乾癬(かんせん) =上= (Psoriasis)(2021.1.1)

 

kim top 
 
dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


ご質問、ご連絡はこちらまで

       
column line
 

乾癬(かんせん) =上=

(Psoriasis)

       
       

乾癬は、膝、肘、胴体、頭皮の皮膚が赤くなり、角化する皮膚の病気です。

慢性病で、病状の改善と悪化を繰り返し、完治することはありません。

ただ、完治させる治療は存在しないですが、症状を改善する治療法はあります。

15歳から25歳で発症する人が多いのですが、どの年齢でも、性別に関係なく発症します。

日本では人口の0.1%くらいの人が、アメリカでは2〜4%の人が乾癬になっているのではないかと推定されています。

白人に多い病気です。




乾癬の機序


乾癬は、免疫系の異常によって、皮膚細胞の再生が異常に早くなることによって生じます。

正常な皮膚は約1か月で成熟し剥がれていきますが、乾癬では、通常の10倍くらいの速度で皮膚細胞が成熟するのです。

そして、古くなった皮膚は剥がれるのではなく、皮膚の一番表層で角質となって積み重なるのです。

銀白色の鱗屑 (りんせつ) と呼ばれるかさぶたが形成されます。




乾癬の原因


乾癬では、何が原因で免疫系が異常になるのかは解明されていません。

遺伝的要因が基本にあって、環境要因によって誘発されていると考えられています。

乾癬になる3分の1の人に家族で乾癬の人がいます。

一卵性双生児の場合、約70%の確率で一方が乾癬になると他方もなります。

こうした報告から、乾癬には強い遺伝的要因があると考えられています。

また、最近の遺伝解析により、炎症に関与する免疫系の遺伝子が影響を受けていることが分かっています。

乾癬の発症になる誘因は、溶連菌感染症や皮膚感染などの感染、寒冷や乾燥などの気候、皮膚の外傷、虫刺されや日焼けなどの皮膚への侵襲、ストレス、喫煙や間接喫煙、飲酒、薬 (リチウム、高血圧薬、抗マラリア薬など)、ステロイド内服薬の突然の中止などがあります。




乾癬のタイプ


乾癬にはいくつかのタイプがあり、そのタイプによって症状や治療が変わってきます。

 

  • 尋常性乾癬 (プラーク乾癬) は最も一般的なタイプで、約90%の乾癬はこのタイプです。
    乾いた赤い皮膚の皮疹が銀色の鱗屑で覆われます。
    かゆみや痛みが伴う場合があります。
    肘、膝、腰、頭皮など物理的な刺激を受けやすい所にできやすいのです。

  • 滴状乾癬は小児や若い成人に多く、溶連菌などの細菌感染に続いて生じる傾向があります。
    小さな水滴状の形をしたかさぶた状の皮疹で、胴体、腕、脚にできます。

  • 逆乾癬はそけい部、わきの下、おしりの割れ目、乳房の下などの皮膚のしわやひだの部分にできる乾癬で、赤い班状の皮疹が摩擦や発汗で悪化します。
    真菌の感染がきっかけになることがあります。

  • 膿疱性乾癬は稀 (まれ) な乾癬で、足底や手のひらに膿みが溜まったような病変ができます。

  • 乾癬性紅皮症は一番稀な乾癬で、身体中が赤い皮疹で覆われ、かゆみや熱感が激しく起こります。
    重症の乾癬です。

  • 乾癬性関節炎は関節が腫れ、痛みを起こします。
    皮疹の無いときや、爪の症状だけの時もあります。
    症状は軽症から重症まであり、どの関節も影響します。
    乾癬のある約3割近くの人が関節炎になります。




乾癬の症状


人によってまた乾癬のタイプによって様々ですが、尋常性乾癬の一般的な症状は、斑状の発赤の皮疹が厚い銀白色の鱗屑に覆われます。

小さなかさぶた状の点状皮疹 (小児に多い)、乾燥しひび割れした皮膚、かゆみや、熱感や痛みがある、腫れて動かしにくい関節などの症状があります。


乾癬の皮疹は、腰、肘、膝、脚、足底、頭皮、顔、手のひらなどが主なできる場所です。

爪乾癬は、手足の爪にできます。爪にくぼみができたり、形や色が変わります。

爪が爪床 (そうしょう) から剥がれることもあります。


典型的には数週間から数か月悪化し、そして回復に向かうようなサイクルで悪化と改善を繰り返します。


合併症としては、乾癬性関節炎、眼の病気 (結膜炎、眼瞼炎、ブドウ膜炎など)、肥満、2型糖尿病、高血圧、心血管系疾患、他の自己免疫疾患、うつ病などの精神的疾患、リンパ腫などがあります。




乾癬の診断


問診、診察、皮膚の病理検査などで行います。

滴状乾癬では溶連菌の検査をしたり、膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症では血液検査をすることがあります。

ケブネル現象は皮疹のない皮膚を傷つけると皮疹が出現する現象です。

アウスピッツ現象は燐屑を剥がすと点状出血が生じる現象です。

いずれも乾癬だけに特徴的な現象ではないですが、診断の補助になります。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2021年1月1日号掲載)