新型コロナの最新の治療 (COVID-19 Treatments and Medications)(2022.8.1)

 

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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新型コロナの最新の治療

(COVID-19 Treatments and Medications)

       
       

新型コロナは、今年の始めに猛威を振るったBA.1のオミクロン株に変わって、2022年6月下旬からは、アメリカでは、そのほとんどがBA.5のオミクロン株に変わってきています。

7月中旬の段階で、アメリカでの新型コロナ感染症は78%がBA.5オミクロン株が原因です。

パンデミックが始まって以来、アメリカでの感染者は約9,000万人ですが、報告されていないケースを入れると、少なくともアメリカに住む3分の1から半分近くの人は感染しているはずです。

なかには、二度三度と感染している人もいます。死亡者は100万人を超えています。

 

新たな治療薬

新型コロナのワクチンが重症化や入院を予防してくれることはよく証明されています。

それは、オミクロン株BA.5に対しても同じです。

ただ、
2回のワクチンと追加ワクチンを受けても、免疫回避能力のあるBA.5に感染する人は多いようです。

健康な若い人は、新型コロナの治療薬なしでも、数日間の軽い症状を経て、何の問題もなく治っていく人がほとんどですが、高齢者など重症化リスクの高い人は、ワクチン接種をしていても治療薬の対象になります。

症状が軽度から中程度で入院は必要ないが、入院や重症化のリスクのある人は、最近FDA (米国食品医薬品局) の緊急許可を得たCOVID-19治療薬を使用してください。

 

新型コロナ治療薬の対象になる人

高齢者 (特に65歳以上の人ですが、50歳以上が対象になります)、特定の病気や免疫が低下している状態がある、例えば、悪性腫瘍 (がん)、慢性腎疾患、慢性肝臓疾患、慢性肺疾患 (中程度以上の喘息、COPD、気管支拡張症、間質性肺炎、肺高血圧、肺塞栓症など)、認知症やアルツハイマー病、糖尿病、いろいろな身体的障害、虚血性心疾患、他の心臓病、HIV、免疫低下している状態、ステロイドや免疫抑制剤を取っている、などです。

 

新型コロナの予防薬

<Evusheld (tixagevimab +cilgavimab)>

Evusheldという薬で、これは2種類の薬 tixagevimab と cilgavimab から成り立っています。

免疫が下がっていて、ワクチンを接種してもその効果が不十分な人や、ワクチンに対するアレルギーがあってワクチンを接種できない人で、新型コロナ感染の重症化リスクの高い人が対象になります。

12歳以上で、新型コロナに感染してない、最近新型コロナ感染者との接触もないことが条件です。

tixagevimab と cilgavimab の2本の注射を別々に筋肉注射します。必要があれば半年毎に注射を繰り返します。

副作用としては、のどの違和感、めまい、息切れ、発熱、悪寒、嘔気 (おうき)、頭痛、疲れ、動悸、筋肉痛、発疹などです。

 

新型コロナの治療薬(入院外)

最近、入院は必要がない軽症と中等症の新型コロナ感染者で、重症化リスクの高い人に向けた薬が利用可能になっています。

この薬には2種類あり、抗ウイルス薬とモノクローナル抗体と呼ばれる薬です。

  • (抗ウイルス薬)—— コロナウイルスが体内で増えるのを抑えます。
  • (モノクローナル抗体)—— 体の免疫システムにウイルスを認識して攻撃するのを助けます。

 

=抗ウイルス薬=

 <Paxlovid (Nirmatrelvir + Ritonavir)>

新型コロナ感染症に対する第一選択薬です。

12歳以上が対象になります。

発症してから5日以内に服用を始めます。

入院や死亡の割合を88%の確率で下げます。

Paxlovid には2種類の薬が含まれています。

Nirmatrelvir はウイルスが増えるのを抑えます。

RitonavirはNirmatrelvir がより長く、そして血中濃度が高く効果が出るように、Nirmatrelvirの代謝を抑えます。

Paxlovid に含まれているNirmatrelvir はいろいろな薬と反応します。

以下の薬を飲んでいる人は、Paxlovid は飲めません。

アミオダロン、フレケナイド、コルヒチン、ロバスタチン、シンバスタチン、トリアゾラム、ミダゾラム、リファンピンなどです。

飲み方は、ピンクの錠剤(Nirmatrelvir)2錠、白の錠剤(Ritonavir )1錠の計3錠を同時に服用し、1日2回飲みます。それを5日間続けます。

副作用としては、肝機能の悪化 (黄疸)、食欲低下、腹痛、味覚の変化、下痢、血圧の上昇、筋肉痛などです。

他に、Paxlovid を飲み終えた後にリバウンドという、症状の再発が報告されています。

 

<Lagevrio (Molnupiravir)>

Paxlovid を飲めない人が対象になります。

18歳以上の大人のみ、発症してから5日以内に服用を始めます。

経口800mgを1日2回5日間で、1カプセル200mgなので1回に4カプセル服用します。

妊娠中や授乳中は勧められていません。

副作用は、下痢、嘔気、めまい、皮疹、じんま疹などです。

 

<Veklury (Remdesivir)>

12歳以上が対象です。症状が始まって7日以内に始めます。1日1回3日間点滴をします。

初日は200mg、2日目から100mg。入院や死亡の割合を87%の確率で下げます。

副作用は、頭痛、動悸、喘鳴 (ぜんめい)、嘔気、熱、悪寒、かゆみ、顔の腫れなどです。

 

=モノクローナル抗体=

<Bebtelovimab>

12歳以上が対象です。症状が始まって7日以内に治療を開始します。

1回だけの静脈注射です。量は175mgで、幅広い変異株に効果があります。

副作用としては、発熱、発疹、悪寒、頭痛、かゆみ、筋肉痛、めまい、発汗などです。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2022年8月1日号掲載)