4/18/2025ユタ州プロボ市のブリガム・ヤング大学 (BYU) に在籍する日本人大学院生、恩田卓 (おんだ・すぐる) 氏が、事前の通知もなく米政府から学生ビザ (Form I-20) を取り消され、4月末までに日本へ帰国するよう命じられた。BYUは末日聖徒イエス・キリスト教会 (モルモン教) が運営する私立大学。
ユタ州では現在、同様にビザを取り消された留学生が数十人に上るとされている。
ユタ州都ソルトレーク市の地元ラジオ局KSLが4月16日に報じた。
恩田氏は合法的に米国に滞在しており、博士号取得まであと1年を残すのみだった。彼の代理人である弁護士によれば、連邦政府からは「在留資格を維持できていない」との理由でビザを取り消されたが、具体的な説明はなかった。
通知文には「刑事記録に基づきビザが取り消された」と記載されていたが、恩田氏には重大な犯罪歴はなく、交通違反2件と、2019年に教会の釣りイベントで「釣り許可証の制限を超えて魚を捕った」として違反切符を受けたが、この件は却下されて不起訴処分になったという。
また、恩田氏は政治的発言や抗議活動への参加歴もなく、SNSには家族写真を投稿する程度で、特段の「危険人物」とみなされる要素は見当たらないと担当弁護士が主張している。
今回の件にはAI技術の介入があると言われている。米政府は現在、AIを用いて学生ビザ保持者の犯罪歴を自動的にスクリーニングしており、人間による最終確認を経ずにビザを取り消している可能性がある。米国国土安全保障省 (DHS) が自動化されたシステムを使用して犯罪記録をチェックし、軽微な違反ながら強硬措置に踏み切ったのかもしれない。
この決定により、恩田氏の家族、特に米国生まれの2人を含む5人の子供たちは混乱しており、学年末まで通学できるかも不透明だ。「夏に日本へ帰国する予定だったが、今は何をすべきか分からない」と恩田氏はKSLニュースラジオに語っている。
BYUは恩田氏の学業継続を支援する姿勢を示しているものの、彼と同様の立場にある留学生たちも不確実な状況に置かれている。弁護士はビザの再発行と在留継続を裁判所に求めているが、最終的な判断は裁判官に委ねられることになる。
なお、I-20はアメリカ移民税関捜査局 (ICE) によると、米国内の認定教育機関で学ぶ非移民学生に対して発行される「極めて重要な書類」であり、在留資格の維持に不可欠なもの。今回のような一方的、かつ説明不足の取り消し処分が続けば、留学生の将来や教育機会に深刻な影響を及ぼす。