2021年 12月 07日
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American Health アメリカ健康ノート

新型コロナウイルス感染症と様々な陰謀説 (COVID-19 and Various Conspiracy Theories)(2020.10.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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新型コロナウイルス感染症と様な陰謀説

COVID-19 and Various Conspiracy Theories

       
       

今年2月11日の時点では、アメリカ国内の新型コロナ感染者は15人しかおらず、トランプ大統領は、すぐに感染者はいなくなると楽観視していましたが、9月16日の時点では感染者累計数660万人、死亡者数ほぼ20万人で、断トツでアメリカは世界一の新型コロナ感染国になっています。

世界の感染者の54%は、アメリカ、ブラジル、インドの3か国で占められているのです。

こうしたパンデミック (世界的大流行) で新型コロナウイルス感染症が世界の隅々まで広がり、多くの犠牲者を出すのに伴い、根拠のない陰謀説がいくつも世界中で広がりました。

故意に間違った情報を広めている人もいれば、間違った情報を信じ切って、さらに広めている人もいます。

CDC (疾病予防センター) やWHO (世界保健機構) などの確かな情報源の情報ではなく、科学的根拠のない、伝聞たぐいのレベルのものや、特定の人物や機関の攻撃を目的としたものまであります。

Dr. ファウチやビル・ゲイツはその攻撃の対象になっています。

 

 

インターネットで陰謀説を広めるQAnonというカルト集団

QAnonはインターネット、ソーシャルメディア上で根拠のない陰謀説を広める宗教カルトのような集団で、ドナルド・トランプを救世主のように崇拝する極右集団でもあるのです。

後述する、新型コロナウイルスは中国が開発した生物兵器だという陰謀説や、新型コロナウイルスは民主党が関与して、トランプ大統領の再選を阻止しようとしているという陰謀説など様々に陰謀説をネット上で広めています。

 

 

陰謀説が大好きなトランプ大統領

トランプ大統領自身が新型コロナウイルス感染症に関してまったく根拠のない様々な陰謀説をツイートしたり、記者会見で発表しています。

パンデミック初期から、新型コロナウイルス感染症は民主党の陰謀、新型コロナウイルスは武漢の研究所から出た、CDCや FDA (食品医薬品局) はディープステート (闇の国家) に操られている、などといった陰謀説です。

 

 

新型コロナウイルス感染症は民主党が関わっているという陰謀説

新型コロナウイルス感染症の重大性を理解できなかったトランプ大統領は、パンデミック当初、パンデミックは民主党の陰謀だということを盛んに主張していました。

QAnonもネット上で、新型コロナウイルス感染症の発生と民主党が関わりがあるかのような陰謀説を唱えています。

 

 

ビル・ゲイツを攻撃する陰謀説

ビル・ゲイツはご存知の方も多いかも知れませんが、多額なお金をWHOに寄付し、自身、アフリカのHIVや第三世界を脅かす様々な感染症に対して積極的に宣伝活動や、ワクチンの助成を行ってきています。

早くからパンデミックの予想をし、世界に警告を発し続けています。

QAnonや極右の人から、新型コロナウイルスを広めたのではないか、今のパンデミックに関与しているのではないか、という陰謀説が出ています。

また、ビル・ゲイツは感染症に対するワクチンを世界に広めようとしているので、ワクチンを接種する時にマイクロチップを埋め込んで、人々の動きを監視して支配コントロールするのが目的ではないか、と訴えている人々もいます。

特に、ワクチン反対派の人たちです。

あまりにも滑稽 (こっけい) で、根拠のない話です。パンデミックは多くの科学者が予想をし、それに備えた準備をしてきています。

ただ、予測されていたパンデミックは主に鳥インフルエンザなどの新型インフルエンザだっただけの話です。

日本でも将来の新型インフルエンザのパンデミックに備えてアビガンを備蓄していました。

 

 

新型コロナウイルスは中国・武漢の研究所から出たという陰

中国の武漢に高度なウイルス研究所があり、そこでコウモリのコロナウイルスを研究していたというのは事実で、その研究に従事した著明な研究者もいます。

でも、そこで長い間採取してきたコウモリのコロナウイルスと、今回の新型コロナウイルスの遺伝子型は違うのです。

アメリカに存在する中国の宗教カルトが関与する報道機関は (長い間、中国共産党に弾圧されてきたので)、新型コロナウイルスのことを“中国共産党ウイルス”と呼び、陰謀説を唱えています。

最近では、香港出身でトランプ派の設立した機関と関係のあるDr. ヤン という人もその陰謀説を広めています。

トランプ大統領もこの陰謀説を一時広めていました。

 

 

新型コロナウイルスは中国が開発した生物兵器という陰謀説

中国の科学者によって作られた生物兵器という陰謀説で、アメリカの極右の人やQAnonによって広まっていますが、共和党の上院議員トム・コットンによってさらに増強され、ワシントン イグザミナ−という保守的な報道機関によって広まりました。

遺伝子検査で、新型コロナウイルスは人工的な遺伝子組み換えではなく、自然に発生したと証明されてからは、ワシントン イグザミナ−はその間違いを訂正しているようです。

 

 

米軍が中国に持って入ったという陰謀説

中国外務省のスポークスマンがツイッターで広めた陰謀説で、中国では随分広まったようですが、中国以外ではアメリカに対抗した根拠のない話として問題にもならなかったのはご存知の通りです。

 

 

遺伝子組み換え食品が原因になったという陰謀

遺伝子組み換え農作物が新型コロナウイルスパンデミックの原因ではないかという陰謀説がパンデミック初期に信じられていました。

遺伝子組み換えによってできた農作物が遺伝的な汚染をもたらし、環境的な不均衡によって新型コロナウイルスの増殖を助けるというような考えかたです。

新型コロナウイルスのワクチンは遺伝子組み換え技術によって生まれようとしています。そうしないと、ワクチンができるまで何年もかかってしまうからです。

皮肉なことに、遺伝子組み換え作物によるパンデミックが遺伝子組み換えによってできたワクチンによって終焉を迎えるような話になってしまいます。

 

 

新型コロナウイルス感染症は存在しないという陰謀説

新型コロナウイルス感染症は実際には存在しないという陰謀説は、パンデミック初期から存在します。

トランプ支持者やロックダウンに反対する人たちまで、新型コロナウイルスはインフルエンザとそんなに変わらない、という考えがパンデミック初期によく信じられていました。

トランプ大統領もそういう考え方をしていました。

社会的距離を保つことに反対することから、マスク着用の義務が広がってからは、マスク着用に対しても個人の自由を盾に反対しています。

実際には、そういう人たちによって新型コロナウイルス感染症はさらに広がり、より多くの人が亡くなり、結果的に多くの人の自由を侵害しています。

 

 

パンデミックはディープステートによって操られている

アメリカはディープステート (闇の国家) のエリートたちによって操られ、大統領を攻撃している、という陰謀説を唱えている人がいますが、トランプ大統領自身がこのディープステートの存在を信じています。

その人たちはパンデミックがディープステートによって操られ、Dr. ファウチ (米国立アレルギー・感染症研究所・所長で政府のパンデミック対策本部の主要メンバー) はその秘密メンバーであるという陰謀説です。

Dr. ファウチは脅迫すら受けています。

Dr. ファウチは何代もの大統領に仕えてきた感染症の第一人者で、そうした第一線の科学者を政治陰謀説の世界に巻き込むアメリカの異常さが表れています。

 

 

新型コロナウイルス感染症は手製薬会社の陰謀

大手製薬会社は利潤だけ追求して、人々を治す薬を開発するのではなく、逆に人々を病気にしていると主張し、製薬会社の薬やワクチンに反対する人がいます。

そういう宣伝をして、科学的効果のない怪しげな「特効薬」 や錠剤やビタミン剤などを販売している人も多いのです。

科学的な検証を加えた薬と、副作用も検証されていない怪しげな 「特効薬」 のどちらを信用すべきは一目瞭然です。

 

 

新型コロナウイルス感染症の死亡者数は故意に増やされているという陰謀

新型コロナウイルス感染症による死亡者数は故意に増やされている、という陰謀説です。

従って、ロックダウンや社会的距離を保つ必要もなく、マスクも着用しなくていいと主張しています。

ある極右の女性が最初にユーチューブで広めたのですが、彼女はワクチンや中絶にも反対している活動家で、死亡診断書が操作されているという、何の根拠もない話を広めました。

 

 

陰謀説に惑わされないためには

ソーシャルメディアには、様々な情報が事実チェックなしに広がっています。

政治的に右の人も左の人も、自分たちの主張の宣伝のために特定の事実を誇張したり、事実でないことをあたかも事実であるかのように主張しています。

そうした事実かどうか分からない事項や陰謀説を信じてしまわないためには、確実な情報源から情報を得るということです。

英語であれば、CDCWHOのウェブサイトから情報を得るとか、日本語では、国立感染症研究所などのウェブページを読むとかです。

CDCWHO自体を信用していない人もいますが、そのこと自体が陰謀説にはまっていることを示唆しています。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2020年10月1日号掲載)