Saturday, 05 October 2024

トランプ氏の排外的主張に危機感、反イスラム発言、非難殺到

トランプ氏の排外的主張に危機感、反イスラム発言、非難殺到

支持率首位、共和党候補指名に現実味、無視できない影響力

2015年12月11日


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© Joe Seer

来年の大統領選の共和党指名争いで先頭を走る実業家ドナルド・トランプ氏 (69) がイスラム教徒の入国全面禁止を主張、米国内外から激しい非難を浴びている。

指名獲得の可能性が現実味を帯び始めたことへの危機感が背景にある。

12月8日付の米主要紙は前日の主張をトップニュースの一つとして報じた。

ジョシュ・アーネスト大統領報道官は記者会見で「大統領となる資格はない」と断罪。

パリ同時多発テロの惨劇を経験したばかりのフランスのマニュエル・バルス首相もツイッターで「憎悪をあおっている」と非難した。

トランプ氏はメキシコ移民をレイプ犯呼ばわりしたり、モスク (イスラム教礼拝所) 閉鎖に言及するなど物議を醸してきたが、共和党支持者の間では8月以降、ほぼ一貫して支持率首位を維持。

最新の全国調査では他候補を10ポイント以上引き離しており、排外的な主張が米社会で一定の共感を集めていることを示す。

法的にも技術的にも実現可能性が低い極端な提案をメディアや政界が真っ向から批判するのは、トランプ氏の影響力を無視できなくなったことの裏返しでもある。

同氏の人気を一時的現象とみる意見はもはや少数派だ。

米メディアが12月初めに暴露した共和党の内部文書は「有権者はトランプ氏を本物だとみている」として、指名獲得もあり得ると指摘。

同党上院議員を目指す候補らに対し、大衆迎合的な手法を学ぶよう指示していた。

今回ばかりは他の主要候補らも一斉に批判の矛先 (ほこさき) を向けた。

共和党のポール・ライアン下院議長も提案について「共和党、そして米国が目指すものではない」と語ったが、指名争いから締め出すことは否定した。

トランプ氏は、来年2月1日に予備選の皮切りとなる党員集会が開かれるアイオワ州の世論調査でテッド・クルーズ上院議員に首位を奪われ、巻き返しを図ろうとしているとも指摘される。

少なくとも、新たな過激発言で世間の注目を自らに引き戻すのに成功した。

ロイター通信は12月11日、来年の大統領選に向けた最新の世論調査結果 (12月8日~11日に実施) を発表し、トランプ氏が支持率35%で首位を維持している。

イスラム教徒の入国拒否という極端に排外的な主張を打ち出した後も、人気が揺らいでいないことが明らかになった。

共和党支持者のうち64%は同氏の強硬発言を問題視せず、 「不快」 としたのは29%にとどまった。

ただ、全体では47%、民主党支持者の間では72%が「不快」 と回答。

民主党、共和党支持者の間で受け止め方が大きく異なることが浮き彫りになった。


(2016年1月1日号掲載)