大統領、銃規制で板挟み
高まる世論と有力ロビー
2019年8月10日
トランプ大統領が、計31人が殺害された2つの銃乱射事件後、銃規制への対応をめぐ り板挟みになっている。
与党共和党員にも規制強化を求める声が広がる一方、有力ロビー 団体の全米ライフル協会 (NRA) は8 月8 日、銃を所持する権利の侵害には反対するとの 声明を発表。
再選を目指す来年の大統領選に向け、難しい舵 (かじ) 取りを迫られている。
政治サイトのポリティコなどが7 日発表した世論調査によると、有権者の70%が殺傷能 力の高い銃を規制すべきだと回答した。
銃規制に消極的とされる共和党員も54%が規制に 賛成しており、トランプ氏の再選戦略上、無視できない勢いを見せている。
事件はトランプ氏にとって大統領選で重要なテキサス州とオハイオ州で発生。いずれも戦 場で使用されるような殺傷能力の高い連射可能な銃が使われたが、両事件の容疑者とも合 法的に購入していた。
米メディアによると、トランプ氏は側近や有力議員らと、銃購入者の犯罪歴調査を強化す る法案が議会で通る可能性や、議会を回避して大統領令を出した場合の影響について協議 している。
全米200 以上の市長が上院に対し、犯罪歴調査強化の法案を可決するよう求める書簡 を送り、銃規制に消極的だった共和党上院トップのミッチ・マコネル院内総務も8 日、審議 自体には応じる意向を示した。
ただ、トランプ氏はこれまでも銃撃事件後は規制強化に取り組む発言をする一方、NRA や共和党議員、支持層から反対を受けると、あっさり取りやめてきた経緯がある。
民主党の 上院議員は「今回も何も起きないだろう」と冷めた見方を示している。
8 月11日付のワシントン・ポスト紙は、1966 年以降、米国で起きた銃乱射事件は165 件に上り、1,196 人が犠牲となって死亡、2,000 人近くが負傷したとする特集記事を掲載し た。発生頻度は年々増しており「銃乱射事件は恐ろしいが、もはや驚くことではなくなって いる」と指摘している。
米国では年間約36,000 人が銃関連の事件で死亡しており、乱射 事件の犠牲者はそのごく一部に過ぎないという。
(2019年9月1日号掲載)