2021年3月23日
毎年春になると、数百万羽の大群でカリフォルニア南部〜メキシコから北米大陸をほぼ縦断飛行する “渡り蝶” のオオカバマダラ。世代交代を繰り返しながら、夏場を迎える頃にかけて、ロッキー山脈〜カナダ山岳地帯まで3,400マイル以上 (5,500 キロメートル以上) の長旅を続ける。
8月になると、そこで羽化した “新世代” が復路としての南下を開始し、カリフォルニア南部〜メキシコで越冬するダイナミックな行動を特徴としている。
サンディエゴ上空でも目撃できるオオカバマダラの大移動。
その優雅な姿が近い将来に消えてしまう恐れが出てきた。
初めてオオカバマダラの絶滅危機が唱えられたのは2002年。
当時の北米自由貿易協定 (NAFTA) 下にあった米国、メキシコ、カナダが、自動車や発電所などからの二酸化炭素 (CO2) 排出量の急増に加え、森林破壊や農薬汚染によってオオカバマダラの数が急減するなど、北米3か国では生物種の減少が顕著であると警鐘を鳴らした。
無脊椎動物の保護活動を推進するサンフランシスコの環境団体「Xerces」が昨年発表した統計によると、カリフォルニア州で越冬するオオカバマダラの生息数は約29,000羽で、前年数の約27,000羽から漸増している。
絶滅の危機が緩和された印象を受けるものの、今後、増加が続く見通しが立っていないことから、再び減少に向かう可能性が高いとしている。
ワシントン州立大学の調査では、具体的な保護政策が講じられない限り、オオカバマダラは10~20年後に絶滅するという。
(2021年4月1日号掲載)