金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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新型コロナ感染症の治療法=下= (Treatments for COVID-19) |
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新型コロナ感染症に対する治療薬
<抗ウイルス薬> 抗ウイルス薬は、新型コロナウイルスのヒト細胞への結合、侵入、増殖などを抑えるのですが、現在アメリカで認可されているのはレムデシビル (Remdesivir) しかなく、それも入院患者さんだけに適応です。 レムデシビルは、入院している人で酸素を投与されている以上の人、あるいは、入院して酸素は投与されていないが重症化する可能性のある人に使われます。 レムデシビルは、ウイルスの増殖に必要なRNAポリメラーゼという酵素に結合して、ウイルスの複製、増殖を阻害します。 クロロキン、ヒドロキシクロロキンは推奨されていません。
<ロピナビア、リトナビア、他のHIVプロテアーゼ阻害薬> これまでの臨床試験では明らかな効果を示していないので、ロピナビア、リトナビアを始め、どのHIVプロテアーゼ阻害薬も推奨されていません。
<イベルメクチン> 十分のデータが無いので、使用に関しては推奨も反対もされていません。 イベルメクチンは、ヒトの細胞の抗ウイルス作用を高めるだけでなく、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質がヒトの細胞に結合するのを妨げるのではないかと考えられています。
<新型コロナウイルス抗体治療法> 新型コロナ感染症で回復した感染者の血液には新型コロナウイルスに対する抗体が存在しています。
<モノクローナル抗体による治療> バムラニビマブ (bamlanivimab) とエテセビマブ (etesevimab) の組み合わせ、または、カシリビマブ (casirivimab) とイムデビマブ (imdevimab) の組み合わせの治療が、軽症または中等症で、重症化の可能性のある人が対象になります。 重症化の可能性のある人とは、肥満、慢性腎疾患、糖尿病、免疫低下の人、65歳以上、55歳以上で、心血管系の病気、高血圧、COPDなどの慢性肺疾患のある人などです。 バムラニビマブの副作用としては、嘔気、下痢、めまい、頭痛、かゆみ、嘔吐などがあります。 モノクローナル抗体は、新型コロナウイルスのSタンパク質を攻撃し、ヒトの細胞の受容体であるACE2と結合しないようにします。
新型コロナ感染者の回復者の血漿由来の免疫グロブリンは、新型コロナ感染症のウイルスの増殖を抑えたり、炎症反応を抑える効果が期待されますが、十分な臨床試験のデータがないため委員会では推奨も反対もしていません。
<ヒト間葉幹細胞> ヒト間葉幹細胞が、急性期での肺に対する損傷と細胞性炎症反応を抑える効果が期待されています。
デキサメサゾンの使用は委員会で推奨されています。
デキサメタサゾンの使用は委員会で推奨されていますが、デキサメタゾンが無いときは、他のステロイドが使用可能です。 デキサメタゾン6mgに対し、プレドニゾン40mg、メチルプレドニゾロン 32mg、ハイドロコーチゾン160mg相当です。 副作用は、高血糖、易感染性、精神的影響などです。
<インターフェロン> 抗ウイルス作用を持つサイトカインの一種です。
アナキンラ (anakinra) のようなインターロイキン1阻害薬は、新型コロナ感染症でサイトカインが増加する、サイトカイン放出症候群のような状態で効果が出るのではないかと考えてられていますが、十分な臨床試験のデータが無いため、使用に対する推奨はされていません。
インターロイキン1阻害薬と同様、サイトカイン放出症候群を抑えることが期待されています。 サリルマブ (sarilumab)、トシリズマブ (tocilizumab)、シルツキシマブ (siltuximab) などがあります。
バリシチニブ (baricitinib) があります。
<抗血栓療法> 入院していない感染者への抗血栓療法は薦められていません。
ビタミンD、ビタミンC、亜鉛などのサプリメントに関しては、委員会は、十分なデータが無いので、推奨も反対もしていません。
新型コロナ感染症に対し、効果的な治療法がほとんどなく、軽症・中等症の感染者に対しては、インフルエンザのように経口抗ウイルス薬も存在しないので、一番の対策法はその予防でしょう。 |
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(2021年6月1日号掲載) |