3/2/2025米下院で共和党が提案した予算案が僅差 (217対215) で可決された。この予算案はトランプ大統領が掲げる「壮大な税制改革」を実現するためのもので、4.5兆ドルの減税と2兆ドルの歳出削減を目指している。その中でも特に注目されているのが、メディケイド (低所得者向け医療保険) への最大8,800億ドルに及ぶ可能性のある削減措置だ。
カリフォルニア州の連邦議員団は党派に沿って投票し、民主党議員は全員反対、州内の共和党議員9名は全員賛成した。民主党のハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務は「これは米国史上最大のメディケイド削減に向けた動きだ」と警鐘を鳴らした。
メディケイドは米国の5人に1人が利用する包括的な医療・長期ケアプログラムで、医療費全体の約20%を占める。カイザー・ファミリー財団 (KFF) の調査によると、米国民の77%、メディケイド受給者の84%が同制度を支持している。それにもかかわらず、共和党は大幅な歳出削減の必要性を訴え、特にメディケイドや食品支援 (フードスタンプ)、学生ローンへの支出削減を検討している。
共和党の指導部は、60ページに及ぶ予算案の中にメディケイド削減が明記されていないと説明している。しかし、エネルギー・商業委員会に対し、今後10年間で8,800億ドルの削減を指示しているため、メディケイドが大幅に影響を受ける可能性が高いと見られている。
共和党内でもこの削減に懸念を示す議員は少なくない。ニューヨーク州のマイク・ローラー下院議員は「トランプ大統領はメディケイドを削減しないと明言した」と述べ、今後の予算策定過程で制度を守るよう求める姿勢を示した。また、ヒスパニック会議所属の共和党議員たちも、メディケイド、フードスタンプ、大学向け助成金 (ペル・グラント) の削減に反対する書簡を提出した。
一方、民主党はこの予算案を「国民への裏切り」と批判。議会内外での反発が高まる中、トランプ政権は政府機関の人員削減にも着手しており、有権者の怒りが増している。さらに、3月14日に期限が迫る政府予算の成立問題も控えており、今後の議論はさらに激化すると予想される。
この予算案は可決されたものの、今後の詳細な調整過程でメディケイド削減に対する抵抗が強まる可能性がある。共和党内の財政保守派は、減税が国家債務をさらに拡大させることを懸念している。唯一、予算案に反対した共和党議員トーマス・マッシー (ケンタッキー州選出) は「歳出削減が不十分で、財政赤字をさらに3,000億ドル増加させる」と X (旧Twitter) に投稿し、財政責任を果たせていないと批判した。
今後、上院での審議が待たれるが、共和党の一部議員がメディケイド削減に難色を示していることから、予算案の成立には依然として不透明な部分が残っている。