金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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新型コロナワクチン最新情報 (COVID-19 Vaccines-Update) |
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2020年7月の第219回アメリカ健康ノートで、新型コロナワクチンの開発状況について解説をしましたが、今回は実際に接種が始まっているワクチンの解説です。 アメリカでは、新型コロナワクチン接種は昨年12月から始まり、3月17日現在、すでに国民の約12%がワクチン接種を終了しています。 アメリカではすでに2900万人以上の累積感染者数がありますが、1日当たりの新規感染者数は1月のピーク時よりは下がっています。
新型コロナワクチンの働く仕組みは、体の免疫についての知識が少しあると理解しやすくなります。 白血球にはいくつかの種類 (好中球、単球、リンパ球など) がありますが、ウイルス感染の場合は、単球とリンパ球が主に働きます。 ワクチンは、この抗原をあらかじめ体に与え、液性免疫と細胞性免疫の両方を準備させるわけですが、従来のワクチンが、病気の原因となるウイルスや細菌を弱毒化させたり、死滅させて体に与えるのに対し、新型コロナワクチンは抗原の遺伝情報 (抗原の設計図) だけをヒトに与え、ヒトの細胞にその抗原を作らせ、そして免疫反応を誘導し、液性免疫と細胞性免疫を活性化させるという画期的な方法を取っています。
新型コロナワクチンの働く仕組み 新型コロナワクチンの多くは、コロナウイルスの表面にある突起状のスパイクタンパク質を抗原として使用しています。 新型コロナワクチンの多くは、このスパイクタンパク質を直接ワクチンに含めてヒトの体内に注入するわけではなく (タンパク質ワクチンを除く)、スパイクタンパク質の遺伝情報 (設計図) の一部だけをヒトの体に注入します。
<メッセンジャー RNA(mRNA)ワクチン> 新型コロナウイルスの遺伝情報の一部 (mRNA) を脂質の膜で包んだもので、ヒトの細胞にウイルスのスパイクタンパク質を作らせます。
<タンパク質ワクチン> 害のない、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を含むワクチンで、体に投与すると、ヒトの体はそのタンパク質を認識し、それに対する液性免疫と細胞性免疫が誘導され、将来の感染に備えます。
<ウイルスベクターワクチン> 新型コロナウイルスではない他の害のないウイルス (ベクターウイルス:運び手ウイルス) に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝情報を組み込んだワクチンです。
現在認可されている新型コロナワクチン
<ファイザー・ワクチン> mRNAワクチンで、アメリカでは最初に認可された新型コロナワクチンです。 当初、接種後の重症アレルギー反応であるアナフィラキシーが問題になりましたが、100万人に5人程度で、他の予防接種と比べても特別多いわけでもありません。
<モデルナ・ワクチン> これもmRNAワクチンで、ファイザー・ワクチンに続いて昨年12月から接種が始まっています。 接種後のアナフィラキシーの頻度は100万人に3.5人程度で、他の副作用はファイザー・ワクチンと同様です。
<ジョンソン&ジョンソン・ワクチン> ウイルスベクター・ワクチンで、ファイザー・ワクチン、モデルナ・ワクチンに続いて、今年2月に3つ目の新型コロナワクチンとして認可されました。 他に、いくつかの長所があります。接種は1回のみ、保存は摂氏2〜8度で3か月保存可能、それに、南アフリカ変異株やブラジル変異株などにもある程度効果が期待できる、などです。 副作用も前者2つと同様に、注射部位の痛み、腫れ、発赤、疲労感、筋肉痛、嘔気、発熱などです。
ワクチンを受ける前に、次の事項がある人は予防接種供給者に伝えてください。
現在、新型コロナワクチン接種の対象になる人 カリフォルニア州では3月17日時点で、フェーズ1A、1B、1Cの人までがワクチン接種の対象者になっています。 ここでいう基礎疾患とは、悪性腫瘍、慢性腎臓疾患、COPD、ダウン症候群、心不全、冠動脈疾患、心筋症、臓器移植による免疫不全状態、肥満、妊娠、鎌状 (かまじょう) 赤血球症、喫煙、2型糖尿病、中症以上の喘息、脳血管系疾患、嚢胞 (のうほう) 性線維症、高血圧、免疫不全、認知障害などの神経的異常、肝臓疾患、肺線維症、サラセミア、1型糖尿病、などです。 サンディエゴ郡のサイトやCVSなどのサイトからワクチン接種の予約が可能です。 |
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この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。 | |||
(2021年4月1日号掲載) |