもmRNAワクチンで、ファイザー・ワクチンに続いて昨年12月から接種が始まっています。

保存は摂氏マイナス20度程度でよいので、より広範な場所で接種できる可能性があります。

ワクチンの有効率は94%でファイザー・ワクチンとほとんど同じです。

2回接種が必要で、間隔は4週間です。18歳以上が対象になりますが、現在、生後6か月以上の小児と妊婦の臨床治験が進んでいます。

近い将来、小児も接種を受けることができるかもしれません。

接種後のナフィラキシーの頻度は100万人に3.5人程度で、他の副作用はファイザー・ワクチンと同様です。

 

<ジョンソン&ジョンソン・ワクチン>

ウイルスベクター・ワクチンで、ファイザー・ワクチン、モデルナ・ワクチンに続いて、今年2月に3つ目の新型コロナワクチンとして認可されました。

18歳以上が対象です。ワクチンの有効率は前者の2つよりも少し低く、軽症および中等症の新型コロナ感染症に対する有効率は72%くらいですが、重症の新型コロナウイルス感染症には前者2つと同じく、ほぼ100%予防効果があります。

他に、いくつかの長所があります。接種は1回のみ、保存は摂氏2〜8度で3か月保存可能、それに、南アフリカ変異株やブラジル変異株などにもある程度効果が期待できる、などです。

mRNAワクチンと違って、スパイクタンパク質の情報を無毒化したアデノウイルスのDNAに組み込んでいるので、安定性が良いのも特徴です。

副作用も前者2つと同様に、注部位のみ、腫れ、発赤、疲労感、筋肉痛、嘔気、発熱などです。

 



ワクチンを受ける前に

ワクチンを受ける前に、次の事項がある人は予防接種供給者に伝えてください。

アレルギー反応の既往 (特に予防接種に対して)、発熱、出血性の疾患、抗凝固剤の使用、免疫不全、免疫系に影響を与える薬の服用、妊娠中か妊娠を予定、母乳で授乳中、などです。

1回目の接種時に重度のアレルギー反応のあった方は2回目のワクチンは接種できません。

 

 

現在、新型コロナワクチン接種の対象になる人

カリフォルニア州では3月17日時点で、フェーズ1A、1B、1Cの人までがワクチン接種の対象者になっています。

フェーズ
1Aは医療や介護関係者、介護施設入居者、フェーズ1B65歳以上の高齢者、教育やチャイルドケア関係者、食品・農業に関する従業者などです。

フェーズ
1Cは基礎疾患のある16〜64歳の人、上下水道や金融機関などの従事者などです。

ここでいう基礎疾患とは、悪性腫瘍、慢性腎臓疾患、COPD、ダウン症候群、心不全、冠動脈疾患、心筋症、臓器移植による免疫不全状態、肥満、妊娠、鎌状 (かまじょう) 赤血球症、喫煙、2型糖尿病、中症以上の喘息、脳血管系疾患、嚢胞 (のうほう) 性線維症、高血圧、免疫不全、認知障害などの神経的異常、肝臓疾患、肺線維症、サラセミア、1型糖尿病、などです。

サンディエゴ郡のサイトやCVSなどのサイトからワクチン接種の予約が可能です。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2021年4月1日号掲載)