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金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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食道けいれん Esophageal Spasm |
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食道けいれんは、一般的な病気ではなく、治療を必要としないことも多いので、軽視されがちですが、症状の一つである胸痛が、心筋梗塞や狭心症の胸痛と見分けがつかないことがあるので、急な診断を要することがあります。
食道けいれんとは? 食道けいれんは、食道を構成する筋肉が不規則に、協調性なく異常な収縮をするもので、胸痛が突発的に発症し、数分から数時間続きます。 時々しか起こらなく、症状も軽いのが普通ですが、頻回に起こり、食物が胃に運ばれにくくなり、食物が食道に留まってしまうことがあります。 食道けいれんには2つの種類があり、胸痛と飲食物の逆流のみられる「びまん性食道けいれん」、それに、飲食物の逆流はないが、激しい胸痛を伴う「ナットクラッカー食道=くるみ割り食道」または「ジャックハンマー食道」と呼ばれる食道けいれんです。 ほとんどの食道けいれんはびまん性食道けいれんです。
食道けいれんの原因 原因は明らかではないですが、食道の動きを制御する神経の障害ではないかと考えられています。 それによって、飲食物を胃まで運ぶ正常な蠕動 (ぜんどう) 運動が妨げられ、食道の飲み込み機能が障害されます。 誘因と考えられているものはいくつかあります。 非常に熱いか逆にとても冷たい飲食物の摂取、ある種の食物、赤ワイン、胃食道逆流症、アカラシア (食道下部の括約筋の機能不全)、不安症、パニック発作などです。
食道けいれんの症状 胸痛、腹痛、飲み込み困難、食物が食道で詰まっている感覚などが主な症状です。 胸痛は絞られるような痛みで、痛みが首、あご、背中に放散することがあります。 心筋梗塞や狭心症と区別がつけにくい時があるので要注意です。
食道けいれんの診断 診断は問診と診察を基に、胃食道内視鏡 (胃カメラ)、 食道マノメトリ (食道内圧測定)、食道バリウム検査、食道pH測定 (これは胃酸が逆流しているかどうかを測定します) などで行われます。 胸痛が狭心症や心筋梗塞と紛らわしい時は、心電図、血液検査などが行われます。
食道けいれんの治療 原因になる疾患のある時は、その治療を行います。 薬物療法では、ニトログリセリンの舌下、長時間作用型の亜硝酸塩、ニフェジピン、ディルチアゼンなどのカルシウム拮抗薬、ジシクロミンなどの抗コリン薬、胃食道逆流症が疑われる場合はランソプラゾールやオメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬、長期間続くケースでは、低用量の抗うつ薬 (トラゾドンやイミプラミンなど) を使います。 シルデナフィル (バイアグラ) やボトックスなどの注射も治療に使われることがあります。 食道の一部が狭くなっている場合は、バルーン (風船状のもの) やブジ—で食道を広げたり、POEMという内視鏡的に食道下部の筋肉を切開する処置などを行います。
自宅でできる治療 誘因 (トリガー) となるものがあればそれを除去します。 例えば、極端に熱いか冷たい飲食物を避ける。ストレスがあるとそれを緩和。ペパーミントは平滑筋をリラックスさせるので、ペパーミントのキャンディーやトローチを舌下して使います。
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この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。 | |||
(2017年9月1日号掲載) |