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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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アメリカのプライマリケア医と超専門医

(Primary Care Physicians and Subspecialists in the United States)

       
       

アメリカでプライマリケア医 (Primary Care Physician= PCP) と呼ばれている医師は、実際には内科、小児科、家庭医学科の各専門医です。

日本で、プライマリケア医というと、全科領域の患者さんを浅く広く診る意味で使われているようですが、アメリカでは家庭医以外は、全科領域の患者さんを診ることはまずありません。

まず、最初に患者さんを診るのでプライマリケア医と呼ばれているだけで、内科領域でない疾患であれば、すぐに他科の専門医に紹介する内科医は多いです。

 

アメリカでの医師への道

アメリカで医師になるためには、まず医学部に入学する必要がありますが、日本のように高校を卒業してすぐ入学はできません。

アメリカの医学部 (Medical School) は大学院なので、まず4年制の大学 (Undergraduate) を卒業しないといけないのです。

そして大学で自然科学系を中心に勉強をし、MCATという医学部入学のための共通試験を受け、初めて医学部にチャレンジできるのです。

アメリカの Medical School には、MD (Doctor of Medicine) を修得する医学校と、DO (Doctor of Osteopathic Medicine) を目指す「整骨医療」の医学校があります。MDの医学校は141校、DOの医学校は34校アメリカに存在します。

日本には存在しないDOの医学校は、19世紀に Andrew Taylor Still によって始められた Osteopathic Medicine に基づいた医学校で、病気は筋骨格系の異常に基づくものであり、それを整えることによって病気を治そうとする考えに従って教育されています。

ただし、現在ではMDの医学校とほとんど同じ教育を受け、卒業後もMD校卒業生と同じように卒後研修をして、いろいろな科の専門医になるのが普通です。DOの学位を持って医師として働いている人の数は医師全体の1割強です。

外国の医学部を卒業した医師も、アメリカの医学部卒業生と相当と見なされる場合はMDを使っています。

外国の医学部を卒業した医師の数は医師全体の約2割です。

 

卒後研修(レジデンシー=Residency)

医学部・医学校を卒業すると MDないしDOの学位を授かります。それだけでは医師として働くことはできないので、アメリカ人卒業生はレジデンシーと呼ばれる卒後研修を3〜5年間受け、専門医として働くことになります。

内科医や小児科医を目指す人は3年間の研修 (Residency) を受けます。

外科医になりたい人は5年間の研修を受ける必要があります。皮膚科、眼科医、形成外科医、脳外科医などのプログラムは募集人数も少なく応募者も多いので激戦です。

最近は、2つの専門を同時に研修する合併研修 (Combined Program) が増え、人気を得ています。

例えば、私が受けた内科・小児科合併研修では、それぞれの研修を別々に受けると6年かかるのが4年で終了できるようになっています。

 

レジデンシープログラム

現在、アメリカで行われているレジデンシープログラムには、下記のようなものがあります。

麻酔科 (Anesthesiology)、皮膚科 (Dermatology)、内科 (Internal Medicine)、脳外科 (Neurological Surgery)、産業医学 (Occupational Medicine)、眼科 (Ophthalmology)、整形外科 (Orthopedic Surgery)、病理 (Pathology)、理学医療・リハビリ (Physical Medicine and Rehabilitation)、形成外科 (Plastic Surgery)、精神科 (Psychiatry)、外科 (Surgery)、泌尿器科 (Urology)、アレルギーと免疫 (Allergy and Immunology)、救急医学 (Emergency Medicine)、予防医学 (Preventive Medicine)、神経内科 (Neurology)、産婦人科 (Obstetrics and Gynecology)、耳鼻科 (Otolaryngology)、小児科 (Pediatrics)、放射線医学 (Radiology) などです。

こうしたレジデンシープログラムには、外国の医学部を卒業した医師も参加できますが、それに先立って、アメリカの医師として働くための筆記試験と実技試験、それに英語の試験に合格している必要があります。

また、資格を取った後も、外国の医学部卒業生には、こうしたプログラムへの門戸は限りなく狭くなっています。

こうしたレジデンシープログラムへの研修先を見つけるのに、コンピューターによるマッチング (医学部卒業生とレジデンシープログラムの両者の要望をマッチングさせる) 制度が使われています。

 

 

医師としての第一歩(レジデンシー終了後)

レジデンシーが終わると、内科や小児科であれば、プライマリケア医として一般の患者さんを診る道を進むか、より専門的な領域 (循環器、胃腸科、呼吸器など) を扱う超専門医 (subspecialists) になるかの選択をすることになります。

超専門医を目指す医師は、さらに2〜3年間の研修 (Fellowship フェローシップ) を受けることになります。

 

専門医資格

レジデンシーを終えて、医師として働き出す時、必要になるのが専門医の資格です。

個人で開業する医師は除いて、Scripps Clinic や Sharp などの医療機関で働く場合、専門医資格を持っていることが最低条件です。

この専門医の資格は、レジデンシーを終えた後、専門医試験に合格して初めて取得することができます。

その専門医の試験を受ける資格のある場合を Board eligible、そして、専門医試験に合格した場合を Board certified と言います。

すなわち、内科専門医試験に合格している内科医のことを Board certified internist と呼び、内科専門医試験に合格していることを Board certified in internal medicine と言います。

これは内科医を選ぶ時の大切な基準になります。専門医試験に合格した内科医であるかどうかは、その内科医の知識のレベルを知る上で重要です。

また、Board eligible (in internal medicine) でも Board certified (in internal medicine) でもない場合は、内科の研修そのものを受けていないか、終了していないということになり、アメリカでは内科医を名乗ることはできません。

また、内科専門医は10年毎に専門医試験を受け、合格し続けないといけないので、絶えず新しい知識を身に付けています。

因みに、小児科専門医は7年毎に専門医試験を受けます。

 

家庭医 (Family Practitioner) と 一般医 (General Practitioner)

アメリカでは、内科や外科をはじめ全科の疾患のプライマリケア領域を診る医師は家庭医 (Family Practitioner) と呼ばれています。

医学部卒業後、3年間のレジデンシー研修を受け、家庭医専門試験に合格し、初めて家庭医として働くことができます。

産婦人科研修も行いますが、都市部で産科を行っている家庭医はごく少数です。

一般医 (General Practitioner) は内科、小児科、家庭医などの研修を受けていないか終了をしていない医師で、割合としてはごく少数です。

主に外国人、移民相手の外国人医師が大半で、家庭医とは大きく異なっています。

普通のアメリカ人が専門医資格のない医師を受診することはまずありません。

 

 

超専門医

内科、小児科、外科などの研修をした後で、さらに研修をして、超専門の領域を研修する医師もいます。

こうした超専門医は一般的には内科、外科、小児科、家庭医などの紹介で受診するのが普通です。超専門医受診が可能な保険を持っていても、プライマリケア医の紹介がないと受診できないことがあります。

内科系では、アレルギー・免疫 (Allergy/Immunology)、循環器 (Cardiology)、内分泌 (Endocrinology)、胃腸科 (Gastroenterology)、血液腫瘍 (Hematology/Oncology)、感染 (Infectious disease)、腎臓内科 (Nephrology)、呼吸器 (Pulmonary)、リューマチ (Rheumatology)、高齢者医療 (Geriatric medicine) などがあります。

外科系では、胸部心臓外科 (Cardiothoracic surgery)、大腸直腸外科 (Colorectal surgery)、小児外科 (Pediatric surgery)、血管外科 (Vascular surgery)、移植外科 (Transplant surgery)、外傷外科 (Trauma surgery)、乳房外科 (Breast surgery)、腫瘍外科 (Surgical Oncology) などがあります。こうした超専門医も、各専門医試験があり、その試験に合格していないと一人前とは見なされません。

また、上記以外の専門科の中でも、さらに専門が分化し、例えば整形外科の中で、肩、肘、手、背骨などの専門が存在しますが、そうした専門は、必ずしも別の専門医資格があるわけではありません。

 

 

プライマリケア医と超専門医の選択

プライマリケア医には、すべて前述したような専門医試験があるので、それに合格して Board certified であるかどうかが重要な医師選択の基準になります。超専門医も専門医試験があるので同様です。

アメリカの超専門医への紹介は、各専門領域の守備範囲が日本と大きく異なることがあるので、まずプライマリケア医を受診をして紹介してもらうのが無難です。各医師の情報は、最近ではその医療機関のウェブサイトに詳しく紹介されています。

 

*今回の記事は、アメリカ健康ノート第115回で取り上げた「アメリカの医師 (Physicians in the United States)」を基にしています。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2018年12月1日号掲載)