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永野 文久
米国公認会計士 昭和17 年生まれ。 昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
ご質問、ご連絡はこちらまで昭和58 年米国公認会計士。 |
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海外資産開示義務を怠った申告者のための「和解制度」(1) |
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米国政府シャットダウンに見られるように、今や米国財政は危機的な状況にあります。 デフォルトまで指摘される連邦政府では、これまで財源捻出努力を重ねており、その1つとして海外資産開示義務制度を度々強化してきました。 具体的には、the Bank Secrecy Actに基づいて米国市民・永住権者、米国居住者や米国法人等に海外にある金融資産の報告を義務付ける、Reports of Foreign Bank and Financial Accounts Form TD F 90-22.1いわゆる「FBAR」の導入です。 ちなみにFBAR報告対象は、銀行口座だけではなくインベストメント口座等も含まれます。 そして、開示義務を怠った場合には、罰則金の対象となり、さらに刑事罰が科される可能性もあります。 加えて、米国では、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に基づきより厳しい報告義務を課したいわゆる「Super FBAR」も近年導入されました。 また、非居住米国納税者(海外在住のアメリカ市民や永住権者等)向けの簡便なFBAR報告手続きも導入されました。 こうした中、報告を怠った場合の対応方法を、どうしたらよいのかと心配する声も聞かれます。 そこで今回と次回の2回にわたり、一般に米国に居住する納税義務者等が開示義務を怠った場合に利用できる「和解制度」である自主開示プログラムについて概説します。
自主開示プログラム(OVDP)の目的 IRS (米国内国歳入庁)は、2012年1月に、2012年海外資産自主開示プログラム (Offshore Voluntary Disclosure Program-OVDP) を開始しました。 今までに海外金融資産の報告義務とその資産から生じた所得に関する申告納税義務を怠ってきた者に対し是正のチャンスを与えるのが趣旨です。 怠ってきた理由としては、今まで故意又は不注意で報告をしなかった、また、そもそも報告義務の存在を知らなかったなど多々あると思われます。 IRSに摘発された場合のペナルティは、下に述べるように相当な額に上る可能性があります。
自主開示プログラム(OVDP)の内容 IRS から摘発された場合と自主開示プログラムに参加した場合の主なペナルティの違いは次の通りです。 (例:2007年から2010年まで毎年最高残高$100,000の海外資産を報告していなかったAさんの場合) ● IRS から摘発された場合: 未報告が故意の場合の罰則金は、$100,000 又は報告書提出期限時点での資産合計の50%のどちらか高い金額に未報告年数をかけた金額となる。 よって、Aさんの場合$100,000 X 4年=$400,000となる。 さらに、悪質な場合は刑事罰の対象になる。 故意でない場合でも、未報告年度ごとに最高$10,000 の罰則金である。(Aさんの場合$10,000 X 4年=$40,000)。 なお、合理的な理由がある場合には、罰則金は免除されることがある。
● 自主開示プログラム(OVDP)に参加した場合: 罰則金は、報告義務を怠っていた複数の年度(最高8年まで遡る)を通して資産残高が一番高かった時の27.5%が上限である。 例えば、Aさんの場合、未報告期間4年のうち最高額は、$100,000となり、$100,000 X 27.5% = $27,500が、罰則金となる。 また、このプログラムに参加することで刑事訴追のリスクを回避することが可能であるとされる。 なお、27.5%は上限であり、条件が揃えば、12.5%又は5%に軽減されます。まず、最高残高が$75,000以下であれば12.5%になります。 さらに、次の4つの条件が揃えば5%になります。 ①自身で開設した口座ではない。(相続などによって自分に帰属する口座ができてしまった等)。 ②口座に関して住所変更など最低限の関与しかしていない。 ③米国に移すために口座を閉じたときを除き、各年$1,000以上引き出していない。 ④口座の資金は納税済みの合法な手段で得た資金であり、その資金から生じた所得のみが未報告であったと証明できる。 (次回に続く) |
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※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。 | ||
(2014年1月1日号掲載) |