2022年7月21日
世界保健機関 (WHO) のテドロス事務局長は7月20日の記者会見で、新型コロナウイルスのオミクロン株派生型「BA.5」について、「これまでに検出された変異株で最も感染力が強い」と警戒を呼びかけた。
感染者急増を受け「今後数週間で、入院患者や死者も増えることが見込まれる」とし、各国に感染防止策やワクチン接種率向上に向けた取り組み強化を求めた。
感染防止策を撤廃した国は「大きな危険を冒している」とテドロス氏は指摘。
一方、現時点では入院患者や死者は感染者ほどには増えておらず、各国で医療機関が逼迫 (ひっぱく) するような状態にまでは至っていないため、今のうちに治療態勢拡充などの備えをするよう訴えた。
テドロス氏は、既存の新型コロナワクチンはBA.5に対しても重症化率や死亡率を下げることには有効だと強調。
全ての医療従事者や高齢者らへの接種完了を求めた。
バイデン政権は7月12日、新型コロナウイルスのオミクロン株派生型BA.5の感染が拡大しているとして、ワクチン追加接種の推進などの対策を発表した。
検査態勢を強化し、抗ウイルス薬の普及にも努める。
疾病対策センター (CDC) によると、米国内の新型コロナ感染で検出されるウイルスのうち、BA.5は推定65%を占める。
よく似た派生型BA.4も同16%で、5月ごろから拡大しているこの2種類で80%を超えた。
CDCの基準では、国内21%の地域で感染状況が厳しくなっている。
こうした地域では屋内でのマスク着用を求めるほか、全国で無料の高性能マスク配布も続ける。
CDCのワレンスキ所長によると、BA.5は過去の感染やワクチン接種でできた免疫をかいくぐって感染する力が上がっているとみられる。
感染した際の重症度が上がっている兆候は現在のところはないとしている。
サンディエゴ統一学区 (SDUSD) は7月18日、Covid-19の感染リスクとSD郡内での確認症例数が大幅に跳ね上がり、CDCが感染脅威警告を最高レベルに引き上げたことを受け、全学校のキャンパスと教育事務所での屋内マスク義務化を再開した。
当座は7月31日まで、サマースクールや夏季強化プログラムに参加する生徒、教師、職員に適用される。
この義務期間が数週間で終了する可能性は低く、BA.4 および BA.5 亜型の患者数増加により、義務化は秋学期まで続くと思われる。
SDUSDは「CDCとSD郡当局のデータを分析した上で (マスク義務化復活を) 決定した。
2週間後に感染状況の変化があれば (継続あるいは撤回について) 報告する」と表明。
また、マスクを持参せずにサマースクールや夏期プログラムに参加した場合は学校側が提供するとしており、着用義務を徹底していく構えだ。
しかし、SDUSDの決定に対して、市民団体「Let Them Choose」を中心に保護者や住民から多くの抗議が寄せられている。
反対論者は学区が症例数以外の重要な要素を考慮していないと批判する。
ワクチン接種レベル、保護者の決定権、クラスの必要性、クラス構成案、ヴァーチャル学習システムの不備、マスクの学力向上への悪影響、マスク着用とCovid-19感染率変動との相関関係など、本来考慮すべき多くの要因があると主張している。
小学校に通う孫2人の保護者は「彼らは1か月前に母親のいるアイオワ州へ行き、親子でマスクを着用したところ、3人とも陽性になってしまった。
マスクが役に立っているとは全く思えない」と、着用義務化に疑問を呈した。
(2022年8月1日号掲載)