Sunday, 01 June 2025

食道けいれん Esophageal Spasm(2017.9.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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食道けいれん

Esophageal Spasm

       
       

食道けいれんは、一般的な病気ではなく、治療を必要としないことも多いので、軽視されがちですが、症状の一つである胸痛が、心筋梗塞や狭心症の胸痛と見分けがつかないことがあるので、急な診断を要することがあります。

 

 

食道けいれんとは?

食道けいれんは、食道を構成する筋肉が不規則に、協調性なく異常な収縮をするもので、胸痛が突発的に発症し、数分から数時間続きます。

時々しか起こらなく、症状も軽いのが普通ですが、頻回に起こり、食物が胃に運ばれにくくなり、食物が食道に留まってしまうことがあります。

食道けいれんには2つの種類があり、胸痛と飲食物の逆流のみられる「びまん性食道けいれん」、それに、飲食物の逆流はないが、激しい胸痛を伴う「ナットクラッカー食道=くるみ割り食道」または「ジャックハンマー食道」と呼ばれる食道けいれんです。

ほとんどの食道けいれんはびまん性食道けいれんです。

 

 

食道けいれんの原因

原因は明らかではないですが、食道の動きを制御する神経の障害ではないかと考えられています。

それによって、飲食物を胃まで運ぶ正常な蠕動 (ぜんどう) 運動が妨げられ、食道の飲み込み機能が障害されます。

誘因と考えられているものはいくつかあります。

非常に熱いか逆にとても冷たい飲食物の摂取、ある種の食物、赤ワイン、胃食道逆流症、アカラシア (食道下部の括約筋の機能不全)、不安症、パニック発作などです。

 

 

食道けいれんの症状

胸痛、腹痛、飲み込み困難、食物が食道で詰まっている感覚などが主な症状です。

胸痛は絞られるような痛みで、痛みが首、あご、背中に放散することがあります。

心筋梗塞や狭心症と区別がつけにくい時があるので要注意です。

 

 

食道けいれんの診断

診断は問診と診察を基に、胃食道内視鏡 (胃カメラ)、 食道マノメトリ (食道内圧測定)、食道バリウム検査、食道pH測定 (これは胃酸が逆流しているかどうかを測定します) などで行われます。

胸痛が狭心症や心筋梗塞と紛らわしい時は、心電図、血液検査などが行われます。

 

 

食道けいれんの治療

原因になる疾患のある時は、その治療を行います。

薬物療法では、ニトログリセリンの舌下、長時間作用型の亜硝酸塩、ニフェジピン、ディルチアゼンなどのカルシウム拮抗薬、ジシクロミンなどの抗コリン薬、胃食道逆流症が疑われる場合はランソプラゾールやオメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害薬、長期間続くケースでは、低用量の抗うつ薬 (トラゾドンやイミプラミンなど) を使います。

シルデナフィル (バイアグラ) やボトックスなどの注射も治療に使われることがあります。

食道の一部が狭くなっている場合は、バルーン (風船状のもの) やブジ—で食道を広げたり、POEMという内視鏡的に食道下部の筋肉を切開する処置などを行います。

 

 

自宅でできる治療

誘因 (トリガー) となるものがあればそれを除去します。

例えば、極端に熱いか冷たい飲食物を避ける。ストレスがあるとそれを緩和。ペパーミントは平滑筋をリラックスさせるので、ペパーミントのキャンディーやトローチを舌下して使います。

 

 
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(2017年9月1日号掲載)