「バターン死の行進」 の元米兵捕虜、首相の演説を批判
カールスバッド在住、夕食会に招待された94歳テニー氏
2015年5月1日安倍首相は米連邦議会の上下両院合同会議での演説で「先の大戦に対する痛切な反省」を表明した。
米国内では「日本側に責任があることを明確にした」 (バイデン副大統領) との評価が上がる一方、謝罪の言葉がなかったことに失望の声も漏れた。
第二次大戦中、フィリピンで起きた「バターン死の行進」 の生存者で日本軍の捕虜だったレスター・テニー氏 (カールスバッド在住=94歳) は4月30日、安倍首相の米議会演説について、存命の被害者への視点が欠けていたと批判し「 (具体的に) 事実を認めてほしかった」と語った。
同氏は、首相がバターンという地名に言及したことは評価しながらも 「もっと踏み込めたはずだ」と指摘。
戦争で命を落とした米兵への敬意は示したが、元捕虜や元従軍慰安婦ら「残酷な仕打ちに苦しみ、今も生きている人々については何も語らなかった」と話した。
さらに「もう謝罪は求めていない。ただ、こうしたことが実際に起きたということをはっきり知ってほしい」と訴えた。
1942年のバターン死の行進では、フィリピン・ルソン島のバターン半島で日本軍に投降した多くの米兵が虐待や過酷な環境下で連行され、死亡したとされる。
テニー氏は死の行進を経験、その後は福岡県大牟田市の三井三池炭鉱で強制労働させられており、日本軍に捕まった捕虜の象徴的存在。
日本企業に謝罪を要求しているほか、2013年12月に安倍首相が靖国神社に参拝した際には、首相を批判する声明を発表している。
テニー氏が所属する「全米バターン・コレヒドール防衛兵の会」は安倍首相の米議会演説について、戦時中の日本の過ちを安倍氏が認めるべきだとする書簡を議会に送っていた。
テニー氏は首相の演説を議会で直接傍聴。
首相が同日にワシントンで開いた夕食会にも招かれている。
(2015年5月16日号掲載)