12/1/2024
第1次トランプ政権の2018年1月から3年間、駐米大使を務めた杉山晋輔 (すぎやま・しんすけ) 氏 (現・外務省顧問/早稲田大特命教授) は、攻撃的な印象が強いトランプ次期大統領について、実際は温かく、人の意見にも耳を傾ける素顔があると語った。
エスタブリッシュメント (既存の支配層) に反発する姿が人気の根源だと指摘した。
― トランプ氏の人柄は:「数回、直接話したことがある。
事件での起訴や乱暴な言動が物議を醸すのは問題だが、本質的には優しさや温かみがあり、強烈な魅力で熱狂的な支持を得ているのは間違いない。
北大西洋条約機構 (NATO) が好きではないというのは本当だろう。
エスタブリッシュメントが持つ『上から目線』的なものに対して『おかしい、インチキだ』という本能的な反感を持っており、それが市民の共感を呼んだ」
― 独裁色への懸念は:「相手や周囲の意見をきちんと聞く人物だ。
演説や公の場で過激なことを言うが、個別に話すと相手を見下すような態度は全くない。
相手を尊重しない限りディール (取引) はできない」
― 大統領選の勝因は: 「白人貧困層に光を当て、労働組合を取り込み、非支配層の人たちをさらに多く引き寄せた。
米国を分断したと言われるが、そうは思わない。
将来、白人が少数派に転落する大きな社会変容の中で、分断の結果としてトランプ大統領が生まれた。
トランプ氏でなくても同様の指導者が現れただろう」
― ハリス副大統領に足りなかったものは:「良くも悪くも強い個性がなかった。
必ずしも評価が高い副大統領ではなく、候補として強さがなかった。
予備選を経ない異例の展開で準備不足だったことも否めない」
― 日本外交に求めるものは:「首脳外交の役割が増大し、安倍元首相のようにトランプ氏と信頼関係を築いて堂々と向き合うべき。
指導者が誰であれ根本にあるのは国と国との関係。
構造的に積み上げてきたものがある。
日米だけでなく東アジアや世界に有益な同盟に発展させる責任を果たすと期待している」
― 不安材料は: 「トランプ氏は『タリフマン (関税屋) 』を自称し、第1次政権で日本の鉄鋼製品に25%の追加関税を課した。
同盟国に対してすべきではないと、きっぱり伝えていく必要がある」
*Picture: © Anna Moneymaker / shutterstock.com
(2024年12月16日号掲載)