2023年8月21日
ワシントンD.C. でスミソニアン協会が運営する国立自然史博物館 (National Museum of Natural History=NMNH) に、人間の脳255個を含む30,700以上の人体の部位が保管されている。ワシントン・ポスト紙が報じた。
脳の大半は黒人や先住民など有色人種のもので、白人が優れているとの主張を裏付ける研究目的で
収集され、遺族らへの返還は進んでいないという。
首都近郊のメリーランド州にあるNMNHの施設で保管されている。
人体の部位は80か国以上から収集され、多くは1940年代以前に本人や家族の同意がないまま研究者らによって集められたとみられる。
入院患者や貧困層、身寄りのない人たちが対象となったほか、墓から盗み出されたものもある。
脳の収集は1900年代初め、人類の進化に関する研究部門の責任者の下で大々的に進められた。
この責任者は白人の優越性を公言し「特に先住民と黒人の脳研究のため、脳の収集が必要だ」と訴えていたという。
人体の部位の保管についてはNMNH幹部が把握していたが、脳の収集の全容は最近まで不明だった。
255ある脳はフィリピンやドイツなど少なくとも10か国の人々のもので、本人や家族の同意を得て収集したものは4つしかない。
これまでの約30年間でNMNHが遺族らに返還した人体の部位は4,068個にとどまる。
スミソニアン協会のロニー・バンチ事務局長は「白人が優れていることを示すために有色人種の脳が集められたのは道義的に許されない。
全てを遺族に返し、最善の方法で取り扱う必要がある」と話している。
(2023年9月16日号掲載)