2021年4月13日
新型コロナウイルスのワクチン接種歴を証明する「ワクチンパスポート」をめぐり、米国で賛否が割れている。
接種拒否の自由やプライバシーを侵害するとの反対論があり、フロリダ州などは証明提示の義務化を禁止。
ニューヨーク州は先頭を切って運用を始め、民間企業も導入の動きが相次ぐが、政府は関与に慎重だ。
「経済を安全に再開しつつ、新型コロナとの闘いを助ける」。
ニューヨーク州のクオモ知事 (民主党) は3月26日、接種歴や陰性証明を示す携帯電話アプリの運用開始を発表した。
接種歴などをQRコードで提示し、州内のスポーツ・芸術イベントなどに入場できる。
疾病対策センター (CDC) が接種者に接種履歴カードを配布しているが、偽造が困難なアプリの開発にIT各社などが続々と参入している。
米メディアによると、小売大手ウォルマートは店舗内で接種を受けた人にアプリ利用を呼びかけているほか、航空会社のジェットブルーやユナイテッドもアプリ運用を検討。
コーネル大やブラウン大などは学生に対し、新学期から接種証明の提示を求めると表明した。
だが、ワクチン証明が事実上の接種義務化につながるとの懸念は強い。
フロリダ州のデサンティス知事は4月2日、同州内の企業に対し、顧客にワクチン証明を求めることを禁じる知事令に署名。
ミシシッピ州やテキサス州なども後に続いた。
いずれの州知事も共和党で、接種に慎重な保守層を支持基盤に持つ。
サキ大統領報道官は4月6日の記者会見で「政府は国民にワクチン証明を持ち歩くよう義務付ける仕組みは支持しない」と述べ、慎重姿勢を表明。
元共和党下院議員ジャスティン・アマシュ氏は「ワクチン証明は市民の自由やプライバシーに対する悪夢だ」と警告した。
(2021年5月1日号掲載)