永野 文久
米国公認会計士 昭和17 年生まれ。 昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
ご質問、ご連絡はこちらまで昭和58 年米国公認会計士。 xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx |
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アメリカの医療保険改革と税法改正 (1) | ||
今年6月28日に連邦最高裁でオバマ大統領の医療保険改革法 (The Patient Protection and Affordable Care Act=PPACA) に合憲判決が下されました。 個人に対して健康保険加入を義務付けているとされる条項が、今回最大の論点になっていたと言えます。 最高裁は、この点について「健康保険を取得しない一定の個人に対し、金銭的ペナルティの支払を求めることを税金と位置づけるのは理にかなっていると言える。連邦憲法はそのような税金を認めている」と判示しました。 Individual Mandate (個人加入義務化) 条項は、実は国民に保険の購入を強要するものではなく、一定の所得がありながら保険に加入しないことを選択する国民への増税であると解釈できます。 そして、米国憲法の通商条項の下では、個人に対して健康保険への加入を義務付けることは容認できないが、憲法の課税条項の下では、このような徴税は認められるという判決理由です。 ちなみに、この Individual Mandate 条項は、USC Title 26 Subtitle D、つまり Internal Revenue Code の Miscellaneous Excise Tax の下に規定されており、このこともそのような理由付けを導いた一因となっています。 これにより、既に部分的に実行されている医療保険改革法が継続して施行されることになります。 米医療保険改革法の主眼は、より多くの国民が医療保険にアクセスできるようにすることにありますが、その方策として上述の Individual Mandate 条項を始めとするかなり多くの税法改正を伴っています。 今回は2回にわたり、医療保険改革法で予定されている、税金に関わる主な条項とそれらの時系列を紹介したいと思います。
医療改革法の施策 医療改革法の施策は、法律が成立した2010年3月から2015年までの長期間にわたり順次実施されることになっています。 既に施行されている主要条項には、雇用主が提供する医療保険は被雇用者の26歳までの扶養家族も給付対象にしなければならない、医療保険により自己負担額なしに特定の予防的ケアを受けることができる、保険会社は個人が生涯で使える基礎的医療給付額に上限を設けられない、既往症がある19歳未満の子供を保険から排除してはならないといったものがあります。 これに加えて、2014年からは、① 年齢に関わらず既往症のある者を排除してはいけない、② 州が運営する “exchange”という保険市場で医療保険を購入できるようになり、低所得世帯は購入のための補助を受けることができる、というような内容が追加されます。
医療改革法の施策の履行を担保するための税法改正 2013年 2014年
なお、一定の低所得者とその家族については、保険料の支払いが所得の一定率を超えないように州からの援助がなされます。
(次号に続く) |
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※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。 | ||
(2012年9月1日号掲載) |