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金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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伝染性単核症 Infectious Mononucleosis |
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伝染性単核症は以前、アメリカの大学生の間で流行し、キスなど主に唾液を通じて感染するので、Kissing disease (キス病) と呼ばれたことがあります。 咽頭痛を始め、肝炎や脾臓の腫れを起こしたり、稀 (まれ) に重症化することがあります。
伝染性単核症とは 主にEBウイルス (Epstein-Barr virus) ウイルスによる感染症で、日本では幼少期の感染が主ですが (2〜3歳で70%くらいが感染)、アメリカでは思春期、青年期に主に感染します。 EBウイルスは唾液に存在し、唾液を媒介にして感染するので、キスやコップなどでの回し飲みをして感染します。 どの年齢でも感染しますが、アメリカでは10才から35才の若い世代に好発します。 幼少期に感染すると症状はないか、あってもずっと軽いことがあります。幼少期に感染して、血液中にEBウイルスの抗体がある人も多いのです。 既感染者の約15〜20%の唾液にEBウイルスが認められており、症状がない相手から伝染性単核症はうつります。
伝染性単核症の症状 症状は感染して4〜6週間という長い潜伏期間の後に出てきますが、その症状としては、咽頭痛、発熱、食欲不振、疲れ、吐き気、頭痛、首のリンパ節の腫れ、腹痛、発疹などです。 溶連菌による咽頭炎と間違われ、アモキシシリンなどのペニシリン系の抗生物質を処方されて発疹が起こり、今度はペニシリンアレルギーと間違われることがあります。 半数近くの人は腹部の左上に位置する脾臓が腫れ、そこに衝撃が加わると脾臓が破裂する可能性があるので、アメリカンフットボールなどの接触性のある激しいスポーツは、脾臓が腫れている間は避ける必要があります (4週間程度)。 肝臓のトランスアミナーゼ (ALT、AST) が上昇して、A型肝炎やB型肝炎などと間違われることがありますが、伝染性単核症の場合は、一般的にそうした肝炎ほどALTとASTは上昇しません。 肝臓も脾臓と同じように腫れる場合があります。 他に、髄膜炎、脳炎、腎炎、心筋炎、肺炎、溶血性貧血などが起こる可能性もありますが、大半の人は2週間前後で症状は改善します。 中には、疲れなどの症状が数週間から数か月残り、なまけ癖がついていると思われたり、うつ病に間違われることもあります。
伝染単核症の診断 問診と診察で伝染性単核症は疑われます。 例えば、大学生くらいの年齢で、最近ボーイフレンドやガールフレンドができ、咽頭痛と上腹部痛の訴えがあれば可能性が出てきます。 診察で、肝臓や脾臓の肥大があり、痛みがあれば伝染性単核症の可能性はさらに高くなります。 血液検査では、リンパ球が増加し、非典型的リンパ球が見られるようになります。 モノスポットという血液検査、EBウイルスのIgMという抗体検査をすると伝染性単核症の診断がより確かなものになります。
伝染単核症の治療 治療法は、痛みや熱などの症状を緩和する対症療法以外に特にありませんが、扁桃腺が大きくなって気道を塞ぐ可能性のある場合はステロイドを服用することがあります。 また、扁桃腺の腫れや痛みで飲食が困難になった場合、稀に入院が必要となることがあります。 また、溶連菌とよく間違われると前述しましたが、実際に溶連菌も伝染単核症と一緒に感染していることもよくあるので、この場合は抗生物質が必要になります。
伝染性単核症の予防 予防としては、他人とコップなどを共有しない。回し飲みしない。キスをしない (恋人どうしては難しいですね) などですが、日本人の場合、20歳代で90%の人がEBウイルスの抗体を保有しているという報告があるので、過度な心配は不要かもしれません。 ただし、EBウイルス以外のウイルスによる伝染性単核症も存在するので、その場合はEBウイルスの抗体があっても感染することになります。
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(2018年1月1日号掲載) |