Saturday, 05 October 2024

原爆開発推進「マンハッタン計画」 の施設、国立歴史公園に

原爆開発推進「マンハッタン計画」 の施設、国立歴史公園に

啓発目的も賛否両論、被爆地への配慮、和解の象徴となるか?

2015年11月13日


manhattan-project佐々江賢一郎駐米大使は記者会見で、ニューメキシコ州ロスアラモスなど、第二次大戦中に原爆開発を推進した 『マンハッタン計画』 の中心になった全米3地域の関係施設が国立歴史公園に指定されたことに関し、「対立でなく和解の象徴としていくことが重要だ」 との認識を示した。

公園内の展示内容について「(米当局の責任者が) 胸襟 (きん) を開いて日本の関係者から話を聞き、非常に深い理解が示されたと聞いている」と指摘。

計画に対する肯定的な側面だけでなく、広島、長崎の被爆地に配慮した公園整備が進むよう期待を示した。

同時に、大使館として「具体的なことに立ち入るのは適切でない」と述べ、米側の作業を「静かに見守りたい」と語った。

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マンハッタン計画とは。

第二次大戦中に米国が密かに進めた原爆開発計画のこと。

ルーズベルト大統領の指示のもと、オッペンハイマー博士など多くの科学者が参加した。

その名称は、当初ニューヨーク・マンハッタンに軍の拠点が置かれていたことに由来するとされる。

関連施設とは。

開発拠点となったニューメキシコ州のロスアラモス研究所のほか、広島市に投下された原爆用の高濃縮ウランが製造されたテネシー州のオークリッジと、長崎市に投下された原爆用のプルトニウムが製造されたワシントン州ハンフォードの研究開発施設とその周辺区域。

指定した目的は。

米政府は「原爆を讃えるのが狙いではなく、開発計画の歴史と遺産について市民を啓発するのが目的」と説明している。

国立歴史公園に指定されるとどうなるか。

A:これまでにも南北戦争の史跡や太平洋戦争の関係地が公園指定されている。

観光スポットにもなっているので、将来的な経済効果も見込まれる。

米国内の反応は。

賛否両論。

マンハッタン計画は第二次大戦を終結に向かわせただけでなく、科学技術の大幅な進捗につながったという肯定的な受け止め方もある。

一方で、広島と長崎を徹底的に破壊し、核兵器開発が進む世界を残したとして根強い反対も当然ある。

2012年には公園に指定する法案が米下院で否決されている。

被爆国としての日本の立場は。

被爆地の広島市と長崎市は、核兵器開発を美化することになりかねないとして米側に懸念を伝えてきた。

米政府に伝わるだろうか。

サリー・ジュエル内務長官は、被爆地に配慮した偏りのない公園整備を進める考えを表明している。

今後、整備が具体化する中で、被爆者や被爆地の思いをどう反映させるかが問われそうだ。


(2015年12月1日号掲載)