銃構える米兵、上空にヘリ、移民集団「もう戻れない」
難民申請に長蛇の列、メキシコ国境の町を包む緊張感
2018年11月19日
中米諸国から米国を目指す移民集団がティフアナに続々と到着、米国境に迫った。
サンディエゴへと続く入国管理施設前では11月17日朝から難民申請の長蛇の列ができ「もう (国には) 戻れない」と移民の女性がつぶやく。
国境の向こうでは米兵が銃を構えて警戒に当たり、上空で監視のヘリコプターが轟音を響かせる。
国境の町ティフアナを緊張が包んだ。
列を成して行進する様子から「キャラバン」 とも呼ばれる移民集団は10月13日、治安が悪化する中米ホンジュラスから約7,000人が出発。
その後、数千人が追随してメキシコに入った。
ティファナには17日までに3,000人以上が到着した。
近く約4,000人が合流する見通しだ。
メキシコ当局の推計によると、最終的にティフアナに押し寄せる移民集団は10,000人近くに膨れ上がる可能性がある。
「ホンジュラスにはもう戻れない。私たちは犯罪者ではなく、安全な生活を求める亡命者だ」。
国境沿いの錆び付いたフェンスに面したスポーツ施設を使った収容施設。
ボーイフレンド (18) と逃れてきた女性アレリ・エルナンデスさん (19) が訴えた。
ホンジュラスから夫と娘3人と共に逃れ、キャラバンと行動を共にする女性ガスリン・ガリドさん (32) も
「私たちがティフアナで歓迎されていないのは感じている。でも、他に行く場所がない」と収容施設内のテントで疲れた表情を見せた。
母国で犯罪組織に狙われ、子供に安全な生活を送らせたいと願う。
しかし、トランプ政権は難民申請を厳格化。
移民の動きを「米国への侵略」、不法入国者を「犯罪者」と呼び、拘束して徹底的に裁く構えだ。
国境地帯には米軍約5,900人の派遣を発表しており、トランプ大統領は17日も米兵派遣を「必要な限り続ける」と述べた。
ティフアナ市内には十数か所の収容施設があるが、当局によると、米国への難民申請手続きを待つ約3,000人の移民らが待機中だ。
受け入れ態勢にも限界があるとの指摘が出始めた。
ティフアナのガステルム市長は16日の記者会見で 「移民が津波のように押し寄せている。世界でもこんな都市はない」と述べ、異常事態だと強調した。
移民流入は「少なくとも半年は続く」と警戒感を示した。
海岸沿いの国境フェンスには米当局が有刺鉄線を張り巡らせたほか、複数の投光器を設置。
観光地として国内外から多くの観光客が訪れるビーチに物々しさを醸し出す。
人権団体の男性は「異様な光景だ」と述べ、トランプ政権の対応を激しく批判した。
(2018年12月1日号掲載)