2021年9月9日
米情報機関を統括する国家情報長官室 (Director of National Intelligence=DNI) は8月下旬、新型コロナウイルスの起源をめぐる調査報告書の概要を公開した。
動物からの感染か、中国・湖北省武漢のウイルス研究所からの流出かという2つの仮説で情報機関の意見が割れ、証拠不足で確定的な結論を導けなかった。
バイデン大統領は中国の「隠蔽」(いんぺい) を批判。
米情報機関を動員した調査は成果が出ないまま幕引きとなった。
バイデン氏は声明で、中国が情報を共有するよう友好国と「圧力をかける」と表明した。
調査はバイデン氏が5月、90日以内に報告するよう指示して始まった。
報告書は「ウイルスが生物兵器として開発されたものではないと判断している」と指摘。
遺伝子操作された可能性は低いとの見方も示した。
報告書によると4つの機関と国家情報会議は、新型コロナウイルスか、近縁のウイルスに感染した動物から自然に人に感染した可能性が最も高いと評価。
ただ、確信の度合いは低いとした。
一つの機関は、初めて人が感染したのは研究所、特に中国科学院武漢ウイルス研究所で実験や動物を取り扱う際の事故だった可能性が高いと分析した。
機関名は公表されていないが、ニューヨーク・タイムズ紙は関係者の話から連邦捜査局 (FBI) が研究所流出説を支持しているとした。
報告書は、結論を出すには「中国の協力が必要であると考えられるが、中国は国際調査を妨害し、情報の共有を拒んでいる」と訴えた。
新型コロナウイルスの起源をめぐり米国が概要を公開した調査報告書について、中国は「情報機関のでっち上げで、科学的な信頼性は全くない」と断じた。
馬朝旭 (ば・ちょうきょく) 外務次官は談話で「完全に政治的な報告書だ。米国は中国の名誉を汚し攻撃している」と非難。
米国が求める再調査や情報公開を中国が受け入れる気配はない。
在米国の中国大使館は、中国が国際調査を妨害していると報告書が指摘したことに反発する声明を出した。
「米国は感染者数が世界最多だ。中国を“推定有罪”にして、自分たちのコロナ対策失敗の責任を回避しようとしている」と指摘した。
今年1~2月に世界保健機関 (WHO) の国際調査団を湖北省武漢に受け入れた際に「完全に透明」な対応をしたとも主張。
中国科学院武漢ウイルス研究所からの漏洩 (ろうえい) 説は「極めて疑わしい」と結論づけられていると反論した。
その上で、米国は研究施設からの流出説を主張し続けるなら、メリーランド州の陸軍感染症医学研究施設 (USAMRIID) とノースカロライナ大への調査を受け入れるべきだと批判した。
中国メディアは最近、両施設をめぐる「疑惑」の書簡について盛んに宣伝している。
中国・新華社によると、書簡には陸軍施設とノースカロライナ大にまつわるバイオ関連の研究事例や事故疑惑が列挙されており、「米国こそ (コロナウイルス研究の) 最大の資金援助者、実施者であり、新型コロナの発生源でもある」と反論した。
(2021年10月1日号掲載)