Saturday, 07 September 2024

ウイルス変異で感染力増大か SDスクリプス研究所も認める

2020年12月7日

中国・武漢で2019年12月に初確認された新型コロナウイルスは変異して感染力が増したために、欧米を起点とする爆発的な流行を招いた可能性が強いとの研究発表が相次いでいる。

変異ウイルスの拡散が確認され「変異によって流行防止がより困難になった」 (米メディア) との懸念が強い。

日本で感染者が増えたのも、中国で2020年1月に確認され欧米で急拡大した変異ウイルスが流入した後とされる。
 

東京大医科学研究所によると、開発が進むワクチンは変異種に対しても効果が期待されている。

サンディエゴとフロリダ州に本部があるスクリプス研究所の免疫学者クリスチャン・アンダーセン氏は、変異ウイルスの感染力の高さを認める一方で流行の原因は「人々の不作為」にあると指摘し、マスクの着用や手洗いをはじめとする感染対策の徹底を呼びかけている。
 

当初、専門家の間では、変異と感染力の関連性に懐疑的な見方が多かった。
 

英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らが実施した調査によると、英国では2020年3月時点で初期のウイルスと変異種の感染者が各地で確認されたが、患者が急増した4月以降は変異種が圧倒的に多くなり、5~6月には大半を占めた

死亡率や重症化率の上昇は確認されなかったが、変異種の患者の方がウイルス量が多かった。
 

ニューメキシコ州のロスアラモス国立研究所の調査でも、2020年2月中旬から4月上旬の間、世界的に変異種の感染例が初期ウイルスより増えたことが判明。

武漢に続き感染中心地となったイタリアや米国でも変異種の感染が急増。

日本でも2020年4月以降98%超を占めた。
 

東京大医科学研究所の河岡義裕教授らのチームも、変異によって感染力が強くなったことをハムスターの実験で確認した。

チームは、感染ハムスターのケージ (かご) を、感染していないハムスターのケージと5センチ離して置いて飼育する実験を8組について実施。

変異ウイルスに感染したハムスターでは、2日後に8組中5組で非感染ハムスターの鼻からウイルスが検出されたが、初期ウイルスでは検出されなかった。

変異によって飛沫感染しやすくなったとみられる。
 

河岡さんは「ヒトでも同様と断言することはできないが、変異が感染拡大に影響した可能性は高い」と話している。

さらに、変異ウイルスは人の細胞やハムスターの体内で初期ウイルスより増えやすいことも確かめたとしている。


(2021年1月1日号掲載)