Thursday, 21 November 2024

日鉄のUSスチール買収交渉、米当局と協議へ  取り下げ打診報道も、大統領選後に再申請か

2024年9月11日

英紙フィナンシャル・タイムズ (FT) は9月10日、US Steel (USS=USスチール) 買収の交渉を担う日本製鉄の森高弘 (もり・たかひろ) 副会長が11日にワシントンで米政府高官と協議すると報じた。

投資を審査する対米外国投資委員会 (CFIUS=シフィウス) に対し、日鉄が数週間前に買収申請の取り下げを打診したとも伝えた。

買収計画は11月の大統領選を控え政治問題化。

候補のハリス副大統領、トランプ前大統領が共に計画に反対しており、日鉄が大統領選後に再び申請する可能性もある。


日鉄は報道について「コメントできない」としている。


米欧メディアによると、CFIUSは買収により「米国内の鉄鋼生産能力が削減される可能性がある」と日鉄に指摘した。

ただ、FTによると、買収が米鉄鋼業に打撃を与え米国の安全保障上のリスクとなる恐れがあるとのCFIUSの見方に対し、CFIUSメンバーの国務省と国防総省は同意しなかった。


バイデン大統領は買収阻止の行政命令に向け最終調整しているとされている。

申請の取り下げにはCFIUSの承認が必要。

日鉄の打診に対し、CFIUSから返答はないという。


再申請は可能だが、CFIUSの勧告を受けて大統領が買収禁止の命令を出した後は、再申請は難しいとされる。


CFIUSは米国への投資が安保上の脅威をもたらすかどうかについて審査する。


USスチールはペンシルベニア州に本社があり、大統領選の激戦州の一つ。

両候補には労働組合票を取り込む狙いがあるとみられる。

▪︎ US Steel (US スチール):1901年設立。

米大統領選の激戦州、ペンシルベニア州に本社を置く米国の鉄鋼メーカー。

昨年12月に日本製鉄が完全子会社化する買収計画を発表した。

年間の粗鋼生産能力は2,000万トン規模で、世界鉄鋼協会によると2022年の生産量は27位。

かつては米国の鉄鋼業界を牽 (けん) 引したが、近年は中国企業に押され相対的に存在感が薄れている。

▪︎ CFIUS (対米外国投資委員会):外国から米国企業への投資について、安全保障上の問題がないかどうか審査する米機関。

CFIUS は The Committee on Foreign Investment in the United States の略称で「シフィウス」と読む。

委員長は財務長官が務め、司法省や商務省、国防総省、国務省などの代表者らで構成される。

問題があると判断した場合、CFIUSは大統領に取引の阻止を勧告する権限を持つ。

*AI-generated image / shutterstock.com

(2024年10月1日号掲載)