2021年7月19日
新型コロナウイルス禍でうつ病を患う人が世界で急増している。
経済協力開発機構 (OECD) の報告書によると、感染者と死者数が世界最多の米国では「うつ病、抑うつ状態」の人の割合が昨年春で推定23.5%と、前年比の約3.6倍。
日本を含め、コロナ前と比べ倍増した国も多い。
外出制限で交流や運動の機会が減ったことや、経済状況の悪化、失業の増加が要因とされ、各国は雇用対策やオンライン診察拡充に追われた。
報告書は、人々の精神状態が感染拡大に比例して「前例のないほどに悪化した」と指摘。
テレワーク普及で仕事と私生活の境界が不明確になり、長時間労働で心の健康を損なう可能性も挙げた。
また、危機的な感染状況の下、心のケアをする通所施設は多くが閉鎖に追い込まれた。
OECDは昨年春の調査結果を今年5月に報告書として発表。
うつ病より症状が軽く、一時的に気分が落ち込んだ抑うつ状態の人も含んでいる。
日本は17.3%で2013年の前回調査時に比べて約2.2倍。
世界でも累計感染者数が多いフランスで19.9%、英国は19.2%でいずれも前回比で約2倍。
イタリアは17.3%で2014年の約3倍だった。
感染の抑え込みに成功してきたオーストラリアでも27.6%と高く、2017~18年の約2.7倍。
厳しい外出規制が悪影響を与えたとみられる。
各国は感染拡大の当初から雇用維持のため、賃金助成制度などの企業支援を打ち出した。
ただ、経済への打撃は大きく、日本や欧米などOECD加盟の38か国では今年4月現在も約4,400万人が失業。
観光や接客、小売業で解雇が相次いだ。
昨年4月、イタリアでは心のケアに当たる通所施設の約8割が閉鎖された。
各国はオンラインによるカウンセリングや遠隔医療の整備を強化。
ポルトガルは約60人の心理学者の協力を得て24時間無料の電話相談を実施した。
OECDは報告書で「心の健康支援のためのより幅広く力強い施策が必要だ」と指摘した。
(2021年8月1号掲載)