2021年10月26日
米国で、夏に猛威を振るった新型コロナウイルスのデルタ株感染が急減した。
ワクチン普及が沈静化に貢献したのは確かだが、米紙は感染の増減が2か月周期で繰り返される「謎」を指摘。
何が理由なのか、疑問が深まっている。
疾病対策センター (CDC) によると、全米の1日当たりの感染者数 (7日間平均) は7月に入り再拡大したが、9月1日の約16万人をピークに減り始め、10月22日には約7万人と半減した。
9月以降は99%がデルタ株。
ワクチン接種を終えたのは人口の57.4%に達した。
カリフォルニア州は他州と比べ感染拡大を抑えられた。
その理由について、感染症予防が専門のジェフリー・クラウスナー南カリフォルニア大教授は「ワクチンの効果に感染者の回復という要素も合わさり、(社会全体で) 免疫が向上した」と分析する。
だが、ワクチン接種率が低い南部のテネシー、アラバマ、ミシシッピなど各州でも今夏、感染者が激増し病床が逼迫した後、なぜか急減した。
全米のワクチン接種は6月ごろから低調で、感染者の急な増減を招く要因とは考えにくい。
南部州ではマスク着用などの感染対策も軽視されがちだ。
ニューヨーク・タイムズ紙は「なぜ感染者が減っているのか分からない」と指摘する。
同紙が繰り返し言及するのが「2か月周期説」。
世界の感染者数は2月下旬に増え始め、4月下旬には減り始め、また6月下旬に増え始めて、8月下旬には減り始めた。
その理由は「専門家も理解できていない」という。
同紙は「ある変異株が平均的な規模のコミュニティーを一巡するのに約2か月かかる」ことなどが理由の可能性があるとしているが、推測の域を出ない。
日本でも、21都道府県に緊急事態宣言が発令中だった8月27日の新規感染者数24,196人から10月中旬には345人まで急減し、米国と同様に「謎」として取り上げられ、仮説が論じられている。
「デルタ株の蔓 (まん) 延するスピードが速く、一定の規模で猛威を振るった後、同じく急速に収束した」、さらには米紙報道にある「感染増減は2か月サイクル」が考えられる理由として挙げられているが、本当のところは分からない。
飲食店や娯楽施設が営業を正常化させ、公立学校が対面授業を再開してもなお、全米の感染者は減少が続く。
2か月周期に沿って11月に感染者が再び増加し始めるのか。
先が見通せないまま、感染拡大が危ぶまれる “不気味な冬” が近づいている。
(2021年11月16日号掲載)