2023年1月15日
米国で新型コロナウイルスの新たなオミクロン株派生型「XBB.1.5」が増加し、ニューヨークなど北東部では流行の主流となったと言われる。
従来の派生型より感染が広がりやすいが、重症度の高さは明確になっておらず、連邦政府がデータ分析を進めている。
この型は昨年10月下旬、世界で初めて米国で確認された。
日本でも少数が見つかっている。
米疾病対策センター (CDC) の推定では、米国内で検出されたウイルスに占める割合は1月7日までの1週間で28%となり、前週の1.5倍に跳ね上がった。
特に、北東部では70%を超えた。
世界保健機関 (WHO) は1月4日の記者会見で、欧米を中心に世界29か国から報告があったと明らかにした。
ただ、欧州の保健当局は、域内ではまだごく少数のため、今後1か月間でこの型が感染者数を押し上げることはないとみる。
影響には地域差もありそうだ。
米国の入院者数は1月5日までの1週間で前週から9%増えたが、北東部が突出しているわけではない。
ホワイトハウスの新型コロナ対策チームのアシシュ・ジャー調整官は「この型が従来より危険かどうかはまだ分からない」と指摘。
リスク低減のため、ワクチン接種を受け、大人数の集まりに行く前には検査を受けることを勧めた。
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新型コロナウイルスのオミクロン株流行下で死者数が多い背景の一つに、感染による心臓や血管など循環器系の合併症への影響を指摘する声が専門家から出ている。
以前は、重症化の要因だった肺炎を起こす感染者の割合が減少したことで目立つようになった可能性もあるが、死者数増加や後遺症との関係が注目されている。
合併症として、心不全、不整脈、血栓症などが起こることはオミクロン株流行前から問題視されてきた。
原因としてウイルスが炎症を起こしたり、血管の細胞を攻撃して血栓を引き起こす物質が放出されたりすることが考えられている。
循環器系の病気に詳しい野出孝一・佐賀大教授 (循環器内科) は「発症の頻度が加速しているかは不明だが、感染者が増え、合併症の患者も出ているので要注意」 と話す。
野出教授はコロナ患者31人の退院3か月後の検査で、心筋障害 (42%) と 心筋炎 (26%) の兆候がみられたとの結果を発表しており、長引く症状との関係にも着目している。
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中国の北京大学は国内の新型コロナウイルス感染者が1月11日までに、同国の人口約14億人の64%に当たる累計約9億人に達したとの推計をまとめた。
中国の衛生当局は14日の記者会見で、新型コロナウイルス対策を抜本的に緩和した昨年12月8日から今年1月12日にかけて、コロナに関連する医療機関での死者数が59,938人に上ったと発表。
それまで公表していた死者数は1日当たり数人程度だった。
当局発表が実態を反映していないとの国際社会の批判を受け、公表に踏み切った格好だ。
WHOは詳細な情報を提供するよう中国に要求。
日米首脳も共同声明で中国に「透明性の高いデータ」を求めていた。
中国の今回の発表に基づくと1日当たりの死者は平均で1,600人超。
ただ、国際社会では1日9,000人との推計も出ていた。
また、発表は在宅死亡例を含んでいない。
実態をどこまで反映しているか不明だ。
中国政府は1月11日、日本と韓国に対し、第三国へ向かう乗り継ぎ時に中国に一時入国できる優遇政策や臨時ビザ (査証) 発給手続きの停止を発表した。
感染が急拡大する中国からの入国者に対し、日韓が強化した水際対策への追加対抗措置とみられる。
(2023年2月1日号掲載)