トランプ氏は憲法読んだことがあるか?
イスラム系戦死米兵遺族、厳しく批判
2016年8月1日
「憲法を読んだことがあるか。なければ私の一冊をお貸ししよう」。
民主党大会閉幕の7月28日、右手にポケット版の米国憲法を掲げ、共和党の大統領候補トランプ氏を真っ向から批判した60代の法律家、キズル・カーン氏が選挙戦に一石を投じた。
カーン氏は、2004年に陸軍大尉だった次男 (27=当時) をイラクで亡くした。
パキスタンから1980年に移住後、米国籍を取得。
移民やイスラム教徒などに差別的なトランプ氏は自由と平等など米国の基本的な価値観を理解しておらず、息子を亡くした自分と違い国のために 「何一つ犠牲を払っていない」 と非難した。
トランプ氏は7月30日のABC-TVで 「(自分は)懸命に働き、何千人もの雇用を生んだ」 と反論。
それが犠牲かと問われると 「犠牲だと思う」 と述べた。
さらに、カーンさんの妻ガザラさんが党大会の場で何も語らなかったことに、女性が抑圧されているとの印象が強いイスラム社会を念頭に「しゃべるなと言われていたのではないか」 と疑問を提示。
これがソーシャルメディアなどで広まり、戦死者の遺族に対する侮辱と受け止められた。
共和党の重鎮グラム上院議員は「米国政治には聖域があり、戦死者遺族の批判はタブー」と述べるなど、党内にもトランプ氏の資質を改めて疑問視し、距離を置く声が広がっている。
(2016年8月16日号掲載)