新型コロナ感染症の治療法=上=(Treatments for COVID-19)(2021.5.1)
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金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 日本クリニック医師。 神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。 その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。 ご質問、ご連絡はこちらまで
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新型コロナ感染症の治療法=上=
(Treatments for COVID-19)
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アメリカでは、昨年12月から医療関係者を中心に新型コロナ感染症のワクチン接種が始まり、1日の新規感染者数が20〜25万人だったのが、7万人台 (2021年4月18日現在) にまで下がってきましたが、ワクチンを終了している人は、25.4%で (65歳に限ると66%)、感染の広がりが劇的に下がるであろう集団免疫を達成するのはまだ先です。
ワクチンと平行して、新型コロナ感染症の治療もいろいろな臨床試験が行われ、データが蓄積されてきていますが、ワクチンのように劇的に状況を改善するような治療法は現れてはいません。
その中で、NIH (米国立衛生研究所) を中心にした新型コロナ感染症治療指針委員会 (以下委員会) が出している治療指針は、臨床研究の結果を基に絶えずアップデートされています。
今回はこの治療指針に基づいて、現時点での新型コロナ感染症の治療について簡単に説明をします。
新型コロナ感染症の感染段階
新型コロナ感染症は、その臨床的な経過で2つの局面に分かれます。
初期は、新型コロナウイルスの増殖期でウイルスがヒトの細胞内に侵入しウイルスが増殖していきます。
後期は、ウイルスに対する過剰な免疫・炎症反応が起こり組織が破壊されていきます。
従って治療は、初期では抗ウイルス治療が大きな効果をもたらします。後期では免疫抑制・抗炎症治療が重きをもってきます。
感染のごく初期で、ヒトの体が新型コロナウイルスに対して効果的な免疫反応を生じる前では、抗体による治療が最も効果があるようです。
このために、抗新型コロナウイルス・モノクローナル抗体による治療があります。
後期は、ヒトの体がウイルスに過剰な反応をして、サイトカインが増えすぎて、サイトカイン放出症候群やサイトカイン・ストームを起こして体に害を与えるのではないかと考えられています。
なお、サイトカインは細胞が分泌する生理活性物質で、免疫反応にも重要な役割をしますが、増えすぎると逆に臓器に障害を与えます。
症状の重症度に応じた治療
委員会は、症状の重症度に応じた治療法を提唱しています。
これは入院していない軽症・中等症から、極めて重症な感染者まで、これまであるデータに基づいた治療の推奨または、反対を表明しています。
- 軽症から中等症の人で入院していない人:
特に一般的な治療法はありませんが、重症化リスクのある人にはモノクローナル抗体による治療があります。(後に説明あり)
- 入院しているが酸素が必要でない人:
ルーチンでレムデシビルを推薦はしていないが、重症化する可能性のある人はレムデシビルを使用。(レムデシビルは抗ウイルス薬)
- 入院して酸素療法を受けている人が特別のディバイスが不要:
レムデシビルやデキサメタゾンによる治療。(デキサメタドンはステロイド)
- 入院して特別ディバイスで酸素供給を受けている:
レムデシビルやデキサメタゾンによる治療。
- 入院して人工呼吸器や、ECMO (体外式膜型人工肺) を使っている:
デキサメタゾンを使用。
新型コロナ感染者の重症度の定義
新型コロナ感染者の重症度は次の定義により分類されます。
- 無症状または発症前 − 検査で陽性だが症状がない。
- 軽症 − 発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、頭痛、筋肉痛、嘔気、嘔吐、下痢、味覚異常、臭覚異常などの症状はあるが、息切れ、呼吸苦はなく、肺の画像では異常がない。
- 中等症 − 下気道の症状 (呼吸苦など) や肺の画像上の異常があるが、血中酸素濃度が94%またはそれ以上。
- 重症 − 血中酸素濃度が94%以下、呼吸回数が1分間に30回以上、肺の画像で浸潤像 (肺炎像) が50%以上など。
- 極めて重症 − ARDS (急性呼吸促迫症候群)、敗血性ショック、サイトカイン・ストームなどがある。同時に心血管系、腎臓、肝、血栓症などの疾患もある。
*次回は、個別に治療薬を紹介いたします。
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この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。 |
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(2021年5月1日号掲載) |